第7話 魔導幻術師のカム。

以前幻術に掛かった後俺は、ネットで幻術の事について調べた事があった。


俺が使う幻術は相手を眠らせて見せるが、幻術士の幻術は寝ていない状態で見せる幻術だ。


そして幻術士の幻術を見抜く方法は、自分の頭に魔力を流すと幻術が薄く見えるようになり、そこから更に外から干渉している魔力を遮断すれば、幻術は解ける。


ただし、魔力制御が甘いと見抜く事も解く事も不可能と、ネットに書かれていた。


俺が不動金剛術で動けなくしたと思っているショタは、幻術で作られた偽者。

背後から襲って来たショタが本物だ。


しかし、いつ幻術を掛けられたのかは分からない。

……戦いが上手いなこいつ。


接近戦の中で幻術を使う幻術士。

滅多に居ないタイプだな。



「幻術だな」

「へ~、よく分かったね。僕は『魔導幻術師』面白い職業だよ」


幻術士の上位職業か、幻術が基本なんだろうけど、攻撃系はあるのかな?


「近接戦闘を鍛え、幻術を混ぜて戦う……確かに面白い」

「でしょ? 僕達はみんな本来の職業とは異なる戦闘スタイルだからね」

「うぉい!? ばらすなよ!?」


と、戦いを見ていた黒髪が言う。


「良いじゃん、すぐ分かる事なんだしさ」


俺が全員を看破で確かめると、斧を背負った黒髪の名前は『マルボ』で職業は『魔術導師』となっているが、斧を使うとはな。


以前戦いを挑んで来た茶髪の名は『レックス』で職業は『源魔師』と、魔法使いの上位職だが、こいつも基本剣を使っているっぽい。


年寄りみたいな話し方の男の名は『カラス』で職業は『賢者』だが、細剣を2本使う二刀流だ。


そして金髪のショタの名は『カム』で職業は『魔導幻術師』短剣2本で戦うスタイル。


見事に全員、職業本来のスタイルとは違うね。

まあ、スタイルは自由だけど、変な奴らなのは分かった。



「まあよいではないか……ではゼロ、ワシとタイマンじゃ」

「はぁ~、まあ他の兵士は騎士に任せるとするか」

「しゃあねぇな。じゃあ俺はそっちの傷の奴とやるか」


とマルボが言うと。


「いやいや、俺がやる予定なんだが?」


レックスが割って入る。


「お前はキジ丸とやれよ」


傷の奴とは螺旋の事だ。


「キジ丸かぁ、強いからなぁ……まあ、良いか、良いよな?」

「ああ、やろうか」

「じゃあ、私とミルクちゃんは兵士の相手をしてくるわね」


とアイドールが言うので。


「気を付けろよ」

「ええ、じゃあ行きましょうか」

「うん、変な人達とはあまり関わらない方が良いしね」


ミルクがそう言うとこの場を離れて行くのを奴らが見て何か言いたそうにしているが、何も言わずそれぞれの相手に向き直る。


さて、俺は分身と本体で2人の相手か、ゾディラスの幹部以来かな?

本体の方はのんびりやろう。

まずはハンゾウでカムを倒す。



「みんなの相手が決まったみたいだね。じゃあ、そろそろ続きといこうか」

「うむ、拙者はいつでも良いぞ」

「流石最強忍者、だね!!」


そう言うとカムは地を蹴り物凄い速さで迫って来る。


魔法使い系なのに相当鍛えているな。

本当に面白い奴らだ。


両手の短剣で交互に斬り掛かって来るが、全て身体を逸らしギリギリ避けると右手に持つ短刀だけで2本の短刀を弾き、奴の腹に蹴りを入れ、深撃で足に引っ付けた状態から奴の身体を引き寄せ、奴の心臓に短刀を突き刺す。


しかし、奴の身体がユラユラと溶けるように消えていく。


また幻術かよ。

いつ発動しているのかまったくわからん。


次の瞬間、背後から殺気が迫って来たので、振り返りながら左手の籠手で、振り下ろされる短剣を弾くと同時に踏み込み、奴の首を切断。


だがまた溶けるように消える。

もしかして既に奴らは居ないとか?


俺はすぐさま頭に魔力を流し、幻術を解くと背後に気配を察知すると同時に、危険察知が働いたので、空蝉術を発動させると胸を短剣で貫かれてしまうが、奴の背後に瞬間移動し、首目掛けて短刀を振り抜く。


だが、気が付けば俺の左腕が切断され宙を舞っていた。

熱さと痛みが襲うが無視してそのまま、奴の首を斬り落とす。



ん?

光の粒子になって消えない?


「流石最強忍者、腕を斬られても攻撃の手を止めないとはね~、どんな神経してんの? 痛くないの?」


と、背後からカムの声が聞こえてきたので振り返ると、元気なカムが立っていた。


今のも幻術か。

マズいな。

何が本当でどれが幻術か分からなくなる。


「戦闘中は痛みを忘れる事にしている」

「うわ、ガチじゃん……幻の痛みでも痛いのは変わりないはずなんだけどなぁ」


その言葉でふと自分の左腕を見るといつの間にか、腕が切断される前の状態に戻っている事に気付く。


あれも幻術かよ。

こいつは幻術の使い方をよく分かっているようだな。

相手を騙し翻弄する。


その隙を突いて仕留めるか。


これは常に魔力を流して遮断しないと、いつ幻術に掛けられるのか分からんな。

ただそうなると、強化や技を発動するのが遅くなる。


……いや、それで良いのか。

こいつに強化や技は必要無い。



「相当鍛えたようだな」

「そりゃそうだよ。でも幻術を使って戦うならこのスタイルが一番しっくりくるんだよね」

「うむ、見事な技だ」

「まあ、技って程のものじゃないけど、それなりに練習したから」

「だが……」

「ん?」

「まだまだだったな」

「何を……」


俺は縮地で奴の背後に回り短刀を首目掛けて振り抜くが、奴は前に跳んでギリギリ避けると、左手の短剣を顔面目掛けて投げて来た。


頭を傾げ避けると奴は俺の背後に姿を現し、投げた短剣を掴むと振り下ろしてくる。


しかし、刃が俺に届く前に奴は、俺の短刀により心臓を貫かれ、動きを止めた。


俺の『目の前に居る』カムは、口から血を吐き出し、驚いた表情をしながら。


「な……んで」

「常に幻術を遮断しているのでな。お前の動きは丸見えだ」


奴が短剣を投げたところから既に幻術だったのだ。


俺は完全に遮断はせず、薄くなる程度に留め、奴の幻術に掛かったフリをし、目の前から迫る奴の心臓を突き刺した。


「もっと鍛えれば、強くなれるぞ」


そう言うと奴は、微かに笑いながら光の粒子になって消えた。



うむ、面白い戦いだったな。

良い訓練になった!

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