第25話 弐道十式。
俺が地下を出た後イチは、忍換装して忍者になると中央にある印が書かれた場所へ近づき。
「試練を受けに来ました」
するとその瞬間、印が光を発し空間から突然中心に黒い靄が集まりだすと人の形を作っていく。
俺の時と同じだな。
次第にその人型は色を付け、完全な人の姿を現すと、イチと同じ型の白い忍び装束の忍者になる。
「これが私の影……」
イチがそう呟いた瞬間、黒い針が数本イチに向かって発射されるがイチは、咄嗟に屈み避けると縮地で奴の背後へ移動し、直刀を振り下ろす。
だが影の籠手によって受け流され、脇腹に蹴りを入れられ吹っ飛ぶイチ。
壁に足を着いた瞬間、影がイチの目の前に姿を現し、直刀を横一閃。
イチは咄嗟に壁を蹴って上に跳び、影の頭を左手で掴み、そのまま膝蹴りを入れ肩を足場にして跳んで距離を空ける。
膝蹴りを入れられ肩を踏み台にされた影は、身体が後ろに反り返るとそのまま回転して地面に着地。
イチも着地すると落ち着くように一息吐き、振り返る影の背後へ縮地で移動し、直刀を横一閃。
しかし影は、頭を下げ避けると同時に回転し直刀を振り抜く。
イチは左から迫る刃を左手の籠手で受け止め、腹を目掛けて蹴りを放つが影は身体を回転させ避けるとイチの横っ腹に裏拳を打ち込み、動きが止まったところで直刀を切り上げる。
咄嗟に身体を横にずらしたイチは、右腕を斬り落とされてしまうが、斬り上げた状態の影の腹に蹴りを入れ、吹っ飛ばす。
うむ、腕を斬られたぐらいで止まらないのは、訓練のお陰だな。
「ふぅ~流石格上の自分ですね」
ん?
何かするつもりだな。
イチがそう呟くと全身に赤い光を纏いだし、左手だけで印を結ぶと告げる。
「終わりです」
次の瞬間、影の四肢が弾け飛び、最後に首が弾け飛ぶと霧のように四散し消滅した。
今のは……遁術じゃなくてユニークスキルか。
どんな能力だ?
俺は影から出て話しかける。
「よっ、おめでとう」
「師匠!? 見てたんですか!?」
イチはそう言いながら忍換装を解き普段のイチに戻り、斬られた右腕の止血をしていた。
「当然だろう? 弟子が試練を受けるんだからな……腕は後で治してやる。それより、最後のはユニークスキルか?」
「はい『弐道十式(にどうじっしき)』と言いまして、先程のはその内の1つです」
ほう、弐道十式って事は、2つの何かと10の何かがあるって事か。
俺より多いな。
イチの話によると先ほどのユニークスキルは、受けたダメージを数倍にして返すユニークスキルらしい。
「なるほど、格上相手には丁度良いな」
「はい、腕を斬られたのは想定外ですが」
「まあ、格上相手に腕一本で済んだのは上出来だ」
俺は腕と足をやられたからなぁ。
俺より優秀じゃね?
「ありがとうございます!」
「今後は生産スキルを鍛えるようにな」
「生産ですか?」
「ああ、生産忍者になって商品を作れるようにならないとね」
「分かりました」
「じゃあ上に戻れ、そこで腕を治してやる」
「はい」
そう言って俺は分身を解除した。
俺はサスケさんに、イチが試練を達成した事を告げ、傷を治したら帰ると言い、少ししてイチが戻って来たので、エーテルを使い回復属性の遁術で腕を治してやる。
「じゃあ、サスケさん、何かあれば連絡してください。カナエさん、お茶ご馳走様でした」
「いえいえ、いつでも来てね。イチちゃんも」
「はい、ありがとうございます」
「ああ、警戒は忘れないようにな」
「了解です」
サスケさんの言葉に答えると俺とイチは影に潜り、俺の影渡りで自分の家に戻る。
家に戻った俺はテアード王国へ行く事をイチに告げ、イチはいつもどおり店の準備を始めようとしたところで、商品の補充は済んでいるのか聞かれ。
「あっ、忘れてた。すぐ補充する」
俺は店に出て作り溜めしてある商品をインベントリから取り出し、棚に補充を済ませると、引き戻したメンバーを集め、一緒にテアード王国へ転移した。
テアード王国に来た俺は、アリバに変装するとレジスタンスのアジトである地下へ向かい、以前と同じように入るとリュバッセンの部屋に行き、今後の動きの説明を始める。
その間、メンバーには街で噂を流してもらうのだ。
で、街の中で噂を広めた後、明日の日の出と共に城へ向かい、王であるブリュスタルを捕まえ、エミュリシアが新たな女王陛下となる事を国民に告げるという流れだ。
「そこでリュバッセンさんには、ハンゾウさんが変装したエミュリシアと一緒に城へ向かい、城に居る騎士や兵を抑えてほしいっす」
「私が? エミュリシア様の方が良いと思うが?」
「いや、ハンゾウさんが変装してるんでそれは無理っす。向かって来る騎士や兵士はハンゾウさんなら全員始末するっすけど、いいんすか?」
そう言うとリュバッセンは微妙な表情をし、少し考えてから確かにそれはマズいと言い、了承してくれた。
兵士や騎士の中には、仕方なく従っている者が多い。
そんな連中を殺させて良いのかという訳だな。
実際は、向かって来る連中を始末する気満々の俺だけど、エミュリシアが女王になった後、兵や騎士が居ないと問題だからね。
なので、元近衛のリュバッセンに抑えてもらい、後に纏めやすくするためである。
もしそれでも向かって来る者は、容赦なく斬り捨ててもらうように注意しておく。
「そういう奴は完全に現王の手の者っすから、さっさと始末した方が今後のためっすね」
「ふむ、分かった。城へは私とハンゾウ殿だけが?」
「いや、戦える者は全員行くっす」
地下には若いが十分戦える者も居る。
おそらくリュバッセンが鍛えたのだろうけど、たぶん住民も何人かは参加するだろうと思う。
「多い方が印象が強いっすからね」
当然、メンバーも変装させて参加させるぞ。
これで仕込みは十分かな?
相手はブリュスタルだけだし、もう1体の悪魔はどこに居るのか分からないしね。
まさか城に居ないよな?
一応後で下見しとくか。
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