第4話 残った者は。

ブラック過ぎるかもしれないこの街は、どうやら地中深くからマナの結晶を掘り出しているらしい。

資料を読んで分かった。


そしてもう1つ分かった事は、この街はバルデン連邦政府主導で運営されている事だ。


ベルックという今変装している男は、この街で行わている事業のトップらしく、バルデン連邦政府とのやり取りをしてる手紙が残されていたのを発見。


影の神が言ったとおり、この国は滅ぼさないと世界が滅ぶ可能性があるね。

資料にはマナ結晶の事にもついて書かれているものがあり、その資料によるとマナ結晶は、精霊が宿っている物もあるらしく、所謂精霊の化石のような物だな。


それを掘り出し活性化させてその精霊を兵器として使うようで、死の大地で実験を行い、更に死の大地を悪化させている。


その実験の中で過去に何度かファントムも生まれたらしく、大勢の死者を出していると資料に書かれていた。


ちなみにそのファントムは既に消滅している。

時間が経てば自然消滅する程度だったので良かったが、これが世界に影響を及ぼす程のものなら、今頃このゲーム世界は滅んでるぞ。



部屋でじっくり資料を読み、大体の内容は理解した。

やはりこの国は滅ぼそう。

特にこういう施設がある街は、徹底的に何も残らないようにしなければ、また誰かが同じ事を繰り返す。


俺はどうするか少し考えた後、椅子に座りながら影で使い魔を作り、それを増加法で増やすと街全体に散開させる。


これはどこに人が居て、子供は居ないか確認するためだ。


先程の男が数日前に何人か辞めて街を出たと言っていたが、それはおそらく神託があった誠実な者だろう。



椅子に座り目を瞑りながら、影から作った1万匹のネズミの使い魔で確認すると、この街に子供は居ないと分かったので、手始めにこの街を滅ぼす事を決意する。


神の任務だ……子供は居ない……と、少しでも罪悪感を無くすため、いろんな理由を付け加えていく。


残っている者は、自分達が作った物でどうなるかを理解している者達だ。

中には生活のためやら、いろんな理由があってやっているんだろうけど、世界の滅亡を避けるためにお前達を殲滅する……よし、覚悟は決まったぞ!


目を開けて……。


「さて、どうしよう?」


覚悟は決まったがどうやって滅ぼせば良いのか、パッと思い浮かばない。

いや、街1つ滅ぼすってやった事も考えた事も無いからね?


派手にやった方が良いのかな?

バレずにやるなら順番に暗殺していくけど……いや、バレても問題無いか。

最終的にこの国は亡ぼすんだ。


じゃあ……あの封印した技を使うか。



俺はそう決めると影に潜り、一旦街の外に出ると忍者に戻りカゲを口寄せし、背中に乗せてもらい上空へ向かう。


『あれをやるんですね?』

『ああ、この国を滅ぼす第一歩だ、ド派手にやろう』

『はっ! 結界を張るので衝撃波は問題ありません、思う存分やって下さい』

『サンキュー、じゃあ、今回はエーテルでやろうかな』


そう言って神気と魔力を合わせ、エーテルにするとHPとMPを半分消費し、更に増やしたエーテルで印を書き、発動させた。



影明流忍法・五式落星(らくせい)



するとふと辺りが薄暗くなり、見上げると空から直径300メートル程ある、炎を纏った巨大な岩が顔を出す。


ゴゴゴゴゴゴ……と大気を揺らし、街に向かって落下していくと放出する熱により、周辺の木々を燃やし、地面を溶かし始め山は燃え盛る。


以前ダンジョンで使った時よりは小さく、落下スピードは速い。

数秒後、街は燃え始めたところに岩が落下した瞬間、大爆発を起こしドーム状に衝撃波が広がるとすぐ、巨大なキノコ雲が発生。


爆発の衝撃波は周囲の山を削り地形を変え、一瞬にしてクレーターを作り上げた。



熱風や飛んで来る石や岩等が、カゲが張った結界により弾かれる中俺は、その光景を見て思う。


こういう場面でしか使えない技だな。

下手したら世界に影響だ出そうだ。


暫くして煙が消えると街があった場所を一応確認し、何も残っていない事を確かめるとその場を後にする。



俺達は資料で判明した主要都市を回る事にし、カゲに次の街へ向かって貰っている最中自分と向き合い、街を滅ぼし、大勢の者を始末した事に対し、そんなに気落ちしていない事に驚く。


やっぱゲームだからかな?

神のお墨付きだから?

精神耐性スキルのお陰かも?


まあ、悪い奴らだとどこかで認識しているからだと思うが……これなら何とか滅ぼせそうだな。


しかし、次に行く街はそう簡単に滅ぼす事は出来なさそうだ。

なんと次の街は、探索者が集まる街『リサルトア』という街で、近くにダンジョンがある街らしい。


先ず子供を避難させないといけないし、探索者も避難させないとねぇ。

探索者も誠実な者は神託が来てるのかな?

まあ、ギルドに行ってみるか。



そんな事を思いながら空を進んでいると、地上にビルクマの行列を発見。


俺はカゲに待機してもらい、影に潜ると行列の一番前のビルクマの影に転移し、街道沿いの茂みに転移してアリバに変装すると街道に出る。


一番前のビルクマが俺を見ると止まり、小窓が開いて男が顔を見せ声を掛けてきた。


「こんな所でどうした? この先は止めた方が良いぞ?」

「何かあったんすか?」

「お前は神託が来てないのか?」


と、怪訝な表情になる。


「あぁ、神託ね、きやしたよ。街が滅ぶってやつっすよね?」

「ああ、俺達はリサルトアから出て来た探索者だが、向かう先でも先程凄い爆発があったのを知らねぇか? あれはどこかが滅んだんだろう」


この辺りでも気付く程の爆発だったからなぁ。


「あっしは近くから来たんすけど、山に囲まれた所に巨大な隕石が落ちてやしたよ」

「隕石!? ……やっぱり神託は本当だったんだな。お前もこの先に行くなら気を付けろ? いつ街が滅ぶか分からねぇからな。なんなら乗ってくか?」

「忠告感謝っす! 自分はこの先に用事があるんで、お誘いは有難いっすけど、遠慮しておきやす」

「そうか? いつでも声を掛けてくれれば乗せるからな。じゃ、気を付けて行けよ?」

「はい、ありがとうございやす」


そう言って行列の横を歩き、小窓から顔を出す人達に軽く頭を下げ通り過ぎると、見えなくなった所で茂みに入り、カゲを呼びよせ忍者になると背中に乗って出発する。


探索者にも神託は降りてるんだな。

さて、どんな街かなぁ。



まだ見ぬ探索者が集まる街を想像しながら空の旅をし、翌日の昼前にはリサルトアに到着した。


山の麓にある頑丈そうな高い外壁に囲まれた街、リサルトア。

上から見ると楕円形の形をしており、街の中心へ向かうにつれ、高い建物があるので、外から見れば山型に見える。


離れた場所に降りアリバで街道を歩いて向かい、人が並んでいない門へ到着すると門番に探索者カードを提示して中に入ろうとしたところ、鼻で笑われてしまう。


「はっ、最低ランクの探索者がこの街になんの用だ? お前じゃダンジョンに入っても意味ねぇからさっさと消えろ」


そう言って手でシッシッと払われてしまった俺は、この街に残っている者は全員始末して良いなと決める。



ここで始末したいところだが、その前に子供を避難させないとね。

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