第5話 クエスト達成。
飛び出した俺は、現実では決して出ない速さに少し驚きながら槍を力強く握りしめ、最後尾を歩いている狼目掛けて突きを放った。
上手く気配を殺せていたのか、すんなりと槍は狼の身体に突き刺さる。
「キャウンッ!」
次の狼を狙うために槍を引くが中々抜けない。
何かで見た事がある。
戦場で槍は突かないらしい。
こうやって抜けなくなるからと。
なので俺は咄嗟に横向きに力を入れて槍を途中で折った。
折れた槍の先は結構尖っている。
そのまま振り向いた2匹目の首目掛けて力いっぱい突き刺した。
首を刺したせいか狼は声を上げる事も出来ず、頭を振ったり前足で槍を抜こうとしているが、直ぐに力尽きて倒れた。
最後の1匹は俺の首目掛けて大きな口を開けながら飛びかかり、喉笛を食いちぎろうとしていた。
何度も見たこの光景。
凶暴な大きな口と並んだ牙。
普通なら恐怖に身体が硬直し動けないだろうが、今の俺は違う。
「何度も同じ手を喰らうかぁあ!!」
そう言いながら正面から狼の喉目掛けてアッパーを打ち込んだ。
「ガッ!」
狼は縦に2回転程して地面に叩きつけられる。
「ガッ……カッ」
狼は身体を起こし、喉に何かを詰まらせたような動きをしだした。
これは……今ので喉が潰れたのか?
狼は徐々にフラフラして横倒れになる。
警戒しながら近付くと分かった。
息ができないようだ。
憎しみの籠った目を俺に向けてくる。
「悪いな、苦しめて」
そう言って俺は、狼の首を思いっきり踏んで息の根を止めた。
「さて解体は……どうしよう」
暫く考えて石ナイフで一番大きな牙を剥ぎ取り、牙で解体を始めた。
勿論、ネットでやり方を見ながらです。
普段の俺なら気持ち悪がってできないだろうけど……今は腹が減ってきてるんでね。
食うためなら解体ぐらいやりますよ。
何とか解体が終わった所で気が付く。
「……火がねぇ」
魔法を使えれば楽なのに……。
火起こし道具の作成方法をネットで調べる。
植物の繊維を使って紐を作り、横になった棒を上下に動かすだけで縦の棒がクルクル回る火起こし道具の完成!
その辺りで枝や枯草を集め、何とか火起こしが成功する。
枝に刺した肉を焚火の近くに刺して焼けるのを待つ。
「……マジでサバイバルしてるなぁ」
肉が焼けたので食べるがかなり不味い。
そりゃ血抜きもしてないしね。
近くに水が無いのでしょうがない。
獣臭が凄い。
それでも、今は食えれば問題無い。
とにかく腹を満たし、クエストの期間を生き延びてやる。
不味い肉を食い終わり焚火の火を見ながら休憩する。
もう忍者になったプレイヤーは凄いよなぁ。
他の職業はどんなチュートリアルなんだろうか?
気になったのでネットで調べてみた。
なるほど、忍者にくらべると大分楽だな。
剣士は上級剣士と戦うだけでいいらしい。
勝っても負けても大丈夫なようだ。
他の職業も大して変わらない。
マジで忍者は難易度高いなぁ。
飯を食ってから2週間後、俺はとうとう生き抜く事ができた。
歩いていると、いきなり目の前にウィンドウが出てきてログが流れ始める。
『職業忍者クエスト完了』
『魔法・スキルを解放しました』
『クエスト中の経験を反映します……』
クエスト中の経験が反映されて、スキルのレベルが結構上がったようだ。
すると突然、ログを見ていると後ろから声を掛けられる。
「やっと任務を達成したか」
振り返ると、最初に会ったサスケが立っていた。
「まあ、結構時間はかかりましたけど楽しかったですよ?」
「お主が最後じゃぞ、偶に様子を見ておったが……」
そう言ってニヤっと笑う雰囲気を出した。
忍び装束で顔が隠れてるので分かりません。
「いやはや、お主は他の者とは違うようじゃな」
「そうかな?」
サスケは頷くと胸元の
「受け取れ、これでお主も忍びの者になる」
言われたまま巻物を受け取ると、自動でインベントリに収納された。
するとウィンドウが開いてログが流れる。
『職業が忍者になりました。
職業スキル【偽装職】を習得しました。
職業スキル【忍換装】を習得しました。
職業スキル【戦闘術】を習得しました。
職業スキル【分身術】を習得しました。
職業スキル【空蝉術】を習得しました。
職業スキル【隠密】を習得しました。』
何か色々習得したので詳細確認。
【偽装職】:鑑定や看破で見られた時、偽りの情報を見せる事ができる。
【忍換装】:忍者と仮の姿へ瞬間に変わる事ができる。
【戦闘術】:武器全般のスキルが使えなくなる代わりに、戦闘行為全てに補正が付くようになり、マルチアーツを使えるようになる。
マルチアーツ:武技をオートではなく、自分で繰り出す事ができるようになるが、かなりの練習が必要になる。
【分身術】:実態のある分身を作る事ができる。レベルによって顕現時間は増えていく。
【空蝉術】:攻撃を受ける前に使用すると、木や残像を身代わりにし相手の背後に瞬間移動する。レベルによって連続で避けられる回数が増え、クールタイムが減少する。
【隠密】:気配遮断と自身が発する音を消す、忍者特有のパッシブスキル。思考操作でオンオフを切り替え可能。
めちゃくちゃ忍者っぽいスキルキタ―――――――!
早く使ってみたい!
『フッ、それは残像だ』ってやりたい!!
絶対やろう。
「まだ終わっとらんぞ」
1人テンション上がってるとサスケが声を掛けてきた。
まだ終わってないとは?
サスケの方を向くと話し始める。
「お主もこれで忍者になった、故に忍びの掟を伝える」
忍びの掟? 何それ?
「他の者にお主が、忍者である事を知られてはいかぬぞ」
えっ、マジですか?
知り合いにも言えないの?
って知り合い居ないけど……。
ちなみに職業忍者クエストは、魔物に見つからない場所で2週間じっとしていれば簡単にクリアできる内容になっていた。
が、キジ丸がその事を知る事はない。
忍者になった他のプレイヤーはそうやってクリアしていたのだった。
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