第28話 神の試練。
影の神との戦いが始まり、約3時間程経った頃。
奴は未だに魔力も神気も使わず、俺の攻撃をあしらうように躱し、逆に俺は殴られ、蹴られ、何度も床から落ちそうになりながらも戦っていた。
離れてはぶつかり、離れてはぶつかりを何度か繰り返し、何度目かでお互い距離を空け、奴は後ろで手を組んだまま突っ立った状態で止まり、俺は全身の痛みを回復属性に変えた魔力で回復しながらどうやって勝つか思考する。
魔力の消費が激しいな。
なんで奴は素の状態であそこまで戦える?
俺にも出来ると言っていたが、出来そうにないんですけど?
攻撃は全て躱され、受け流され、まったく当たらない。
未だに奴は素手だ。
動きが速くて正確、だから読みやすい。
言い換えればタイミングを合わせやすいって事か?
じゃあ、速さを途中で変えるとか?
とりあえずやってみるか。
俺は縮地で奴の左側へ移動し、続けて素早く背後に回ると更に踏み込み、奴の右側へ移動した所で直刀を奴の胴体を目掛けて振り抜き『同時に首を狙う』
攻撃の瞬間だけ瞬影を発動させ、二重攻撃にしたのだ。
すると奴は初めて直刀を抜き、首に迫る影の攻撃を防ぎ、胴体の攻撃を短刀で防ぐ。
俺は続けて動きに緩急を付け、流れるように攻撃を繰り返すと徐々に奴の身体に傷が付き始める。
次の瞬間、奴の動きが急に変わり、俺の攻撃の波から抜け出すと背後に回られ、直刀を振り抜いてきたので、直刀の柄で防ぎ弾くと同時に刃を返し奴の首目掛けて振り抜く。
しかし奴は後方に跳んで避け、微かに襟元が斬れただけに終わる。
『今の動きは読めませんでしたね。やはりあなたは面白い』
「神(管理AI)が面白いと思うんだな」
『おかしいですか?』
「いや、別におかしくはない……あなたが言う速くて正確な動きは読みやすいと言った意味が分かったよ」
『そうです。どれだけ速くとも常に同じ速さなら、動きは読みやすくなります』
そのとおりだ。
人は速さというのに慣れる。
なので、速さを変えない動きは読みやすくタイミングを合わせやすい。
認識出来ない程の速さなら話は別だが、相手が同じ力量や格上なら動きは読まれるだろう。
「そろそろ本気で戦ってくれるかな?」
『私は最初から全力です』
「魔力も神気、マナも使ってないのにか?」
『魔力やマナを使えば強くなる。その考えは正しくありませんよ』
「いや、実際強くなってるけど?」
『ハンゾウと戦い学んだのではないんですか?』
俺は首を傾げる。
「流すタイミングの事かな?」
『そうです』
「っ!? もしかして、今までの攻撃にマナを使ってたのか?」
奴は頷いた。
まったく気づかなかったんですけど?
『私が殴ったり蹴ったりした時、あなたは吹っ飛びましたが素の状態で、魔力で強化したあなたを吹っ飛ばすのは流石に私でも難しいでしょう』
あぁ、なるほど。
「要は使い方ってやつか」
『そうです。流すタイミング、使うタイミング、魔力やマナにも緩急は必要ですよ?』
なるほどなるほど、つまり攻撃と防御の瞬間だけマナを使ってるって事か。
だから消費が殆ど無い。
つまり、どんな力も『使い方』次第で、ここまで強くなれると……ハンゾウに訓練してもらい強くなったと思ってたけど、まだまだだなぁ。
『例えば、このような感じに』
そう言った次の瞬間、奴は俺の懐に一瞬で移動し、俺が驚いていると、腹にゆっくりと手を添えるように軽く押す。
俺は一瞬キョトンとしたが次の瞬間、全身に衝撃が走り、あっちこっちから血が噴き出し、その場で片膝を突いた。
なんだ今の?
遅れて何かが……っ!?
「……マナが遅れて入って来たのか」
『はい、マナや魔力に緩急を付けると力は溜まり、その力が解放された時、いつもの倍以上の力が出ます』
なるほど、車を急停止させた時の動きと一緒か。
急停止して溜まった力が、塊となって遅れてやってくる。
魔力やマナは、そこまで出来るのかよ。
……面白い!
わざと遅らせて力を溜める。
良いね、良い!!
これで更にいろんな技が出来る!
さっそく思いついた技を試すか。
全身の傷を回復させると目の前に立っている奴の懐に踏み込み、左肘を打ち込む、続けて右手の直刀を身体を捻り斬り上げるが、奴は後方に下がり避けた。
はずだが、奴の前面に斜めの斬り傷が付き、血を噴き出すがまだ浅い
奴はすぐ止血すると言う。
『さっそく使いこなしますか、流石ですね』
「いや、まだまだ、全然足らない……今のは『溜め』が浅かったようだ」
『フフフ、ハンゾウが言った通り、あなたは面白い、ネクリムオリジンを超える存在、今のがエーテルならば、私も危うかったでしょう』
そう、今のは魔力を使っただけだ。
使い慣れた魔力で『溜め』を試したが、魔力であの威力。
神気やエーテルならば、両断出来ていたかも?
ただあの一瞬で、神気やエーテルを準備出来る程、まだ扱いに慣れていないんだよね。
まあ、そうは言ってられないので、ここからは訓練しながら戦うしかない。
「そう言えば、エーテルは神には扱えないとハンゾウが言ってたけど、本当?」
『はい、それは本当の事ですが、それは後で説明しましょう。今は試練が先です』
「そうだな。じゃあ、終わらせるとするか」
俺がそう言うとお互い動きだし、直刀と直刀がぶつかり衝撃波が生まれると続けて更に大きな衝撃波が周囲に広がる。
魔力とマナの溜めによる衝撃波だ。
その後暫く、衝撃波を発生させる攻防が続き、徐々に衝撃の感覚がドンッ!ドンッ! からドドンッ! と狭まり、数分後には衝撃波が1つになり更に大きな衝撃波を生む。
そんな攻防の中俺は、分身を奴の背後に出し直刀を振り下ろすと奴も分身を出し防ぎ、更にもう1体出すと奴も出して防ぐ。
すると次の瞬間、奴の直刀が俺の胴体を切断するが、俺の姿は四散するように消え、奴の背後で直刀を振り上げ構えていた。
そう、奴が斬ったのは俺の影分身です。
俺は時間稼ぎのために分身と影分身を出したのだ。
そして準備が整い、奴に向かって直刀を振り下ろすが、奴は直刀で防ぐ。
だが次の瞬間、奴を直刀と共に切り裂き両断する。
『お見事、試練クリアです』
そう言って奴は光の粒子になり姿を消した。
俺が最後にやったのは、エーテルを溜めて斬ったのだ。
奴は色以外は同じと言ったが、エーテルは奴には使えない。
まあ、マナで防ごうとすれば出来ただろうけど、時間を掛けてしっかり溜めたエーテルを防ぐ事は出来なかったようだな。
すると突然目の前に画面が表示される。
『神の試練クリア!』
うむ、神の試練と言うより訓練だったような気がするけど、まあ、良いか。
続きのログを確認すると。
『神の試練をクリアした事により、【蘇生術】を取得しました。』
蘇生術キター!!
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