第17話 回復魔法とポーション。

土埃と煙が舞う森の中。

俺は縮地でゴリアントの横へ行くと、魔力を纏った刀を奴の首へ振り下ろす。


しかし、奴の腕によって受け止められた。

俺はすぐさま後ろに跳んで距離を空ける。


思ったとおり黒い部分は硬いな。

サヤも短剣で斬りつけるが殆ど傷が付かない。


ゴリアントは2本の腕を地面に突いて身体を起こし、顔をこちらに向けると虫のような口を開け、液体の塊を飛ばしてきたので、身体を逸らし避けると地面に落ちた液体は、ジュ~と煙を上げる。


刀に当たると溶けるな。


俺は納刀するとインベントリから、閻魔鉱の刀を取り出す。

閻魔鉱は酸に強いらしいので、こちらで斬る方がまだましだろう。



ゴリアントは近づいてきた螺旋に液体を吐き出すが、螺旋は横に跳んで躱すと地面を蹴り懐に入ると、腹にラッシュを打ち込む。


ズドドドドッと重い音が響くが、ゴリアントは構わず2本の手を組み、ハンマーのように振り下ろす。


螺旋に迫るが、当たる前にミルクがその腕を蹴り横へずらした。



地面に振り下ろされた衝撃で地面は陥没し、土や石が周囲へ石礫のように飛び散り、俺達を攻撃するが、大したダメージは無い。

真横に居た螺旋は衝撃波で飛ばされると、体勢を整え着地。


『キシキシキシ』

奴は鳴くと前屈みになり、グッと力を入れた瞬間、奴の背中や腕から棘が生えてきた。


嫌な予感がする。



次の瞬間、奴の姿が消えたと思うと、近くに居たサヤに体当たりし吹き飛ばしていた。


飛ばされたサヤは大木に叩きつけられる。

「ホゴッ!?」

やっぱり変な声を出すなあいつ。


「いったぁ~いけど、訓練の方が痛かったね」

そう言って立ち上がる。


数ヵ所棘が刺さったみたいだが、大丈夫のようだな。

訓練が役だったじゃん。



続けて姿を消すように素早い動きでミルクに体当たりし吹き飛ばした。

「ミルク!?」

タピオカが叫ぶ。

飛ばされたミルクは木々の隙間を飛んでいき、姿が見えなくなる。


奴は続けて螺旋に体当たりし吹き飛ばす。

螺旋は腕をクロスし防ぐが、衝撃で吹き飛ばされ木にぶつかった。


「この衝撃、あいつ大丈夫か?」

螺旋は妹の事を心配する余裕があるようだな。



俺は10メートル程離れた場所で刀を引き、突きの構えを取る。

そう、これはキテツがやっていた理源流・転理の構えだ。


魔力を纏い、風属性にして威力を上げる。


奴がまた前屈みになった瞬間、縮地で間合いに入り手首を捻り突きを放ち、そのまま回転して横一閃。

突きで奴の右腕1本を吹き飛ばし、横一閃で奴の右足を切断した。


「ナイスキジ丸!」

すると螺旋がゴリアントに突撃し、引き絞った右拳を叩きこむとその瞬間、ゴリアントの胴体は上下に弾けるよう、千切れて絶命する。



今螺旋の拳はいつもの淡い光ではなく、濃い光を放っていたのが見えた。

もしかして……。


「今のはもしかして【魔纏】か?」

「おっ、キジ丸も知ってるんだな。これは……」

螺旋が言うには、格闘家のクラスが上級になった時に取得したらしい。


最初からなぜ使わなかったのか聞くと、制御が難しく魔力消費が激しいとの事。

俺は頭の中に?が浮かんでいた。


【魔纏】は俺も使えるし訓練もしているが、制御はそんなに難しくないし、魔力消費もそんなになかったはずだけどな。

魔力制御のレベルが関係してるのか?

……まあ、いいか。


ちなみに、最初に螺旋が使ったのはアーツの【気功】ではなく【剛気】というアーツらしい。

【剛気】は攻撃力を上げる他に、肉体を硬くする効果もあるとの事。

単純に気功の上位互換だな。



その後、ゴリアントの死体は、俺が収納する事になった。

インベントリは無限だからと言うと螺旋が、じゃあ頼むと言うので収納する。


「お疲れ~、強かったねぇ」

サヤが近づいてきて疲れたように言う。

「お疲れ、大丈夫か?」

「余裕、訓練の方が痛かったし」

そう言ってジト目を向けてくる。


「役立ったな!」

俺は腰に手を当て頷く。

良かった良かった。

「なんだ、サヤはキジ丸に訓練してもらってるのか?」

「そう! これが滅茶苦茶酷い訓練でさぁ~……」


サヤが螺旋に訓練がどれ程酷かったのかを説明する中、俺は飛ばされたミルクは大丈夫かと目を向けると、丁度ライゼルの上に座ってこちらに来るミルクが目に入った。

タピオカは横を歩いている。


「大丈夫だったか? 大分飛ばされてたみたいだけど?」

「大丈夫! ちょっと足を怪我しちゃったけど、他は大丈夫だよ」

「一応ポーションで回復させたから、後は街に戻って治療院に行かないとね」

「ポーションだけで大丈夫だって言ってるのに~」

「ダメ! 傷が残るだろ?」

螺旋よりタピオカの方がお兄ちゃんって感じだな。



……ん?

「なあ、ポーションで傷は消えないのか?」

そう聞くとタピオカや他の面々もキョトンとする。


「ん? どうした?」

俺が首を傾げるとタピオカが口を開いた。

「えーっと、キジ丸さん?」

「なに?」

「初級、中級ポーションで深い傷を治すと傷跡が残るの、知らないんですか?」

俺はあまりのショックに固まってしまった。



今まで傷は消えてたよな?と思い返すが……全て浅い傷で、深い傷はチュートリアルで死にまくっていた時だけだった。

だから螺旋の目の傷が残ってたのか。


詳しく聞くと、初級、中級は浅い傷のみで、深い傷の場合は上級以上のポーションじゃないと傷跡が残るらしい。


しかも、傷跡の状態が数日続くと、死んでも傷跡が通常状態として残り、復活しても傷は消えないという。


「じゃあ、傷跡を残さないようにするには?」

「上級以上のポーションか、回復魔法でしか消せませんね」

「マジか……知らなかった」

目から鱗とはこの事だな。



ちなみに、回復魔法は魔法使い系の職業に就いてないと使えない。

回復魔法は傷もHPも回復するが、他の職業だと浅い傷を治せる程度で、HP自体は回復しないのだ。

傷は治っても逆にHPが減る事もある。


これはたぶん、回復魔法は魔力を使って傷とHPを回復するが、他は自己治癒力を高めて治す感じだと思う。

なので傷を治す代わりにHPが減るんだろうな。


というわけで、基本はポーションを使う。

まあ、ポーションが無い時の最後の手段って感じだな。



「いやぁ、良い情報をありがとうな」

「いえいえ、じゃあそろそろ街に戻りましょうか」

「そうね」

「そうだな、良い戦いが出来たし」

「じゃあさ、帰ったらクエスト達成のお祝いしようよ!」

まあ、偶にはいいか。


「飲みまくろうっと」

「おっ、キジ丸も飲むのか、タピオカとミルクが飲まないからいつもつまらなかったが、今日は一緒に飲みまくろうぜ!」

「いいねぇ~、じゃあ……」

『俺達の勝だ!!』


言葉を遮られたのでそちらに目を向けると、侍達が傷だらけになりながらも立っていた。



こいつらは今更何を言ってんだ?

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