第16話 義賊との戦い。
剣王は入り口の前に立ち、俺とリクは離れた場所で互いに6メートル程離れて対峙しているのを観戦している。
リクを倒せば剣王が出て来るのは分かっているので、さっさと倒すとしよう。
看破で見たリクの職業は『義賊』だ。
どんな職業かは知らないので、油断は出来ない。
「悪いな、俺の野望のためだ、殺されてくれ」
そう言って短剣を両手に持ち、腰を落として構えるリク。
俺は居合切りの構えを取りながら答える。
「気合入れないと『一瞬』で終わるぞ」
「言うね……それはこっちのセリフだっ!」
リクは結構な速さで突っ込んで来ると途中で瞬身を使い俺の右側に姿を現し、両手の短剣を一緒に振り下ろしてくる。
瞬身は移動は速くとも、攻撃速度が速くなる訳じゃない。
振り下ろしてくるリクに対して俺は、後ろ脚で床を蹴りリクの懐へ入りながら抜刀。
リクの上半身と下半身を両断する……が、リクの姿が消えたと思うと背後から殺気が迫って来たので、振り抜いた状態の姿勢から左手で脇差を抜きながら振り返り、振り下ろされた短剣を防ぐ。
「……防がれるとはな」
鍔迫り合いの状態で言うリク。
「まさか残像とはね……もしかして忍者とか?」
「いいや、俺の職業は義賊だ」
「残像スキルがあるのか」
「ちょっと違うが似たようなもんだなっ!!」
リクが短剣を力で押し、脇差を弾くと腹に蹴りを打ち込まれて俺は少し後退するとリクは距離を空ける。
「俺の蹴りを喰らっても殆どダメージが無いって、どんだけ頑丈なんだよ」
「鍛えてるからな」
「じゃあ、本気でやらせてもらうぞ?」
「最初から本気で来いよ」
そう言ってお互い笑う。
数瞬間が空いて、最初に動いたのはリクの方だった。
流れるような2本の短剣による猛攻。
途切れる事の無い全ての攻撃を俺は刀と脇差を持ち、躱し、弾き、受け流していく。
数秒その状態が続くとリクの動きに、徐々に変化が現れた。
リクの姿がダブって見えるのだ。
その残像ともいえる姿は、次第に多くなり、リクの後を追うように間隔が広がり始める。
するとそこで、リクの攻撃を防いだ瞬間、斬撃が多重で襲い掛かって来るようになり、速度は更に増していく。
これは俺の技『瞬影』と似てる。
ただ瞬影とは違い、同じ場所を攻撃するようで、タイミングさえ外さなければ問題は無いが……あまり防ぎ過ぎると刀が折られそうだ。
ちなみに、今の武器は自分で作ったBランクの無名刀を使っている。
咲時雨は基本シズキの時に使う刀だからな。
まあ、変装術で見た目を変えればそうそうバレないだろうけど、鑑定や看破をされると即バレるので、あまり使わない。
その後、数秒経つとリクが距離を空けて構えると動きを止めた。
俺は構えずに立つ。
「はぁ、はぁ……俺の【連身法】が、効かない、とはな……」
「まあ、訓練で慣れてるからな」
「ふぅ~……お前も使えるのか?」
「連身法だっけ? それとはちょっと違う、オリジナルの技だけどね」
するとリクは笑いながら言う。
「オリジナルの技……確か、侍は流派が多かったな。オリジナルの技なんて作れるのか」
「俺も見た時はテンション上がったね」
「……手加減してるのか?」
怪訝な表情をして聞いてくるリクに対し俺は。
「いやいや、お前の猛攻を防ぐのに精一杯だけど?」
これは本当だ。
攻撃に転じた瞬間、斬られると心眼で見えていたので、防御に徹したのだ。
「良い物を見せてもらったお礼に、俺の技も見せてやるよ……『オリジナル』の技だ」
これを見て、お前も技を作れば良い。
楽しいぞ?
「ほう、それは楽しみだな」
楽しそうに笑うリク。
男なら楽しいよな!
俺は全身に魔力を重ねて流し、瞬影を発動させる。
刀を軽く振り、姿が二重にダブってる事をリクに見せ、自分も技が発動している事を確認すると、腰を落とし前屈みになると言う。
「しっかり見ろよ?」
「別の形で見たいと思うのは、俺だけか?」
苦笑いを浮かべて言うリクに対し、俺は笑みを深め動く。
縮地でリクの背後に回り刀を首目掛けて横一閃。
リクは頭を下げ躱すが背中に傷が入る。
「ぐっ!? ……違う箇所か」
前に逃れこちらに振り向き、俺の動きを見て感づいたリク。
「そう、これが俺のオリジナル技、瞬影だ」
「初撃を避けても他の箇所に攻撃が来るって、反則だろ!?」
「そういう技で、出来てるって事は問題無いって事だな」
そう言いながら刀で攻撃を続け、数秒でリクの身体は傷だらけになり、血を流し過ぎでとうとう片膝を突いた。
「じゃあ、そろそろ終わりにしようか」
「……絶対、今度は勝つからな」
笑みを浮かべ言うリクに対し俺は、チャットを思念操作で送る。
『ゾディラスの幹部とトップは全員俺が潰すから、裏で成り上がるならその時にでもすると良い』
するとリクはチャットに気付いたようで、読み終わると意味が分からないといった感じで俺を見るが、俺はニヤっと笑い瞬殺でリクの首を斬り落とした。
俺は別に裏組織に加担するプレイヤーが悪いとは思わない。
それぞれ現実じゃ出来ない事をやるためにこのゲームをやってるだろうし、成り上がるのもその内の一つだ。
敵対するなら戦えば良い、関係無い所でやるなら勝手にやれば良い、ただそれだけだな。
光の粒子になって消えるリクを横目に俺は、剣王に話しかける。
「さて……お前もやるんだろ? リクが負けた時はお前が始末するために付いて来た……違うか?」
すると剣王は軽く鼻で笑い答える。
「フッ、やはりあの者では無理だったか、試験のつもりだったが仕方ない……私が処理しよう」
「処理ね……オギスも言ってたな、使えない駒を処理していたって」
そう言うと剣王は一瞬身体を固めるが、すぐ元に戻る。
「お前は私に勝てはしない、それだけは言っておこう」
「あんた『覚醒者』なんだろ?」
今度はピクっと動きを止め、怪訝な表情をしながら言う。
「誰に聞いた?」
「オギス」
「あの馬鹿が」
「覚醒者ってどんな力を使えるのか見せてくれよ……丁度知りたかったんだよな」
剣王は外套を外し、腰の剣を抜く。
「そんなに見たいなら見せてやろう、覚醒者の力をな」
そう告げると剣王は何かを発動させ、剣に光を纏う。
「これが『覚醒者』としての、私の力だ……死ね」
すると剣王の姿が消え、背後から殺気が迫って来たので、振り下ろされた剣を刀で受け流し、左足で奴の腹を蹴って吹っ飛ばす。
俺は刀や身体を見て、特に何も異変が無い事を確認すると確信した。
こいつ、覚醒者ではなく『半覚醒』だと……。
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