第6話 変な4人。
原初の悪魔ルゥが姿を消した後本体の俺は、影から出てゼロ達が集まる場所まで戻り合流した。
ゼロは俺がちゃんと戻って来た事を褒め、何か分かったのか聞いて来たので、帝国側に原初の悪魔を召喚した者が居る事を話す。
「原初の悪魔……兵士を代価に召喚したのか」
「とんでもない事するね。その可愛い契約者というのは」
「妖艶な悪魔って、男は魅了されるんじゃない? 危険ね」
「原初の悪魔と戦ってみてぇな」
「初期値に戻されるよ?」
「俺が負ける前提かよ!?」
と、話が進まないので。
「とりあえず、戦争を終わらせようか」
「そうだな。侵攻してきた帝国兵は残りも少ないし、撤退するんじゃないか?」
ゼロの問いに俺は首を横に振り、残っている帝国兵は悪魔化しているので、引く事は無いだろうと告げる。
そこで自分の言葉に違和感を覚えた。
「……キジ丸さんの言うとおりなら、帝国兵が悪魔化しているのは、別の悪魔の仕業って事ですね?」
「あっ! そうか!」
トリナマの言葉で分かった。
帝国兵を悪魔化している悪魔とルゥは別だ。
なのに、その悪魔の眷属たる兵士を代価に新たな悪魔を召喚したって事は、お互いの契約者は『敵対している』事になる。
もし兵を悪魔化しているのがイーターの者ならルゥを召喚したのは……帝国の人間?
いや、イーターの中でも割れているからなぁ。
別の派閥がやった可能性もある。
それともやっぱり皇女がやったのか?
……イブキ達に調べてもらおう。
契約者達がどんな『願い』を叶えてもらったのかだな……碌な願いじゃないだろうけど。
その後俺達は、一旦悪魔の事は忘れて未だに迫る帝国兵を殲滅するため動き出した。
ルゥに吸収され半分以上減った帝国兵は、瘴気によって更に減っているので、殲滅は簡単と思われたが……。
「お前がゼロか」
「ワシがやろう、誰も手を出すな」
「じゃあ俺は、そっちのキジ丸君にしようかな」
「僕はそっちの格闘家っぽい人にします」
と、帝国側のプレイヤーが4人現れた!
なんで今更出て来るんだよ。
そのまま撤退すれば良いのに。
そこでゼロが、一人の男を見て口を開く。
「お前……確か以前ダンジョンで戦いを挑んで来た奴だよな?」
俺にしようかなと言っていた奴だ。
茶髪の至って普通の見た目で、一般人に見える。
青い上着を着て黒いズボンに黒いブーツ。
腰には剣をぶら下げているので、剣士っぽい。
ダンジョンでゼロに戦いを挑むとは、そんな奴も居るんだな……ん?
「ゼロ、それって俺も居た時のか?」
「ああ、ダンジョンの調査に行った帰りに居ただろ?」
うむ……居たような居なかったような?
「覚えてたのか……まさかあの時の忍者が最強忍者とは思わなかったけどな」
「……あっ! 忍者にビビッて逃げた奴!!」
「ちげーよ!? あの時の俺じゃ勝てないと思ったから引いたんだ!」
「ああ、ゼロにビビッて逃げたのか」
「ぐっ……この……」
「まあまあ、それより~、さっさとやろうよ。この後予定があるんだよね僕」
と、金髪で背の低い男の子が話を止める。
首に長い布を巻き、腰には2本の短剣。
身軽な服装からして盗賊系か。
ショタが喜びそうな見た目だ。
「俺がゼロとやる」
「いいや、ワシがやる! 剣聖じゃぞ? ワシ以外におらんじゃろ!」
「賢者のくせに近接戦が好きってなんだよお前」
「別に良いじゃろ、近接戦が好きな魔法使いが居ても。お主も似たようなもんじゃろ!」
と、話しているのは、黒髪の男と青白い長い髪を後ろで縛っている若い男だ。
黒髪は赤いジャケットを着て、黒いズボンに黒いブーツ。
背中には大きな斧を背負っている。
青白い髪の男、年寄り臭い言葉遣いの男は、白シャツに胸当てを着け、茶色いズボンに茶色いブーツを履き、腰の両サイドには細剣を1本ずつぶら下げている。
ヒヨと同じ賢者と言っていたが、確かに魔法使い系で近接戦闘をするプレイヤーは少ないが、居る事は居るのだ。
まあ、俺も初めて会ったけど。
あっ、こいつらの眼は普通なので、悪魔ではないようだ。
「あぁ、お前ら以外にもプレイヤーは居るのか?」
とゼロが聞くと以前逃げた茶髪が。
「居ない。悪魔の瘴気に飲まれてリスポーンしたな」
まだ居たのかよ。
「お前らは悪魔になってないんだな?」
すると斧を背負った黒髪が。
「ふん、悪魔なんぞにならなくとも強くなれる。あんなものに頼るのはただの馬鹿だ」
「それは俺も同感だ」
俺がそう言うと金髪のショタが。
「ねぇねぇ、ハンゾウは居ないの? 戦ってみたいんだけどなぁ」
「ハンゾウと戦えば死ぬぞ?」
「はは! それはやってみないと分からないじゃん?」
「まあ、そう言うなら良いんじゃないか? ハンゾウ」
「はっ!」
俺の背後に片膝を突いた状態で現れたハンゾウに、全員が目を向ける。
「こいつがお前と戦いたいんだと、手加減する必要は無いからやってやれ」
「承知」
「うわぁ、本物の忍者っぽい! って忍者か、じゃあ、僕達はっ!?」
ショタが場所を離れようかと提案する前に、縮地で奴の背後に移り首目掛けて短刀を振り抜くが、奴は短剣で抜きざまに防ぐと同時に跳び、距離を空ける。
冷や汗を流しながら口を開くショタ。
「いきなりだね……不意打ちとは」
「お前は何を言っている?」
「何って準備する前にいきなり攻撃してきた事に驚いただけだよ?」
「拙者と『戦いたい』と言ったのはお前だろう?」
「そうだけど?」
「これは『試合』ではないぞ?」
ハンゾウの言葉にショタは一瞬目を見開き、ニヤっと笑い。
「フフ、確かにそうだね。これは殺し合い、不意打ちは当たり前か」
「そう話している間にも、既にお前の身体は動けなくしてある」
「っ!? ……全然動かない、なにこれ?」
「主が手加減をする必要は無いと言ったので、このまま始末しよう」
「えっ、いやいや、ちょっ!?」
短刀を振り抜き奴の首を落とそうとした瞬間、背後から殺気が迫って来たので、咄嗟に避けるとそこには、短剣を振り下ろした姿勢のショタがいた。
「おっしぃ~、もうちょっとだったのに! 流石最強忍者だね」
俺は未だに不動金剛術で動けなくしているショタと動いているショタを交互に見て違和感に気付く。
「……なるほど」
幻術か。
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