第20話 新たな属性。

奴が細剣と炎を消し、俺の死体を見ながら。


「面白い人間ね。冥黒を受けて死なない人間が居るなんて……人間も昔とは違うって事かしら?」

「人も世界も成長しているからな」

「っ!?」


俺は錬生術で生き返った瞬間、奴の背後に移動し直刀を振り抜き背中を斬るが、奴が前に跳びギリギリ避けたので傷は浅い。


「あなた……殺したはずよ? 間違いなく本物のあなたを、なのにまだ生きてるって、人間じゃないでしょ?」

「拙者は正真正銘の人族だが? それより、お前に感謝する」

「はっ? 殺されて感謝って頭大丈夫?」


そっちじゃねぇよ。


「お前のお陰で思いついた事があるのでな……試させてもらう」

「やっぱりイカレてるわね」


悪魔に言われたくねぇ!



さて、出来るかどうか……。


俺は明鏡止水で深く集中し、イメージを固める。

奴が使っていた黒い液体。

魔力や神気、エーテルを液体としてイメージし、それを身体の外に出して纏う。


……かなり制御が難しいな。

でも……不可能じゃない。


少しエーテルが少ないか……更に増やして……おっ?

これは……。


すると次の瞬間、俺の身体から虹色の液体が溢れ、身体に絡みついていく。

しかし、液体が暴れるように周囲に伸びたり、地面を抉り始める。


制御が難しい!!


「何をするのかと思えば、制御しきれていないようね」

「問題無い……その内慣れる」


そう、戦いの中で慣れれば良い。

それに、これで終わりじゃないぞ。


俺は液体を直刀に纏うと虹色の直刀になり、左手には虹色を放つ火を纏う。


「私の真似事かしら? 冥黒の真似をしても意味無いと思うけど?」


奴の言うとおり、見た目だけを真似ても意味は無い。

ただし、見た目だけじゃなく『新しい属性を作れば』どうなる?



この世界は人間の思いで成長すると言っていた。

新しい技を作り世界が認めれば、それはスキルとなり形を成す。

なら、属性はどうだ?


以前全ての属性を混ぜた事があるが、あれはただ混ぜただけだ。

新しい属性とは違う。

では、新しい属性とは?


属性を持っていないと使えない?

いや、俺は取得する前から加重をやっていた。

重力属性を得て幅は広がったが、無くてもイメージで使えるという事だ。


冥黒に対抗するための属性。

何をイメージする?

黒に対して白?

闇に対して光?

陰と陽がこの世の常だ。



「真似だけではないぞ……お前を始末するための技だ」

「あら、そうは思えないけどねぇ?」

「面白いものが見れるぞ?」

「それは楽しみねぇ。でも……その前にもう一度殺してあげる」

「うむ、殺せるならな?」


奴が姿を消した瞬間俺は、虹色の直刀を振り向きざまに横一閃。

しかし、奴の黒い細剣によって受け止められてしまう。


「よく分かったわね?」


何度も同じ手を食うかよ。


俺は後方に下がりながら左手の炎を奴に放ち、白を基調とした虹色の炎に包まれた奴は、一瞬警戒するが特に何も変化が起きずキョトンとすると。


「ねぇ、これに何の意味があるのかしら? 熱くもないし、身体が動かなくなる訳でもなさそうだし……本当にただの見せかけなのかしら?」


フッフッフッフッ、その属性の恐ろしさを奴は知らない。

いや、俺もどんな属性になるのか知らないけどね。


やはり最初はそんなにはっきりと効果は出ないか。

加重の時もそうだったしな。


仕方ない、奥の手を使おう。



俺は影分身を11体出し、感覚共有を使い同じ属性を魔力で発動させると紫色を基調とし、色んな色が偶に現れる炎が奴を包む。

しかし、当然最初から効果が現れる訳は無い。


「熱くない炎なんて出してどうしたの? こんなんじゃ私は倒せないわよ? こうしないと」


そう言うと奴は、黒い炎の球を本体の俺に向かって放ってきた。

俺は横に跳び避けるが、黒い炎の球が通り過ぎる時、何というか熱いのは熱いんだけど、冷たすぎて熱い感覚?


普通の火の熱さではなく、低温火傷みたいなそんな熱をあの黒い炎から感じる。

全身を包まれた時はとにかく熱かったから気付かなかったけど、あの世の炎って感じだな。


感覚共有をしながら更に同じ属性の炎を出し、ひたすら奴を焼くが効果は出ない。

その間、奴の攻撃を躱す事に専念し、影分身だけで焼き続ける。



そして数分後。


「逃げるばかりじゃ私は倒せないわよ? ……ん?」


それまで黒い炎の球を打ち続けていた奴の動きが急に止まり、自分の手を見る。

その間に俺は影分身を解除し、全力で直刀と炎を新たな属性にすると。


「っ!?」

「よそ見をするとはな」


奴の背後へ回り虹色の直刀を心臓に突き刺した。


すると奴は自分で前に出て直刀から抜けると振り向きざまに黒い細剣を右手に出し、首目掛けて振り抜いて来るが、俺の首に当たる直前で止まり、刃は届かない。


「っ!?」


目をよく凝らすと見える。

虹色に光る細い糸が。


「感謝する。お前のお陰でまた強くなれた」

「フフ、この時代に原初の悪魔を倒せる人間が居るとはね。せっかくあいつに貰った国で、良い国を作ろうと思ってたのに……残念ね」

「時間が立てばまた蘇るのだろう?」

「あら、知ってたの?」


以前倒した悪魔がそんな事を言ってたからね。


「さて、消える前にシティアがどこに居るのか教えろ」

「フフフ……」


奴の身体が塵のようになり風に乗って消える直前に奴は。


「あの子は既に居ないわよ」


その言葉を最後に奴は、微笑みを浮かべながら消えていった。



シティアが既に居ない?

やっぱり悪魔に殺されてるのか?

クレナイは悲しむかなぁ?


まあ、居ないんじゃしょうがない。

とりあえず原初の悪魔を1体倒せたんだ。

俺も1回死んじゃったけど。

マジで強かった。


ちなみに奴を殺した新たな属性は『破壊』だ。

細胞やエネルギーを破壊、触れるモノ全てを崩壊させる属性。

出来たのは【早熟】と影分身のお陰だな。


今後のためにも、訓練に取り入れないとな。

まだ原初の悪魔は居るからね。

新しい技も考えとこう。


そんな事を考えていると、ふと景色が豪華な部屋に戻り、奴が言ったとおり戻って来れたようだ。


……とりあえず帝都に帰るか。



あっ、ルゥを倒して取得したスキルは……。


『【冥黒】を取得しました。』

『【精神属性】を取得しました。』


【冥黒】は、原初の悪魔だけが持つ属性で、触れたモノを死に至らせるまで侵食する事から、冥府の猛毒と呼ばれている。


よく生きてたな俺。


【精神属性】は、原初の悪魔だけが持つ属性で、対象を操ったり記憶を弄ったり出来る。ただし、魔力制御が高い者、精神耐性の高い者には効かない。


これで記憶を弄ってたのか。

使う場面はあるのかな?

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