第29話 出遅れた?
椅子に座り落ち着いたシンスケに何があったのか聞くと、動き出したディーに。
「街を破壊出来る兵器を作れるか聞かれてさ。それで、そんな物は作れないって言ったらあの状態だよ。ならディーをもっと作れとか、なんか焦った感じだったな」
こいつは外の事を何を知らないようだ。
テアード王国が帝国と手を組み、ゼルメアに攻める事を話すと。
「それで兵器が必要だったのか……材料があれば作れるけど、素材も渡さないで作れとか馬鹿かよって言いたいね」
素材があれば作れるのか。
ただ、ブリュスタルがなぜ兵器を急いで必要としていたのか?
ゼルメアに対して使うため?
まあ、戦争を仕掛けようとしてるし、兵器はいくらあっても良いんだろうけど。
ん?
ブリュスタルはイーターだよな?
って事は、テアード王国じゃなくイーターが兵器を必要としている?
……なぜ?
盗まれた兵器があるはずなのに態々他の兵器を用意しようとするのは……狙ってるのがゼルメアだけじゃないとか?
あっ、そう言えばイーターの中で割れてるんだったな。
じゃあ、ブリュスタルと帝国側に居るイーターは別の派閥って事になる。
いったい何を企んでいるのやら……。
「あっ、通信機はこれね」
そう言いながらインベントリからデスクの上に取り出したのは、スマホのような黒い物で、手に取り確かめるとボタンが2つ付いているのは分かった。
詳しく使い方を聞くとこれは、単純に対になる物と通話が出来るだけの物で、ボタンはコールする物と通話を切るためのボタンらしい。
ちなみに通話可能距離を聞くと一応、星の反対側に居ても通話は可能との事。
「一応?」
「試した事は無いけど、理論上可能って事だよ」
「なるほど、じゃあ貰っていくぞ」
「ああ、他にも欲しいガジェットがあれば言ってくれ、素材を提供してくれるならいくらでも作るから」
「オッケー、また何か必要になったら頼むわ」
そう言って館を出ると影に潜り、ギドに変装するとトップ達が集まっていた部屋に転移した。
既に印は付けてある。
影の中から部屋の中を伺うと誰も居ないようなので、影から出て部屋を出るとトップの誰かを探そうと魔力感知と空間感知をすると、近くの部屋に2人発見。
さっそく部屋に向かい開けると、侍のディルと幻術士のカシュリーがソファに座り、お茶を飲みながら話をしていた。
「ん? 戻ったのか」
「どうしたの?」
「お前にこれを渡しておく」
と、通信機を懐から出すフリをしてインベントリから取り出し、ポイっと投げて渡す。
受け取ったディルは通信機を見て首を傾げ、何なのか聞いて来たので俺と連絡が取れる物だと簡単に説明し、何かあれば連絡するように言うとディルは。
「別の所に行くのか? ここに居れば良いのでは?」
「そうよ、私達の頭なんだから」
「他にもやる事がある。それに……普段はお前達トップ連中が前に出ろ。俺は基本姿を見せる事はしない」
「取引や相手が頭を出せって時はどうする?」
「そういう時は『それ』を使え」
そう言いながらディルが持つ通信機を顎で指すと、ディルは通信機を見て納得したのか頷き。
「了解って、これはどうやって使えば良い?」
俺は簡単に使い方を説明した後、部屋を出て影に潜ると自分の部屋に転移し、キジ丸に戻り店の様子を見てから工房へ行き、商品を作りながら明日の午前中にはクレナイが王都に到着する頃だろうと思い、元王女をどうするか考えているとヒヨからチャットが届く。
『宣戦布告がキター!』
嬉しいのか?
『良かったな。これで公に戦争が始まるぞ』
『全然良くない! 侵攻する理由が【同盟国のテアード王国を侵略しようとするゼルメア王国に対し、即刻テアード王国から手を引かなければ、ゼルメアに兵を送る】って書いてあったんだよ!? やってもいない事で攻められるってなに!?』
これで確定だな。
帝国とテアード王国は裏で繋がっている。
まあ、元王女がなぜそれを受け入れたのかは分からんが、帝国とゼルメアを挟撃するつもりだ。
『さ・ら・に! テアード王国からも来てるんだけど【我がテアード王国を侵略しようとしたゼルメアに対し、ここに宣戦布告をする】って、もう意味が分からないんですけど?』
『ただゼルメアを潰すためにでっち上げられた内容だな』
『まだ準備も整っていないのに、いきなり過ぎだよ』
宣戦布告の書状は、帝国とテアード王国のどちらも冒険者が持って来たらしく、ちゃんとした使者ではなかったらしい。
『ちょっとハンゾウの仲間に確かめてもらうよ』
『お願いします!』
チャットを終了し俺は、すぐイブキに念話で宣戦布告の事を聞くが、帝国とテアード王国に潜入させている者からは、そのような情報は無いという。
俺はそこで頭に?が浮かぶ。
宣戦布告をしてるはずの両国に、なんの動きも無いってどうなってんの?
つまりこれは、別の誰かが仕組んでる?
まあ、イーターだろうけど、進軍しないのに先に宣戦布告してどうしようと?
この宣戦布告は嘘って事か?
するとイブキから念話が届く。
『マスター、大変です! 帝国とテアード王国の兵が、ゼルメアの国境を超えています!』
『はっ? さっき宣戦布告を受けたばかりなのに? どっちも動きは無かったんだろ?』
『すみません! どうやら相手は、嘘の情報を流していたようです』
嘘の情報……いったいいつから?
帝国がゼルメアにいずれ攻めるという情報も、嘘の情報だった?
あの時には既に攻めていた?
なんでこんなに出遅れたんだ?
…………まさか。
『イブキ、帝国が攻めて来るという情報は、誰から仕入れた?』
『それは帝国に潜入させている里の者ですが? まさか、裏切った!?』
『いや、そいつに確認してくれ、その情報をどこで仕入れたのか』
『はっ!』
念話を終了し俺は、ある人物の顔を思い浮かべていた。
あいつなら情報を弄るのは簡単だろう。
ましてやこっちには俺が居るという事も知っている。
だとすれば、忍者が裏に居る事も……つまり、最初から嘘の情報を流し、裏で準備を進めていたのだ。
情報に踊らされた俺達は出遅れる形になり、帝国とテアード王国から準備が終わる前に攻められる。
それを狙っての情報操作。
こちら側に忍者が居る事知っていてわざと嘘の情報を流した人物。
俺の読みが正しければ……。
『マスター、その者に確認を取ったところ、どうやら先代皇帝が話しているのを聞いたそうです』
やっぱりね!!
俺の読みは正しかったようだな。
あの爺が書いた絵か。
プレイヤーと組んだのもおそらくあの爺の考えだろう。
プレイヤーが居れば、プレイヤー同士の情報も入るからな。
とりあえず、進軍してる両国の兵はゼロやトリナマに任せて俺は、テアード王国の方を片付けるか。
クレナイが到着するのを待ってる暇は無いし、俺だけで先に行こう。
ゼルメアの街を戦場にする訳にはいかないしな。
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