第28話 シンスケに依頼。
女王陛下が便宜を図る。
その言葉に含まれる意味は、裏組織の人間を国民として迎え入れるという意味もあるのだ。
ただし、国にとって不利益になる事をすれば、即見放されるという公に出来ない約束ではあるが。
だが裏組織の人間からすれば、何かあれば国が助けてくれる事があるというだけで、有難い話である。
本来裏の人間は、このゲーム世界だと人として扱われないからね。
シーンと静まり返った部屋の中で、ルドが最初に口を開いた
「その話は本当か?」
俺は頷き。
「俺がお前達の頭になり、纏めればの話だがな」
「……分かった。骸はお前の下に就こう」
「俺もだ。お前の下に就く」
と、侍も言うので。
「お前達の名前は?」
「俺はルド」
「俺はディル」
そうして他の者達も順番に名乗り、俺の下に就く事を選んだ。
ひょろっとした奴、名前は『ゼイク』も下に就く事を選び、仕事をどうにかしてほしいというので。
「分かった。考えるから暫く待て」
「薬を売れねぇんじゃ、俺達は飯も食えねぇ」
「薬はお前達が作ってるのか?」
「いや、仕入れた薬に他の物を混ぜて売ってた」
うむ、自分達で作ってるなら普通の薬を作ればいいけど、仕入れとなると話しは変わるな。
……いっその事、こいつらに色々仕込んでやらせるか?
薬を作れるようになればそれで飯は食える。
しかも、薬の事なら丁度良い教師が居るしな。
それはイブキだ。
あいつは街中では薬屋に変装するため、薬の知識はそこらの薬師よりあるからね。
薬はイブキで他に何があるかな?
他の者達にどんな仕事をやっているのか聞くと、誘拐、暗殺、脅迫等々、いろいろ出て来た中で、1つ面白い仕事をしている組織があった。
「俺達は商店をやってる」
「……店って事か? なんの店だ?」
「何でも売ってる店だな」
「何でも?」
「ああ、客から要望があればそれを仕入れて売る」
「……つまり、人身売買もあるって事か?」
「数件あったなそんな仕事も」
「ほう……今後、攫ったり拉致をしての人身売買はご法度だ。それ以外はまあ、国に不利益になる事以外なら良いだろう」
生活のために身売りする奴もいるだろうしな。
「あぁ~、じゃあ、情報を売るのは止めた方がいいか」
なるほど、情報屋もやってたのか。
俺がやってるような事を、組織でやってるみたいだな。
これは使えるかもしれない。
「お前達の仕事の事は後でじっくり話そう。今は今後の方針だ」
俺がそう告げると全員俺に視線を向ける。
「帝国、ゾディラスと他の裏組織がゼルメアにちょっかいを掛けてくるらしいからな、お前達にはその相手をしてもらう」
するとルドが。
「そこの忍びの主に相手をさせればすぐなのでは?」
一度潰してるからね。
でもそれだと、他に手が回らないんだよ。
「キジ丸は他に仕事がある。だからお前達が相手をするんだ」
「ゾディラスの相手か……しかも他の組織も絡んでくるとなると、相当厄介だぞ?」
「そこは大丈夫だ……お前達を鍛えてやる」
そう言い獰猛な笑みを浮かべる。
ギドだとかなり怖い。
「あんたが俺達を?」
「いや、ハンゾウの仲間がやる」
「うむ、拙者もたまにお前達を鍛えてやってもいいぞ?」
すると大男が、ハンゾウとギドのどちらが強いのか聞いて来たので。
「そりゃハンゾウだ」
と、ギドで答えると、全員意外だという表情をする。
そんなに意外かな?
ギドの見た目からしてハンゾウよりは強そうに見えるけど、実際ハンゾウの方が強い。
ちなみにギドの職業は『剛魔武闘師』にしている。
その後、数日後から鍛え始めるからと言い解散した後俺は、ギドを連れ影に潜ると家に戻り、ギドを消すとシンスケにチャットを送る。
『おっす、いきなりだけど、通信機って作れる? 携帯みたいな感じで通話が出来れば良いんだけど』
ベッドに座り煙草を吸っていると返事がきた。
『通信機ね。作れると思うよ』
『じゃあ、作ってくれ、住人との連絡方法が欲しくてさ』
『あぁ~、素材があればすぐ作るけど、白鉄と魔石が欲しいかな』
それならあるな。
と思い、チャットを通じてトレードで素材を渡し、早めに作って貰う事に。
『腕に装備したら力が上がるガジェットを作ったんだけど、使ってみる?』
『毎日鍛えてるからそういうのは要らないかな』
『じゃあさ、ロボットは? ロマンの塊であるロボット!!』
『オートマタみたいなやつなら要らないけど?』
『違う違う、自分で乗って操縦するロボットだよ!』
『作れるのか!?』
『素材があれば!!』
俺に素材を強請るための口実か。
ちなみにどんな素材が必要か聞くと。
鉄インゴット10トン。
色鉄5トン。
ドラゴンの骨2体分。
その他、魔物の素材が多数。
『うん、それは要らないね』
そんな大量の素材がどこにあるってんだ!!
殆ど持ってるけど、鉄は流石にそんなにねぇよ。
とりあえず通信機を作ってもらう事を約束し、いつもの訓練をしてから眠りに入る。
翌日の昼頃にシンスケから通信機が完成したとチャットが届き、俺はすぐさま受け取りに影渡りで向かった。
玄関をノックするが返事が無いので、チャットを送ると勝手に入って地下まで来てほしいと言われ、中に入り地下へ下りると。
「何してんだ?」
「えーっと、助けてくれない?」
地下に下りて部屋に入るとそこには、ディーに床に押し付けられているシンスケが居た。
『誰だキサマ?』
こいつ、あのまま修理して動けるようにしたのか。
以前はアリバで会ってるからな。
「俺はシンスケの友達だけど、お前は誰だ?」
『……邪魔をするならお前も始末する』
「人形が何を言ってんだか」
「人形じゃなくてロボットだから!」
とシンスケが叫ぶ。
知ってるよ。
「態々修理したんだ」
「まあ、一応?」
「で、この有様と……馬鹿じゃん」
「いやいや、通信機を作るために再起動させて、仕組みを確かめたんだけどさ、そのまま放置してたらこうなっちゃった」
なるほど、通信機の依頼をした俺のせいでもあるのかって、なんでやねん!
「……斬って良いのか?」
「あっ、あまり壊さないようにしてほしいかな?」
「じゃあ、首を斬り落とせば止まるよな?」
「まあ、それでも止まるけど……修理が」
まだ使うつもりかよ。
と思いながらも、瞬殺でディーの首を落とすと力なくシンスケの上に倒れる。
操縦してるのは、ブリュスタルだっけ?
まだ居たのか。
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