第27話 あの2人。

騎士達も参加し、全員で城の中に入ると王は寝室に居るとの事なので、騎士に呼んで来てもらう事に。


謁見の間へ来るように伝え、俺達は謁見の間へ。

ブリュスタルの味方は1人も居ないのか?

謁見の間に到着すると俺が玉座に座り、右にリュバッセン左にコロンが立ち暫く待つ。


暫くして扉が開くと騎士が先に入り、後からブリュスタルが入って来た。


「なんだこれは? お前達、何をしている?」


玉座の間へ続く道を挟むように並ぶ皆を見て、怪訝な表情をするブリュスタル。

歩を進めながら見回すと玉座に座る俺を視界に捕らえると動きが止まり、目を見開き固まる。


そこでリュバッセンが一歩前に出て口を開く。


「待っていたぞブリュスタル」

「……待っていた?」

「たった今からこちらの、由緒正しき王族の血を引くエミュリシア様が、テアード王国女王陛下となられた」

「は? 何を言っている? それより小娘、さっさとその椅子から降りろ!!」


ブリュスタルが目を鋭くし、怒りの形相を浮かべそう言いながら皆の間を通って近づいて来ると……。


「止まれ!!」

「それ以上近付けば首を斬り落とすぞ!!」


騎士の2人が前に立ちはだかり、剣を抜いてブリュスタルに切先を向ける。

完全にこちらの味方になってるね。



「お前達は……馬鹿者が!! 王の私に向かって剣を向けるとは、無礼者め!! おい、こいつらを殺せ!!」


そう言い周りを見回すが、誰一人動く者は居ない。

こいつは状況が分かっていないのかな?

そこで俺が告げる。


「初めまして、私はエミュリシアと申します。あなたの圧政に苦しむ国民を救うため、こうして玉座を取り戻しに来ました……その方を捕らえて下さい」

「はっ!」

「はい!」


すると他の騎士がブリュスタルの両サイドに立ち、腕を掴んでその場に力づくで跪かせる。


「何をする!? この無礼者!! 私が王だぞ!? なぜ誰も言う事を聞かないのだ!? くっ……」


肩と腕を押さえ付けられ動けないブリュスタル。

まだ状況が飲み込めていないようだ。


「あなたは既に王ではありませんよ?」

「何を言っている、ルゥ様が記憶を……」


そこで何か気付いたのか、言葉が止まり暫く黙った後。


「……騙された?」


漸く気付いたか。

結構馬鹿なんだな


「そんな馬鹿な……あの方が……」


あの方?

もう一人の悪魔の事かな?

信じ切ってる様子だが、相手は悪魔だぞ?

……こいつも操られてた?

まあ、それはどうでも良いか。


「その者を地下の牢へ」

「はっ! ほら立て!!」


騎士に引きずられ謁見の間を出て行くブリュスタル。

これで一件落着かな?

危険があると思って俺が変装したけど、特に何もなかったね。



「これで漸くエミュリシア様が、陛下となられたのか」


リュバッセンが俺を見て言うので頷き。


「じゃあ、後は……」

『何者だ!?』

『や、止めろ!!』


言葉の途中で外から騎士とブリュスタルの声がした瞬間、城全体が揺れる程の爆発音が鳴り響き、謁見の間の扉と壁が一部吹っ飛ばされてしまう。


謁見の間に並んでいた者達は扉から離れ、俺を守るように少し高くなっている玉座の前を塞ぐ皆。

煙がモクモクと立ち込める中、2人の男が現れる。


「おいおい、せっかくの計画が台無しだろうが」

「ったく、あの爺さん、役に立たなかったな」


それは、知っている顔だった。

ディアボロスとベルゼ。

以前戦って殺したプレイヤーだ。

しつこい奴らだなぁ。

デスペナ受けてるはずなのにさ。



「何者だお前達」


リュバッセンが問うが。


「新しい女王? ふざけんなよ?」

「この国は俺達が使う予定だ。さっさと出て行ってもらおうか?」

「ブリュスタルの仲間か?」


リュバッセンが2人と話している間に俺は、隣に居るコロンにこっそり伝える。


「コロン、エミュリシア本人の所へ向かえ」

「えっ? 良いの? あいつらヤバそうだけど」

「問題無い、エミュリシアは今、地下の元騎士団長の所に居る。安心させてやれ」

「なんでそんな所に……分かった」


エミュリシアには俺の分身を付け護衛をしているが、元騎士団長と話がしたいと向かった。

先程の爆発音を聞いて不安がっているので、コロンを向かわせたのだ。



「もう面倒臭いからここに居る全員殺してしまうか?」

「そうだな」

「人の話を聞け!!」


そこで俺が話す。


「イーターの本拠地であるバルデン連邦は、既に滅んでるはずですが、まだイーターに所属しているのですか?」


すると2人は初めてこちらの言葉に反応を見せ、立ち止まると俺を見る。


「なんでお前が知ってる?」

「別大陸の事だぞ?」

「フフフ……精霊魔王に滅ぼされた事も知ってますよ? イーターの誰かがやったという事も」

「何者だお前?」

「お前もイーターか?」

「不思議な組織ですねイーターというのは……同じ組織でも人によって目的が違うとは」

「そういう集まりだからな、それよりお前は何で知ってるか答えろ」

「じゃねぇと城を破壊するぞ?」


デスペナを受けてから鍛えたんだろうけど、以前より強くなってるのかねぇ?

まあ、こいつらに興味は既に無いし、さっさと始末するか。



俺は玉座から降りると数段ある階段を降り、皆の間を通って前に出ると笑顔で告げる。


「あなた達の事は良く知ってますよ?」

「俺達ってそんな有名だったか?」

「まあ、いろいろ動画も上がってるけど」


まんざらでもない2人。

馬鹿だ。


「一度殺されて力を半分失っているはずなのに、こうしてまた出て来るとはすごいですね」


俺が笑顔で首を傾げそう告げると2人は、キョトンとした後。


「なんで……」

「俺達が……」


そこまで言った2人の首が床に落ち、光の粒子となって消える。

魔糸で斬りました。



「なっ!?」

「うわぁ、一瞬……」

「何したか見えなかったんだけど?」

「スゲー……」

「ってか、エミュリシア様がやったのか?」

「いや、リュバッセンさんだろ?」

「でも本人も驚いてるぞ?」

「じゃあ、エミュリシア様?」


途中で参加した国民がザワザワと騒ぐ中、リュバッセンが俺の横に来て。


「あまりエミュリシア様の姿でそのような事は、しないでくれるか?」

「あら、私は何もしてませんよ? 流石近衛だったリュバッセンさんですね。何をしたのか見えませんでした」

「……何もしてないからな」


と、呟くように答えるリュバッセン。

細かい事は気にするな!

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