第4話 餓死。

ひたすらガタガタの木刀で素振りと格闘技の訓練をしている日々の中。

今まで1度も魔物を倒せた事は1度も無い。

それはなぜか?

倒せない理由は色々ある。


常に魔物は群れていて数が多い。

これは狼だな。


単純に頑丈で木刀の攻撃が効かない。

あの猪だ。


他には動きが早く力が強いなどあるが、1番の理由は俺が弱いからだろう。

うん、これが1番の理由だ。


魔法もスキルも使えず、ちゃんとした武器も無い。

身体能力は徐々に上がってきてるがまだまだだ。

しかし、これまでと違い今は更に1つ理由が増えた。


それは……。


空腹だ!!



途中から身体が重く動きにくくなり、視界がぼやける事が多々増えた。

ステータス画面を開くと状態異常になっていたのだ。



名前:キジ丸

職業:無職

クラス:

状態:空腹

HP:115/236

MP:50/100

スキル:

称号:



空腹:全ステータスが半減する。


と、こんな感じだ。

全て封印されているので寂しい見た目だな。


今日で10日目に入ってるが、先に餓死しそうだ。

それでも素振りと格闘技の訓練はやっている。

木刀がいつもより滅茶苦茶重く感じるのは空腹だからだろう。



しかし俺は考えた。

以前、服が汗臭かった事があったが、死んで復活すれば元通りになっていると思っていたのに、復活しても死ぬまでの状態が引き継がれていた。


では、この空腹も同じでは? と考えたのだ。

なので一旦何かを食べて、腹いっぱいの状態からクエストを始めれば、2週間は持つのではないのかと。



「でも、食う物が無いんだよなぁ~」

今まで木の実や果物、キノコ類も見かけた事が1度もない。

そうなると食えるのは魔物以外無いんだけど、倒せる状態じゃないんですよ。


「詰んだかな?」

このままだとクエストクリアができないのでは?


死んでも空腹が治らなかったら終わりだなぁ……。

まあとりあえず、何か小さな動物が居ないか探そうかね。



ガタガタの木刀を腰に差し、森の中を彷徨う。


ひたすら探してそのまま夜になるが、何も見つけられないままだ。

魔物は気配がすれば離れるようにしているので殺される事はないが……。

やっぱ魔物を殺さないといけないかな?


そんな事を考えながら歩いていると、とうとう動けなくなりその場で倒れてしまった。

森の中の移動は普通の道を歩くよりエネルギーの消費が多いのは当たり前かぁ。


ステータス画面を見ればこうなっていた。



状態:空腹・極限


空腹・極限:徐々にHPが減って行く、何かを食べなければ直ぐ死んでしまう。



極限ですって、ヤバいなぁ。

意識が朦朧としてきた。

現実で意識が朦朧とする経験すらした事無いんだけど?

あっ、そんな事考えてると徐々に視界が狭くなって……。



パチッと次に目が覚めると身体を起こし、辺りを見ると別の場所でリスポーンしていた。


「とうとう餓死かぁ」

俺は溜息を吐き項垂れる。


まさかゲーム内で餓死するとは思わなかった。

人生初体験だな。

って当たり前か。


他に経験してるプレイヤーはいるかな?

俺だけかも?

何か称号は……何も無いか。



まあ、お陰で復活して空腹は無くなったけどさ。

でも直ぐ空腹になりそうな予感がビシビシするのは、気のせいではないと思う。

気のせいであって欲しいんだけどね。

とりあえず、魔物を狩って腹を満たしてからクエストだな。



また腹が減る前に魔物を見つけないといけないが、今の俺に倒せるのか?

そう言えば、死んだから木刀が無くなってしまった。

……次は木の槍にするか。

木刀だと打撃になるが槍なら刺せる!


その辺りに落ちている石を、石で割って石ナイフを作る。

もう慣れたものだ。


なるべく真っ直ぐな太目の枝を探し、ひたすら削っていく。


暫くして、粗削りながらも木の槍が完成した。

木の槍と言うか柵に使う杭のような感じだが、これなら刺さるだろう。



その後、魔物を探して森を彷徨うが、こう会いたい時に限って中々出会わないんだよねぇ。


そんな事を思っていると気配を感じた。

気配を殺し忍び足で近づき、茂みの影から様子を伺うとそこには、大きな猪が餌を探して地面に鼻を突けてフゴフゴしていた。

こいつは無理だな。


この木の槍じゃ、あの分厚い皮膚は刺さらないだろう。

体当たりされて吹っ飛ぶイメージしか湧かない。

なのでそっと静かにその場を離れた。



狼が良いんだけどなぁ。

と思っていたら、狼3匹を発見!


サッサと風下に回りチャンスを伺う。

狼が頭を上げ鼻をピクピクさせている。

俺に気付いた様子は無いので安心。


絶対に仕留めてやる。

既にちょっと腹が減ってるんだ。

此処で仕留めないとまた餓死してしまいかねない。

何が何でも狩って食ってやるからな!



1人闘志を燃やしていると、狼がゆっくりと俺とは逆方向へ移動を始めた。

さっきの猪の匂いを捉えたのか?

しかし、後ろを見せたお前らは俺に食われるんだよ!


いかんいかん、落ち着け。

殺気を駄々洩れにすれば野生の魔物に直ぐ感づかれる。


これは、今までの経験で分かった事だ。

そりゃ野生ならそうだよねって話だ。

って事で、最後尾の狼から狩っていきましょうか。


もう何回も食われてるので失敗してもまたか……で終わるが

今回は今までとは違うぞ。



俺は数か月間鍛えた身体能力を生かし、地面を蹴って茂みから飛び出した。

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