第28話 完全なる終戦。
謁見の間での出来事があった後俺は、エミュリシア本人と変わり、リュバッセンやコロン達に任せて城を出た。
後の事は彼らに任せる。
テアード王国がどうなるのかはエミュリシアが決める事だ。
城を出た後俺は、帝国の北に居る魔物のパルにシズキで会いに行き、帝国を攻め込むという話は無くなった事を謝り、お礼にドラゴン肉を1体分渡して集めた魔物に食わせてやるように言い、何かあればまたお願いするかもと言うとパルは。
『こちらの願いを聞いてもらったからな。いつでも手を貸そう』
と言ってくれた。
良い奴だね。
その後は、ヒヨの護衛まで訓練と商品の生産、そして俺がチュートリアルを受け持ったエルフの女の子『ノア』に、別大陸まで行ってSランク武器を渡したぞ。
アリバに変装して渡しに行ったのでノアは、俺の事にはまったく気付かず、受け取って少し話をするとすぐ別れた。
話しの中で、その内ゼルメアにも来ると言ってたのでまた会えるだろう。
その時忍び頭になってたら、クランに誘うのも有かも?
それからイチに生産スキルを教えたり、メルナの訓練を見たりしながら過ごし、翌週(ゲーム内時間)。
ヒヨが帝国へ向かう馬車の影に潜み、魔力制御の訓練をしていると……。
『ハンゾウさん、前方に賊が居るからお願いね~』
馬車の中からヒヨがそんな事を言う。
空間感知と魔力感知をすると約160メートル程先に、10人以上の魔力と人が隠れているのを感知。
流石賢者、結構先に居る者を発見するとはね。
『承知』
俺は影の中からそう答えるとすぐ影渡りで向かい、影分身を使い一気に全員を始末する。
すると暫くして馬車が到着し、街道の中央に俺が立っている後ろで止まると、ヒヨが降りて来て。
「もう終わったの? 流石ハンゾウさんだね。じゃあ片づけは私がやってあげる」
そう言い右手を前に出すと魔法陣を展開し、少し間が空いた後、賊の死体が全て火柱を上げ消滅した。
便利な魔法だな。
遁術で出来ないか今度試してみよう。
「じゃあ、出発するよ」
「了解」
俺はまた馬車の影に潜り、帝都へ向けて出発。
ちなみに御者はヒヨが作ったキャラの従者で、金髪の綺麗なエルフでメイド服を着ている。
本来女王が遠出するなら護衛が大量にいるもんだが、ヒヨはプレイヤーでそんな大所帯は面倒臭いという理由で3人になった。
そして馬車で態々向かうのは、ゼルメア王国の女王が条約を結ぶために帝都へ向かっている事を周囲に宣伝するためである。
なのでちゃんと馬車には、ゼルメアの国旗が掲げられているのだ。
それから約3週間後(ゲーム内時間)の昼前に、帝都に到着した俺達。
前回ゼロと来た時より時間が掛かったのは、ヒヨがログアウトしている時間が少し長かった事もあるが、一番の理由は賊の多さである。
ゼロの時はまったく居なかった賊が、今回は計6回襲撃があった。
しかも毎回10人以上で、始末するのは速く終わるが後処理に時間が掛かり、これだけ掛かってしまったのだ。
一応毎回誰かの指示で動いているのか確かめたが、全員帝国内が不安定になり、賊に落ちた者達で純粋な賊だと分かっている。
途中からヒヨを来させないように仕向けているのかと勘繰ったが、そうではないようだな。
帝都に到着し門で従者が、ゼルメア王国の女王だと伝えると話しは通っていたのかすんなり入り、そのまま城へ案内されると謁見の間ではなく、隣にある豪華な部屋での話し合いとなった。
ソファにアインリクとリオールが座り、その対面にヒヨが一人ちょこんと座り、従者はヒヨの背後に立ったままで、俺はヒヨの影に潜んでいる。
「……で、よろしいですかな?」
「ん~……はい、問題ありません。お互いの不可侵と商売のやり取りの国交を結ぶ。戦争の賠償金は数回に分けての支払いという事で問題ありません」
「ふぅ~、ではここにサインを頂けますかな?」
「はい……これで良いですか?」
「……ふむ、問題ありませんぞ」
「はぁ~、終わったぁ~」
「ははは、ヒヨコ姫陛下はこういう事は苦手のようですな」
「まあ、慣れないですね」
と、条約を結び一息吐いたところで、リオールが口を開く。
「あの……」
「はい?」
「来週、僕が皇帝になるための祭りがあるので、ご都合がよければ是非参加してほしいのですが」
「お祭り? 楽しそうですねぇ。ですが国を長く空ける訳にはいかないので今回はお断りさせて頂きます」
笑顔で答えるヒヨに対し、リオールは少し顔を赤くさせながら残念そうな顔をする。
幼女に惚れたか?
「コホン、ヒヨコ姫殿」
「あっ、ヒヨで良いですよ」
「ではヒヨ殿、無事条約を結べたお祝いに、今晩は豪華な食事のパーティーを用意してあるので、是非参加を」
「ありがとうございます。では夜にまた来ますね」
「いやいや、部屋を用意させてあるので、是非寛いで頂ければよいかと」
「そうですか? じゃあ、お世話になります」
その後、雑談をしているとヒヨが。
「そう言えば、皇帝を暗殺した犯人はまだ見つかっていないんですか?」
「あぁ、ゼロ殿から聞きましたか……お恥ずかしい限りじゃが、まったくこれといった手がかりが無くてのう。中には内部の者の仕業ではと考える者をおるが、何も分かっておらんのじゃ」
「なるほど……速く犯人が捕まる事を願ってます」
「ありがとう」
こんな感じで雑談をした後、用意された部屋に案内され、従者とヒヨだけになるとベッドにダイブするヒヨ。
なんともはしたない女王だ。
俺が影から。
『そのような振る舞いをして良いのか?』
「あっ、ハンゾウさんが居たんだった。皆にはナイショね?」
『承知』
「さて、夜の料理が楽しみだねぇ~」
「ヒヨ様、あまりはしゃいではダメですよ?」
「分かってるよ!」
と、部屋で寛ぎ、夜になると広い部屋に大きなテーブルがり、アインリクとリオール以外にも、第一皇女のニミアも一緒に食事を楽しんだ。
パーティでは当たり障りのない話をし、ヒヨはどうやら食事を楽しめたのか、その日の夜はぐっすり眠っていた。
一応護衛なんで夜も見張ってますよ。
睡眠耐性があるので余裕です。
それに、ちゃんと影の中で飯を食ったので大丈夫だ。
翌日の朝俺達は、朝食を頂いた後、あっ、ヒヨと従者だけね。
アインリクとリオールに挨拶を済ませ、騎士やメイド達にも見送られながら城を後にした。
城を出た所でヒヨが馬車の中から。
『あっ、ハンゾウさん、うちのイベントに誘う書状を、後で届けてくれるかな?』
イベント?
あぁ、大会か。
『承知した』
これで、帝国との戦争は完全に終了したかな?
次はプレイヤー専用の大会か、楽しみだ!
ハンゾウでは出られないけど、キジ丸で優勝してやるぞ!!
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