第4話 魂を売ったプレイヤー。
俺はテアード王国側の軍を殲滅した後、生かして捕らえた兵士を尋問したが、なぜか心眼では何も視えず、嘘か本当かよく分からない話を聞き終えると兵士を始末し、ゼロ達の方へ応援に向かう事に。
しかし、タピオカは初期値に戻っているので街で待機させる事にする。
「今街の方は手薄だ。なのでタピオカの召喚獣で守りを固めてくれ」
「分かりました。訓練でもしながら待ってます」
そう言って笑うタピオカ。
「タピオカの分まで戦ってくるから待ってて!」
「はは、あまり無理はしないようにね」
気合十分のミルクと螺旋を連れて俺達は、帝国が攻めて来ている東へハンゾウの影渡りで移動した。
影から出た俺達の視界に入ってきたのは、木々が無く土の地面が広がる大地と、赤い眼をし黒い靄をまとっている兵士達。
それと大剣を持った男と戦うゼロ。
アイドールは後方から炎の魔法を放っているが、悪魔化した兵士達は燃えてもすぐ再生し、徐々にゼルメアへと近づいて来ている。
魔法で悪魔を殺す事は不可能ではないが、かなり難しいだろうな。
螺旋とミルクは悪魔化した兵士達に突っ込み、殴り、蹴りをしながら魔力を流し、敵兵を減らし始める中俺は、アイドールの元へ行き状況を確認。
「キジ君、ハンゾウさんも来てくれたの? あっちは大丈夫?」
「終わらせてきた。それよりあの大剣の男は? ゼロと互角に戦ってるようだけど」
「あいつはミキヤっていうプレイヤーで、ゼロと同じ剣聖よ。だからなのか、同じ職業なのに有名なゼロ君によく絡んでくる迷惑な奴ね」
ほう、同じ剣聖でも大剣を使うとは珍しいな。
大抵は振りやすい片手剣か刀なのにね。
それにしても……。
「あのミキヤって奴、悪魔になってんじゃね?」
「…………今念話でゼロに伝えたら、確かにあいつ、悪魔になったと言っているらしいわね」
「マジか、プレイヤーでも悪魔になれるとはなぁ……って事は、ゼロがやられたらかなり強化される可能性があるな」
「あぁ、相手の力を奪うってやつね。あいつ自身が言ってたみたいだけど、殺しまくっていろいろスキルを取得したらしいわよ」
うわ、別ゲーになってんじゃん。
まるでスキルイーターだな……ん?
それってそんなに強いのか?
このゲームは鍛えれば鍛える程強くなるし、スキル習得もその行動を繰り返し行う事で習得する。
それ以外の条件のスキルもあるけど。
で、殺してスキルを奪うだけじゃスキルは使いこなせない。
ましてや、奪ったスキルだ。
自分に合っているスキルなら良いが、合っていないスキルまで取得すると、他のスキルの成長にも影響が出そうなもんだが……現にあのミキヤって奴、ゼロの動きにまったく付いて行けてない。
そこでトリナマが近づいてきた。
「キジ丸さん、悪魔の眷属らしいけど、斬っても再生するばかりで倒せないんだよね。螺旋さん達は倒してるみたいだけど、どうやって倒すのか知ってる?」
「ああ、悪魔は攻撃の際、自分の魔力を流して再生出来ないようにするんだ。そうすれば倒せる」
「ありがとう!」
そう言うと周囲の騎士と兵を引き連れ、敵兵に突っ込みながらみんなに倒し方を説明していた。
トリナマも良い動きをしてるな。
俺もそろそろ敵兵を始末していくかと思い、アイドールに出る事を伝え、瞬殺で数十の兵士達を一瞬で倒しながら、感覚共有しているハンゾウでも、同じように瞬殺で数十の敵兵を倒す。
そんな中、ゼロの戦いを空間感知で観戦していると、ミキヤとは別の男がゼロの背後から迫っているのを発見。
俺はすぐさま縮地でゼロの背後へ移動し、ゼロに迫る剣を刀で受け止め、相手の腹に蹴りを入れ吹っ飛ばした。
吹っ飛ばした男は、白い髪で黒いコートに白いシャツ、黒いパンツに黒いブーツを履き、手には白い細剣だ。
「サンキュー」
「今の男も悪魔化してたな」
「今のはミキヤの仲間の『スピリット』って奴だ」
「全員悪魔になってんのかよ」
「そうみたいだ……な! ミキヤ!」
大剣を受け止め斬り返しながら聞くゼロ。
「おう! 全員悪魔になったぜ!!」
「それで強くなったつもりか!!」
「うるせぇ!! 最強になれればなんだって良いんだよ!!」
攻防を繰り広げながら話す2人。
すると吹っ飛ばしたスピリットが、一瞬で俺の目の前に姿を現し、剣を振り下ろしてくる。
俺は受け流し奴の懐に入ると、首目掛けて刀を振り抜くが奴は、身体を黒い霧のようにして姿を消し、俺の背後に移ると剣を振り抜いてきた。
そんな攻撃は分身としょっちゅう戦っている俺には効かないぞと思いながら、身体を逸らし振り返りながら斬り上げ、奴の胴体を斜めに切り裂くと奴は後方に跳んで距離を空ける。
「ぐっ……お前は確か、キジ丸だっけか? やるな」
「そういうお前は大した事ないな。霧になって移動しようが、悪魔になろうが……俺には勝てないぞ?」
「はは、流石最強忍者の主と言ったところか、だか……ん? 再生しない!?」
「悪魔の倒し方は心得ている……悪魔になって死んだプレイヤーはどうなるんだろうなぁ?」
俺はニヤっと笑みを浮かべながら奴にゆっくり近づいて行く。
と言っても、アベルの作った悪魔はデスペナ受けて復活したし、こいつらも普通にデスペナ受けて復活かな?
それだとこいつらに殺されて力を奪われた奴らは、納得しないだろう。
俺もそれだとバランスがおかしいと思える。
何かしらデスペナ以外のペナルティがあるはずだ。
殺して力を奪える種族というより、能力と言っても良い。
それに見合った縛りはいったいどんなものか……殺したら教えてほしい。
後ずさる奴に俺は。
「俺が殺したら、デスペナ以外に何かあるのか教えてくれないか?」
「はっ? 教える訳ないだろうが! 馬鹿か!?」
「いいじゃん別に、教えてくれても」
「なら俺に殺されろ」
「それだと縛りがなんなのか分かんないじゃん」
「俺を殺したら、何も教える事は無い、だから大人しく俺に殺されろ!!」
そう言って突っ込んで来た奴は、俺に辿り着く前に首が落ち、塵のように砕け消滅した。
「おお、光の粒子にならなかった」
死に方は悪魔と同じになるのか。
「サンキュー、ハンゾウ」
奴の首を斬り落としたのは、分身であるハンゾウだ。
まあ、俺が感覚共有でやったんだけどね。
ハンゾウに軽く頷かせて姿を消すと、未だにミキヤと戦っているゼロの方を見ると告げる。
「お仲間は死んだぞ~」
「スピリットが負けただと!? テメェ……」
「よそ見すんなよ!!」
俺の言葉に反応したミキヤの隙を突いてゼロは、奴の背後に回り剣を振り抜き首を斬り落とした。
落ちた首と身体が塵のように消えるのを確認したゼロは、肩の力を抜きホッとする。
「ふぅ~、何回斬りながら魔力を流したか……難しいな」
「慣れだな。それより、敵兵はまだまだ居るぞ」
「ああ、さっさと始末するか」
「そうだな」
ゼロと笑みを浮かべながら迫る敵兵に向かってゆっくり歩いて行くと、次の瞬間。
敵陣地の上空に、黒球が出現した。
あれは……精霊魔王?
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