第16話 絡まる魔力。

その後の話し合いで、賠償金と戦争を仕掛けないという誓約書にサインして終わると。


「じゃあ、用事も終わったし帰るか」


と、ゼロの言葉に将軍が。


「いやいや、悪魔の事を放置は出来んだろ!?」

「それは帝国の問題だろ? うちには関係ないんだが?」


うむ、確かに!!

でも……。


「ゼロ殿、悪魔を放置すれば、ゼルメアも狙われる可能性があるぞ?」

「あぁ~、今回のようにか」


俺は頷く。

ゼルメアを狙ったのは帝国だが、その裏には悪魔が居た。

ならいずれまたゼルメアを狙って来る可能性は高い。

それに……悪魔を放置すればこの大陸が滅茶苦茶になるかもしれないしね。


そこで俺はふと思い出し。


「アインリク、異界人と手を組んだのは、主を始末するためか?」

「ん? ああ、そうじゃ。あの男も異界人じゃからな。それに、異界人の情報網は計り知れん」


まあ、掲示板とかあるしなぁ。


アインリクはリクの伝手でプレイヤーを紹介してもらい、そのプレイヤーからゼルメアや俺の情報をもらっていたらしい。



そこで俺は、忘れていた事を思い出したので告げる。


「アインリク、ゾディラスを使ってゼルメアを潰そうとしているらしいな?」

「なんだそれ? 今初めて聞いたんだが?」


と、ゼロが言う。


「陛下に聞いてないのか? 主が報告してあるぞ?」

「それは聞いてないな」


ヒヨはゼロに話してないのかと思い、俺が簡単に説明すると。


「マジかよ。今はこの爺さんがゾディラスのトップ?」

「ああ……で? どうなんだ? 主と拙者でまた潰してやろうか?」

「はて? 何の事かワシは知らんが……噂によるとゾディラスとやらは北のソリスティアを狙ってるようじゃぞ?」

「とぼけやがって……まあ、ゾディラスはゼルメアを狙うのを止めたって事だな?」

「噂ではそうじゃな」


自分がゾディラスのトップとは認める訳無いよね。

しかし、態々ソリスティアを狙っていると俺達に教えるとはな。


嘘の情報かもしれないが、今のところ地下の連中から連絡は無いし、ゼルメアを狙うのは止めたのかも?

油断は出来ないが。



聞きたい事は聞けたので。


「ではそろそろ、リオールをここに呼べ」


俺がそう告げるとアインリクは後ろの騎士に指示を出し、騎士達が部屋を出て行くと、ソファにもたれ掛かり力を抜く。


「はぁ~、年寄りにはキツイのう……息子2人は殺され、孫は悪魔と関わりがあるとは」

「アインリク様、もしリオール様が悪魔と何らかの契約をしていた場合、どうしますか?」

「ふむ……そりゃ投獄せんとな。悪魔との契約はどの国でも禁止されておる。そもそも悪魔召喚が禁止されておるからな」

「そうですね……」


そんな法律があったとは知らなかった。

じゃあ、召喚した事があるタピオカは捕まるな!



と考えていると扉がノックされ『お連れしました』と騎士の声がし、アインリクが入りなさいと返すと扉が開かれ、若い男と騎士が入ってくる。


「お爺様、私をお呼びと聞きましたが、どのような? こちらの方達は?」

「まあ、こちらに座りなさい」

「……はい」


状況が飲み込めないようで混乱しながらも、アインリクの隣に座るリオール。


しかしこの男、どこかで見た事あるような? 無いような?

金髪でイケメンというか可愛らしい顔をした青年。

女装したら可愛くなるに違いない。


と、そんな事はどうでもいい、喉の奥に何か引っ掛かってるような気持ち悪い感じだ。

絶対どっか見た事はあるはず。

でも思い出せない!!


「リオール、単刀直入に聞くぞ? お前は悪魔と契約しておるか?」

「はっ? 悪魔? それは禁止されていますよね?」

「そうじゃ……お前がテアード王国の王女と一緒に居た男と話しているのを見たのじゃが、そやつは悪魔の可能性があるんじゃ」

「テアード王国の王女? 確かに王女とは少しお話をしましたが、それ以外に誰か居ましたか?」


こいつも魔法に掛かってるのか?


するとアインリクが俺を見るので頷き、リオールの背後へ行き手を添えて神気を流すと……確かに魔法に掛かっていたようだ。


だが、アインリクや将軍達とは少し違う。

将軍達は自分の魔力と同化するように魔力が流れていたがこいつの場合、縛るように悪魔の魔力が絡まっていた。


他の者とは違う魔法を掛けられていたようだな。



俺が解除するとリオールに変化は無く、キョトンとした表情でアインリクを見る。


「リオール、何か思い出す事はあるか?」

「思い出す? ……ああ! そう言えば……」


そう言うと俺の方を向いていきなり頭を下げる。


「あの時はありがとうございました。お陰で無事戻る事が出来ました」


俺は首を傾げ、何の事か考えるが記憶に無い。

こいつに会った事があるのは間違いないようだが……。


「この忍びの者と知り合いなのか?」

「はいお爺様。知り合いと言うか以前僕が、妹に嵌められて投獄された事がありましたよね?」

「ん? あぁ、確か濡れ衣を着せられ奴隷に売られたとか、しかし助けられ戻って来た時、冤罪じゃと判明したというやつじゃな」

「そうです! 僕達が奴隷として売られそうな時、助けて頂いたのがこの方と仲間の忍びの方でした」

「っ!!」


あぶねぇ、声が出そうになったぞ。

そうだ、ポレの地下に囚われていた獣人を助ける時、人族も数人居た中にこいつも居た!


あの時も、確かに嵌められてここに居ると言ってたな。

ああ、思い出せてスッキリしたぁ。


なるほど、あの時の中に皇子が居たとはねぇ。



「と、リオール、それは分かったが他に何か思い出さんか? 王女と一緒に居た男の事とか」

「男……あっ、名前は知りませんが、確かに話したのを覚えています」

「どんな話をしたのか覚えておるか?」

「話したと言っても『シティアと仲良くしてやってくれ』というような内容でしたよ?」

「なるほどの……それ以外には無いのか?」

「ん~……そう言えば、ニミアの事も言ってましたね」


第一皇女の事?


「なんと言っておった?」

「ニミアを信じてはダメだと……」

「男がそう言ったのか?」

「はい、確かに言ってました。僕もどういう意味なのか分かりません」

「そうか……」


アインリクはそう言うと考え込み始めたので、俺が代わりに聞く。


「リオール、お前は悪魔と契約しているか?」


俺の言葉に将軍もアインリクも騎士達も全員リオールを見る。

しかしリオールは。


「悪魔と契約なんてしませんよ!? 犯罪ですから!」

「…………そうか、分かった」


うむ、心眼でも視えなかったって事は、リオールは契約してなさそうだな。

となると……やはり第一皇女?

いや、それよりも下の子の可能性もあるか。


なんせ可愛い子と言ってたからね。



そう言えば、テアード王国に行ったクレナイから、一切連絡が来てないな?

シティアと話は出来たのか?

と、気になったので念話をしてみると。


『シティアを探しているが、まったく見つからないんだ』


戦争を仕掛けておいて女王不在?

どういう事?

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