第6話 タツとトウジ。

最初に探索者ギルドへ向かい、出入り口の前に立つと魔力感知と空間感知で中を調べる。


すると数人残っている状態で、殆ど人が居ない様子。

ギルマスも居なさそうだな。

神託を受けて街を出たのか。


俺はギルドに入り中の様子を伺うと受付嬢が1人だけで、奥には数人事務仕事をしている職員が3人程いる程度。


神託を受けなかった者達だな。

ギルド職員なら殲滅する必要無さそうだけど、まあ、残したなら殲滅するかと思い、ギルドを出て次は傭兵ギルドへ向かう事に。


纏めて始末するので今は何もしない。



傭兵ギルドに到着すると魔力感知と空間感知で、中に大量に人が居る事が分かり、流石傭兵だと感心する。

誠実な者は少ないようだ。


中に入ると柄の悪い連中が俺を見て固まる。

そりゃ忍者が立ってたら驚くよねと思っていたが……。


人混みの中から1人の男が出て来て来た。


「テメェか? 皆殺しにするって言ってる奴は?」

「うむ、皆殺しではない、子供は保護しているのでな。だがその他は……『殲滅だ』」


と、最後に威圧を放ち告げると突然背後に殺気を感じ、身体を逸らし避けると話していた男が斬られ、血を噴き出し倒れる中俺は、避けると同時に振り返りそいつを見る。


長い黒髪を後ろで縛り、顔に斜めに入った大きな傷跡があり、厳つい顔をした大きな男。

黒い軍服っぽい格好にパーツ鎧を着け、傭兵っぽい格好をしているが、一番目についたのは、腰の鞘と手に持つ刀だ。


すぐさま看破すると名前は『タツ』で、職業は『侍大将』となっていた。

明らかに仁の国出身だろ。



奴は傭兵を斬ったにも関わらず、表情を変えず真っ直ぐ立つと俺を見て言う。


「まさかこっちで忍びの者に会うとはな」

「お前は仁の国の者か」

「そうだが今はこのとおり、傭兵だ」

「侍が傭兵とはな」


ピッタリじゃん。


「傭兵は人を斬る機会が多いからな。辞められない」


そう言って口端を上げて笑う。

あっ、戦闘狂か。

……いや、こいつもしかして。


「落ちた侍か」

「落ちたとは言い方が悪い、俺は目覚めただけだ……本当の自分にな!」


そう言うといきなり踏み込み、刀を振り下ろしてきたので、避けながら奴の左側へ入り込むと顔面に左拳を打ち込むが奴は頭を傾げギリギリ避け、刃を返し斬り上げてくる。


良い反応をしてるな。


殴った体勢のまま右手で腰の短刀を抜き、すぐさま刀を受け流すと奴の腕は上に上がり、胴体がガラ空きになった所で左膝を叩き込んだ。


すると奴は自分で後方に跳び衝撃を逃がし、フワっと着地する。


かなり戦い慣れている。

傭兵として常に戦っているのか。



お互い距離が空いたところで見ていた他の傭兵が、タツに向かって吠える。


「テメェ! 俺の仲間を斬るとはどういうつもりだぁ!?」

「そんなところに突っ立ってるのが悪いんだろ。俺のせいにするな。それに……避けられなかったのもそいつのせいだ、弱い奴は死ぬ世の中だろ」


と、タツは当然のように答えた。


殺伐とした大陸だなぁ。

いや、こいつが人斬りだからだな。


「天王流師範、カイを知ってるか?」


そこで初めてタツは表情に変化があり、鋭い目つきになりながらも深い笑みを浮かべ答える。


「師匠を知ってるのか」

「師匠? つまりお前は天王流の者だな?」

「ああ、俺は師匠を追いかけここまで来たのだ。まさか師匠を殺すために来たのか? だったらここで確実に殺しておくが……」


いや、最初から殺す気満々でしょ。

それにしても、天王流の者とこんなところで会うとはねぇ。

それより……。


「カイの居場所を知っているのか?」

「ああ、知ってるが、お前に教える気は無い……ここで殺すからな!」


そう言うと一瞬で俺の目の前に姿を現すと刀を振り下ろしてくる。


縮地か。

俺は短刀を右手で逆手に持ち、振り下ろされる刀に添えて受け流しながら左足を前に出して踏み込むと同時に左拳を顔面に叩き込むが、奴は身体を捻り衝撃を逃がす。


しかし、俺の拳は奴の顔面に引っ付いた状態で、俺が拳を引くと奴の顔面が引っ付いてきたところで拳を離し、奴の身体が前屈みになったところを右手の短刀で首を狙う。


だが奴はそんな体勢から刀を斬り上げてくる。

俺に殴られても攻撃する余裕があるとは驚きだ。



俺は短刀で下からくる刀を止め、左手で丁度俺の腹の前にある顔面に拳を叩き込む。


そこで初めてまともに入り、奴は血を吐き出しながら吹っ飛んだ。

『溜め』のある拳だ。

今のはかなり効いただろ。


飛んで来たタツを避けるように傭兵達は広がり、タツは地面に叩きつけられ転がると地面に手を突き、すぐさま立ち上がり刀を構え、袖で口から出ている血を拭う。


「俺が殴られただけで意識が飛びそうになるとは、かなりヤバい拳だな」

「今のを喰らって立っているお前も大概だがな」


打たれ強いな。

どんな訓練をしてるんだ?

今の拳を耐えるとは……こいつも覚醒者として何かやってるのか。


「俺はいつも師匠にボコボコにされていたからな。ある程度の攻撃は耐えられるが、今のは危なかったぞ」

「ほう、だったらどこまで耐えられるか……試してやろう」

「その前に俺が斬る」

「やってみろ」



お互いそう言って黙り込み、睨み合いが数秒続いた次の瞬間、ターン……! と発砲音が鳴り響き、俺とタツはそちらに目をやる。


するとそこには、ライフルを空に向けて撃ったであろう男が立っていた。


「おいタツ、うちのもんを斬っといてタダで済むと思ってるのか? 殺すぞ?」


男はタツと同じくらい大きく、青い軍服を着た傭兵で、金髪をオールバックにして顔には入れ墨があり、歴戦の戦士という風貌と目つきをしている。


「『レッド』今はお前の相手をしてる暇は無い、こいつを殺したら相手をしてやるから黙って見てろ」

「ふざけんな、その前にお前を殺して挽き肉にした後、お前の仲間に食わせてやるよ」

「ほう、お前が俺を殺す? 冗談が言えるようになったのか?」

「テメェ……」


レッドという男が前に出ようとしたところで、人混みの中から声が聞こえてきた。


「タツ! 帰って来ないと思ったらこれはどういう事だ?」


黒髪の短髪で、左目に傷跡があるイケメン。

身長は俺と同じくらいで、スタイルは細マッチョって感じだ。


タツと同じ服装で、腰には刀。


「『トウジ』か、この忍びの者が師匠を探しているようでな。ここで始末する」

「ほう、忍びの者がこっちに居るとは、で? なぜ師匠を探している?」


と、俺に聞いてくるので。


「捜索依頼を受けているからな」

「誰に?」

「言うと思うか?」

「素直に言えば死ぬ事は無いぞ?」


ククク、こいつも天王流の者か?

良いねぇ、この街にこんな強い奴らが居るとは思わなかった。



……よし、滅ぼす前に訓練でもしようかね。

こいつらで!

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