第3話 他のプレイヤーは?

今日も森の中で目を覚ます。

2ヶ月程こんな毎日だ。

髪も少し伸びたし。

ゲームで髪が伸びるなんて初めての経験だな。


そして約2か月間、ただサバイバルをしているだけじゃない。

俺はネットで格闘系の動画を探し、それを基にひたすら技の練習を繰り返しいる。

武器が無いので、素手で戦えるようになろうと思い始めたのだ。



森の中でいつもの訓練をしていると、微かに気配を感じた。

これは……狼か?

すぐさま近くにある木を登っていく。


最初の頃は木に登るのも大変だったが、今では成長した身体能力で素早く登れるようになった。


繰り返し行う事で身体能力は上がると、サイトには載っていたので訓練は欠かさない。

心を落ち着かせ気配を消す……つもりね。



少しすると茂みの中から狼が3匹、辺りの匂いを嗅ぎながらゆっくり歩いて来た。


もしかして、俺って臭い?

胸元の服を引っ張って嗅いでみる。

クセェ!!

滅茶苦茶汗くさいんですけど!


こりゃ水場を探して洗わないと、他の魔物にも直ぐバレるなぁ。

死んで復活してるから全部綺麗になってると思ってたのに、どうやらそうじゃないらしい。

なんて厳しい仕様なのだ。



そんな事を考えていると狼がこちらを見ていた。


「おっす……気にせず先に進んでいいぞ」と、とりあえず言ってみたが皺を寄せ牙をむき出しにしながら唸り出す。

ですよねー。

何度も食われているので恐怖感は既に全く無いが、どうしたものか……。



よし、素手で倒せるかやってみるか。


俺は1番手前に居る狼を標的にし、飛び降りながら飛び蹴りをしようとしたが躱された。


そりゃずっと見てるんだしそうなるかと思いながら、蹴りやパンチを繰り出すが全て躱される。

すると案の定、後ろから襲われ食われてしまった。

俺は美味いかい?



目を覚ますと別の場所で復活!

「あぁ~、武器があればなぁ」

地面に座りながら空を見上げる。


木々の葉が風に揺れているのを見ていると、1つ思い浮かんだ。

木の枝で戦ってみるか?

そうと決まればさっそく地面を見ながら歩き始める。



良い感じの枝は落ちてないかなぁ……。

暫く探していると、少し曲がっているが良い感じの枝を発見。

太さは5センチ程あるのでそうそう折れないだろう。

長さは1メートル程ある。


さっそく拾って両手で持って剣道のように素振りをしてみる。

「結構重いな」

スキルは使えないのでプレイヤースキルでなんとかしないといけない。

この日から訓練に素振りも加わった。



素振りをして汗をかいたので水場を探そうと思い、枝をインベントリに入れようとしたが、なぜか入らない。


「バグ?」

メニューを開いて色々確かめてみると驚く事が分かった。


インベントリも魔法やスキルの一種なので使えないらしい。

巻物は入ったじゃん!?

あっ、あれはクエストだから入ったのね。


今まで死にまくってたから、アイテムをインベントリに入れる機会なんて無かったからな。

気が付かなかった。


まあ使えないならしょうがない、このまま持っていこう。

枝を肩に乗せ森の中を彷徨う。

誰かが見たら危ない奴と思われそうだな。



その後暫く歩いて行くと、微かに水の音が聞こえてきた。


音のする方へ向かうと5メートル程の斜面を下った所に、少し大きめの川が流れているのを発見。

周りを警戒しながら斜面を下り川の中を覗き込む。

水生の魔物は居なさそうだ。



周囲をキョロキョロと見回してから誰も居ないことを確認すると、服を脱いで川で身体と服を洗う。


「気持ち良いー!」

水浴びがこんなに気持ち良かったなんて今までなかったなぁ。




服を木に引っ掛けて吊るし、服を乾かしている間枝で素振りをする。

ゲームなのに息子がちゃんと付いているのに物凄い違和感があるな。

いや、現実なら当たり前の事だけどね。

森の中、裸で枝を振る男。

通報ものだな!



俺は剣術系の動画を見ながら素振りをして、服が乾くのを待つ。


日が沈む前に服が乾いたので着こむと気になっていた事を確認する。

俺以外のプレイヤーで既に忍者になったプレイヤーは居るのか?

このサバイバルを生き抜いた猛者がいるのだろうか。


GFWの掲示板を検索して見てみると、何人か既に忍者になっているプレイヤーがいた!

スゲーな!?

元々サバイバルが得意な人なのかな?


俺も早くクエストをクリアしたいんだけどねぇ。

プレイヤースキルが低すぎて……。

駄目だな、こんなんじゃ最強の忍者にはなれない。

もっと頑張らないと!



その後、ネットでサバイバル術などを調べたりもしながら、プレイヤースキルを鍛えていった。





そして、現実で6日、ゲーム内で約5ヶ月程経った頃、俺は森の中をまだ彷徨っていた。



高い木に登り、石ナイフを使って切り取った枝を一生懸命削っている所だ。

あれから何度も死んでいるので、クエストクリアのカウントはリセットされている。


「……出来た」

やっとの思いで削って、ガタガタの木刀が完成。

これならもっと戦いやすくなるはず。

前の木は猪を殴った時に折れてしまった。

硬すぎだろ!


暫く経った頃から、あの枝を片手で振れるくらいには筋力も付いたようで、思いっきり猪を殴ったら折れてしまったのだ。

なので代わりの武器を作った。


完成した木刀で素振りをしてみると、ブンッと風を切る音がする。

「おお、良い感じ」

そう言えばここ最近、死ぬ事が減ってきた気がする。

現在も3日目に入っているしな。



このままいけばいけるんじゃね?

しかし……。

「腹減ったぁ~」

これは魔物に殺される前に餓死するのでは?


だが、クエストで何も口にしてはいけないと決められてるしなぁ。

死んで復活した時は、腹の減り具合が無かったから良かったんだけど、続くと流石に減ってきた。


身体が汚れていたように、リスポーンしても腹は満たされない仕様なのだろうか?

多少は空腹が無くなってるとおもうけど、厳し過ぎると思います!!



って、それより今日の訓練をしないとな。

素振りをして格闘技の練習もする。

徐々にステータスが上がり、素振りも格闘技も様になってきた……ような気がする。



あの猪や狼の魔物を必ず仕留めてやる!

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