第7話 天王流の2人。
「カイの居場所を教えてもらおうか」
「誰に依頼されたのか教えてもらおうか」
「お前は下がってろ、俺の獲物だ」
そう言って3人睨み合い、沈黙が数秒続くと周りで見ている傭兵の誰かが言葉を発した瞬間、3人同時に動き出す。
「お前ら……!」
キィーンと金属音を鳴らしタツの刀を左手で持つ短刀で防ぎ、右手で持つ短刀でトウジに斬り掛かり刀で防がれ、火花を散らし鍔迫り合い状態になる。
2人は両手で刀を持ち押し込んで来るが、俺は片手で押し勝つ。
「その程度か?」
「んな訳ねぇだろ」
と、タツが答えると刀を引き、今度は横に振り抜いてくると同時にトウジも引いて俺の短刀を受け流すと刃を返し、タツと同じように横に振り抜き、俺は2人の刃で挟まれるような状態になる。
空蝉術で避けるのは簡単だが、俺はあえて避けず。
左手の短刀でタツの刀を受け流しながら、右手の短刀でトウジの刀を受け流すと互いへ向かって刃が迫り、2人は無理やり力で刀を止めた。
そのため、全身に力が入り約1秒程全身が固まり、動けない状態になったので俺は、その隙に短刀を持ち替え2人の腹に刺すと手首を回し短刀を回し、続けて短刀の柄に掌底を入れ更に深く刺すと、2人は数メートル吹っ飛ぶがしゃがんだ状態で地面を滑り止まる。
2人はすぐさま短刀を自分で抜き、投げ捨てると魔力で止血して応急処置をすませ、立ち上がり刀を構えるとトウジが口を開く。
「今の動き、見えたか?」
するとタツは、俺を睨みながら答える。
「いや、まるで師匠のような動きで、まったく読めん」
「だな、これは本気でやらないとマズいぞ」
半蔵との
少しの力で相手に大きなダメージを与える。
半蔵に教わった流すタイミングの戦い方。
俺はこれを『
そして影の神に教わった、魔力や神気を遅らせて溜める事を『
これは身体の動きにも緩急を付け、動きを読み難くするものだ。
どちらも魔力を使って訓練しているが、今までとはかなり戦い方が変わったと、分身と訓練をしているとはっきり分かる。
今までは力とスピードを重視していたが、これぞ技というもの。
今の戦い方になってからは、さらに戦闘が楽しくなったのは言うまでもない。
俺は魔糸を短刀に巻き付け手元に戻すと血糊を掃い納刀し、腕組みをし真っ直ぐ立ちながら告げる。
「こい、お前達の全力を見せてみろ」
「調子に乗りやがって、その首斬り落としてやる」
とタツが告げ。
「じゃあ俺は四肢を落としてやろうか」
とトウジが告げる。
するとタツの全身に紫色の光が纏い始め、トウジの全身に緑色の光が纏い始めた。
ユニークスキルを使ったのか?
「師匠にあまり使うなと言われているが、こうなったら使うしかないよな」
「ああ、忍びが相手だ。師匠も分かってくれるさ」
どんなユニークスキルだ?
物凄く気になるんですけど。
「
とタツが告げると奴を纏う光が強くなり、早送りのようにタツの顔や肌が若返るとデカい身体が更に一回り大きくなる。
「
今度はトウジを纏う光が強くなり、肌は赤くなると顔や首元に黒い模様が浮かび上がる。
おそらく全身にあの模様は出ているんだろう。
ハクマと似た強化系のユニークスキルかな?
魔力が一気に跳ね上がったけど、どんな縛りがあるのかは分からない。
2人は準備が整ったのか、ニヤっとイヤらしい笑みを浮かべた次の瞬間、2人は同時にその場から姿を消し、気付けば俺の左側にタツ、右側にトウジが刀を振り抜こうとしていた。
首目掛けて迫る2つの刃をしゃがんで避けると同時に、両腕を広げ2人の腹に掌底を打ち込み吹き飛ばすと続けてトウジの吹っ飛ぶ先へ縮地で回り込み、飛んで来たトウジの顔面に拳を打ち込んで地面に叩きつけ、クレーターを作る。
更に俺は、身体を回転させ地面に着地したタツの背後へ縮地で移動し、背中に手を添えると浸透勁で体内に衝撃を流す。
するとタツは血を吐き出しその場で片膝を突くと思われた瞬間、振り向きざまに刀を横一閃。
俺は心眼で視えていたので身体を反らし避けるが、頭巾が少し斬れてしまいながらも、踏み込み奴の腹へ右拳を打ち込むとそこから続けて深撃をおみまいする。
タツの全身を引っ付けた拳で引っ張ると衝撃を逃がさないように殴り、蹴り、100回程攻撃したところで背後に殺気を感じ、空蝉術を発動させ、背後に居る奴の背後へ回ると、既に復活したトウジが刀を振り下ろしていた。
背後に回った俺に気付いたトウジは、振り向きざまに刀を振り抜いてきたので、更に空蝉術で避け、背後に回ると続けて刀を振り抜いてくる。
俺は左手の籠手で受け流そうとした瞬間、背中に痛みが走り、動きが止まったところ、トウジの刀も受け、防ごうとしていた左腕を斬り落とされてしまう。
俺の背中を斬ったタツの腹に回し蹴りを入れると、血を吐き出しながら吹っ飛ぶタツ。
左腕を斬り落としたトウジは更に刀を振り下ろして来ていたので、身体を逸らし避けるとこの戦いで初めて神気を使い、溜気でタケジの首に右拳を打ち込む。
するとトウジの首が弾け、頭部は身体から離れ絶命。
そこで俺の右側に姿を現したタツは、殴って突き出している俺の右腕を斬り落とし、更に刃を返し斬り上げてくる。
「死ねぇ!!」
「残念、それは無理だ」
俺はタツの背後に立ちそう告げると、神気で体内に書いた印を発動。
タツが振り返った瞬間奴の首が落ち、首から血を噴き出しながら地面に倒れた。
続けて体内に魔力で書いた印で魔糸を操り腕を回収し、回復属性の遁術で治しながら考える。
こいつらのユニークスキル、かなり強化されてたな。
俺の攻撃を受けても復帰が速かったし、頑丈過ぎる。
いや、傷の治りが速かったのか?
どちらにしろ、あれだけの強化なら何か対価が必要だったはず。
そのため、師匠からあまり使うなと言われていたってところかな。
あの復帰の速さを見誤ったせいで、腕を斬られてしまったからねぇ。
ユニークスキルはやはり油断出来ないな。
格下でもやられる可能性があるのは、やっぱり面白い。
良い経験が出来た。
カイの居場所を聞きたかったけど、まあ、仕方ないよね。
殺さないと負けてた可能性があるし。
腕が治ったので観戦していた傭兵達に告げる。
「では、残り少ない時間を楽しめ」
そう言って俺は影に潜り、街の外へ転移した。
ギルドに行ったのは子供が居ないか確かめるためと、ギルドマスターが居るのか確かめるためだ。
まあ、どちらのギルドマスターも既に街には居ないと分かったし、現在街に居る者は殲滅対象って事だな。
あっ、街の子供達は既に保護してあるよ。
分身は本当に便利です。
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