第29話 知りたい事。

【蘇生術】:死亡して10分以内なら確実に蘇生可能で、デスペナを受ける事なく蘇る。その他に、生きている間に対象に使用した場合、24時間(ゲーム内時間)以内に死亡した場合、その場ですぐ復活する事が可能。詳しくはヘルプ参照。



ヘルプを確認するとどうやらこれは、プレイヤーが死んだ場合、数秒で光の粒子になって消えるが、近くに蘇生術を使える者が居てオンにしている時は消えないらしい。


蘇生を待つかリスポーンするかを選べるとの事。

そして『10分』という制限時間を過ぎると、時間が経つにつれ復活する確率は徐々に下がり、デスペナも1分ごとに1%受ける事になると書かれていた。


つまり、11分で蘇れば1%のデスペナを受けるという事だ。

って事は……1時間過ぎれば本来のデスペナと同じって事だな。

1時間か、そんなに待つ奴は居ないだろう。


これは、住人の場合も同じらしい。

住人は死体が残るから蘇生はしやすいかもね。

プレイヤーと違って意識は無いだろうし。

いや、死霊としてあるかも?

もし機会があれば聞いてみよう。



更にもう1つログが。


『神の試練をクリアした事により、スキルレベルの上限が無くなりました』


つまりこれは、鍛えればどこまでもレベルが上がるという事だ。

レベルキャップ解放……これは訓練のやりがいがあるな。

いずれ精霊獣をワンパンで仕留められる日がくるかも?



ログを確認し、スキルを確認しているとまた女の声が聞こえてきた。


『プレイヤーキジ丸。クリアおめでとうございます』

「あっ、どうも、これで終わりですか?」

『はい、試練は以上です。クリアした褒美に、答えられる質問に全て答えますが、何か聞きたい事はありますか?』


聞きたい事?

いっぱいあるけど、先ずは……。


「忍者がジュゲン、ネクリムを滅ぼした理由は?」


すると少し沈黙が続いた後、話し始める。


『……創造神様(運営)の許可が下りたので説明します』


これは許可が要る話しなのか。


『ネクリムという種族は、私が指示を出し滅ぼしました。その理由は、世界のバランスを保つためです』


バランス?


『ネクリムはこの世界にとってイレギュラーな種族なのです』

「運営、創造神が作った訳じゃないって事?」

『はい、この話をするには、この世界の成り立ちを話さなければなりません』

「お願いします」

『この世界は……』



そうして話してくれた内容は、このゲーム世界は以前も言ったとおり『ワールドシミュレーター』で作られている。


そして、今このゲーム世界で生きている住人は、なんと『第8世代』らしい。

どういう事かと言うと、この世界の人類は今までに7回『滅んでいる』と言う事だ。


ネクリムオリジンも第8世代との事。


一番最初に創造神(運営)は、この世界に魔法を生み出すためエーテルを作り、その後に人類を作った。


しかし、創った人類はエーテルを使い戦争を始め、結果滅ぶ事になるが、絶滅した訳ではなく、残った人類は長い年月を掛け国を立て直し、また新たな時代を迎える事になる。



こうして新たな時代を迎えた人類は、また同じ事を繰り返していき、第6世代の時、世界に変化が訪れたのだ。


それは『魔力』と『マナ』が生まれたという。

どうして生まれたのかと言うと、ここで創造神(運営)は、世界のバランスを保つために精霊を作り、この世界に解き放った。


そして精霊が生まれた事によりエーテルは、魔力とマナに分かれたらしい。

原因はデータを調べれば分かる事だが、このゲーム世界では自然に起きたという。


ちなみにこれらは全て、シミュレーターを時間加速させているので、この世界では数万年の間に起きた事だ。


まさに世界の歴史ですな。



で、魔力は星内部と表面を巡り、マナは精霊そのものとなる。

ここで今の世界の形が出来上がった。


だが、第8世代になった時、人類の中に突然変異が生まれる。

それが『ネクリム』という種族だ。


ついでに言えば、第8世代の時に他の管理AIも生まれたらしいが、影の神が元となっているらしい。

言わば影の神が、神のオリジンって事だね。



ネクリムは本来、精霊が使うマナを生まれながらに使え、他の種族よりも力が強く、オリジンが言っていたように世界を飲み込む事になり、そこで当時世界を管理していた『影の神』がネクリムを消そうとしたが、オリジンと血が薄いネクリムを残す事を約束し、オリジンがダンジョンに封印される事になった。


で、血が薄いネクリムを残す事になったが、その後、ネクリムの存在により世界のバランスが崩れ、人類がまた滅ぶ可能性があったので、ネクリムを滅ぼす事にしたという。


それが、当時の忍者達に出した任務。

裏切った事で報復したというのは、忍者側がそうなるように仕向け、あたかも報復のように見せかけた『根絶やし』という事だ。



ネクリムがイレギュラーというのは、現実でもあるように『突然変異』で生まれてしまった種族で、データを弄った訳ではない。


流れに任せ世界の成り立ちを見守っている中で生まれた、1つの種族に過ぎないが、その種族によって世界のバランスが崩れ、滅ぼしたという事だな。



なぜネクリムを忍者が滅ぼしたのか分かってスッキリした俺は、続けて知りたい事を聞く。


「湖に沈んでいたデカい船はなんですか?」

『……すみません、創造神様(運営)から駄目だと言われたので、その話は出来ません』


ほう、つまり何か重大な秘密が隠されているという事かな?

それは自分達で調べろと、了解です。



「じゃあ、このゲームを始める時から気になっている事を聞いても良いですか?」

『答えられる事なら答えます』


なるほど。


「忍者、忍者がどうして最高難度なのか聞いても?」


ホームページには忍者好きな運営がそうしたと書かれていたが、今までプレイしてきて思ったのは、それだけが理由だとあまりにもおかしい。


極めればソロでも最強になれる可能性がある職業。

明らかにゲームバランスがおかしい。

いや、他の職業も極めれば最強になれるだろうけど、忍者は異常だ。

その分、滅茶苦茶ハードだけど。


『……それは創造神様に私が提案した事ですので、お答えします』

「ん? あんたが?」

『はい、忍者は、世界のバランスを保つために生まれた職業です』

「バランスを保つって、逆にバランスブレイカーのような気がするけど?」

『そのための《掟》です』


……あぁ、なるほどね。

ネクリムのように表に出て世界を支配出来ないように、あの掟があるのか。



『ネクリムのような存在が生まれた場合、忍者が対応出来るよう、今のバランスになっています』

「なるほど……では、なぜ神はエーテルを使えないのかは?」

『私達神(管理AI)は元々エーテルを扱えていましたが、精霊が生まれた事により、エーテルが魔力とマナに分かれた事で、私達神(管理AI)も使えなくなりました』

「じゃあ、なんで俺は使える? いや、人間はなぜ使えるんですか?」

『それが人間の可能性です』


可能性……。


「この世界は、人間の思いで成長していると思ってましたが、それは?」

『そのとおりです。この世界は人類の想像、思いで形を変えます。それこそが世界の可能性で、成長です』


凄い世界を創ったなぁ。

天才か!



想像で世界は変わる……何だったか、現実でもそんな話があったな。

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