第11話 ゼロの力。
ゼロにタイマンを申し込んだ赤味噌、その申し出にゼロは。
「全員で来ても良いぜ?」
「……一騎打ちだ」
「……まあ良いけど、さっさと終わらせて先に進みたいんだけどな」
「いくぜ!」
赤味噌はマントを靡かせながら物凄い速さでゼロへ迫る。
全身鎧のくせに動きは速いな。
ゼロは振り下ろされる剣を受け流し、赤味噌の体勢を崩すと喉を目掛けて突きを放つが、上体を屈めヘルムで突きを弾いた。
赤味噌は顔をヘルムで覆っているので、隙間が少ないのだ。
ゼロの突きを弾くと前屈みの状態から剣を斬り上げるが、ゼロは剣で防ぐと赤味噌の腹に蹴りを入れ、地面を滑る形で後方へ吹っ飛ばす。
全身鎧を着た赤味噌を蹴りで10メートル程後退させたゼロ。
かなりの脚力だ。
しかし赤味噌は、鎧によって蹴りのダメージは受けていない様子。
頑丈な鎧だね。
地面を滑って後退し止まった赤味噌は、前屈みのままゼロを見て。
「こんな蹴りは初めて受けたぜ。相当鍛えてるな」
「まあな。だが……ハンゾウの方はもっと強いぞ?」
「そうか、よ!!」
次の瞬間、赤味噌の姿が消えるようにその場から土煙を少し上げ消えると、ゼロの背後に姿を現し剣を振り下ろす。
速い。
先程までとまったく速さが違う。
ゼロは身体を逸らしギリギリ避けると振り返りながら踏み込み、奴の胴に剣を振り抜くが、鎧によって防がれてしまう。
「ははっ! 俺の鎧は斬れねぇよ!!」
だが次の瞬間、周囲に雷鳴が鳴り響く。
「がっ!?」
「斬るためじゃねぇよ」
ゼロは剣に魔力を流し、奴に触れた状態で雷撃を発動させたようだ。
しかし……。
「へっ、効かねぇな!!」
一瞬動きを止めた赤味噌が、ゼロの首目掛けて剣を振り抜く。
段々と動きが速くなっているな。
ゼロの攻撃も殆ど効かなくなってきている。
これが一騎打ちを申し込んだ理由か?
「だろうな」
ゼロは迫る奴の剣を屈んで避けながら全身と剣に金色の光を纏い、奴が剣を振り抜いてがら空きの胸に向かって剣を突き出すと、剣は豆腐を刺すようにスッと入っていき、赤味噌の心臓を貫く。
赤味噌は動きを止め、血を吐き出しヘルムからボタボタと滴る大量の血。
「な、んで?」
「お前のユニークスキルは、一騎打ちで戦闘を続ければ、攻撃力、スピード、防御力が上がるってところか?」
「ガハッ! なぜ……」
「分かったか? 戦闘中にお前の動きが速くなり、攻撃も速く重くなっていた。俺の蹴りや雷撃を受けても効いていなかったからな」
「へっ……防御無視の……」
そこで赤味噌は光の粒子になり消えた。
俺は分身で影の中から。
『今のは防御無効の攻撃か?』
「ハンゾウ? 見てたのか?」
『ああ、一応護衛だからな』
「はは……まあ、俺のユニークスキルの1つなんだけどな」
ゼロの話によると今のユニークスキルは、1日(ゲーム内時間)1回しか使えないらしいが、どんな防御も無視して相手にダメージを与えるらしい。
なんとまぁ、恐ろしいユニークスキルですな。
「そっちはどうだ?」
『今も戦闘中だが、問題無い。後方は大混乱だ』
「そりゃ良い、じゃあ前からもやるか」
『ではこちらも、そろそろ殲滅に入る』
「ああ、挟撃して混乱させる作戦だったのに、あいつが一騎打ちを申し込んでくるとは思わなかったな」
『奴の能力に関係しているのだろう』
「だな……よし、全員斬るか」
『承知した』
ゼロはそう言うと赤味噌との戦いを黙って見ていた騎士達へ向かって歩き始め、それを見ている騎士達は剣を抜き盾を構え、陣形を取る。
「団長の仇だ!! お前ら、全力で行くぞ!!」
『了解!!』
ほう、以前は部長と呼ばせてたらしいが、今は団長なんだ。
ゼロは防御態勢を取る騎士達に向かってゆっくり歩いて行くと手前で姿を消し、次の瞬間には陣形を取っていた騎士達が吹っ飛ぶ。
陣形が崩れた中心に、剣で自分の肩をポンポンと叩きながら。
「さて、楽しませてくれよ?」
と言い、ニヤっと笑うゼロ。
悪役っぽいな。
その頃本体の俺は、今まで習った技や技術を使いながら騎士達を始末していたが、ゼロの戦いを感覚共有で視ていて俺も防御無視の攻撃が出来ないかと考える。
浸透勁、溜気、流気でも出来るが、基本素手攻撃の時に使うものだ。
刀や直刀での防御無視、それが出来ればこういう硬い奴らも簡単に斬れるようになるだろう。
しかし、ゼロのはユニークスキルだしなぁ。
流石にユニークスキルでしてる事を、ユニークスキル無しでやるのは無理か?
硬い鎧を無視して斬る……鉄を斬れればいけるだろうけど。
これは武器の性能が良くないと無理かな?
……いや、ランクの低い武器でドラゴンをいつかは斬れると思って鍛えてるんだ。
鎧くらい簡単に斬れるようにならないとな。
斬気をもっと鍛えればいけるか?
ん~、それだと相手の防御を上回った時だけしか無理っぽい。
何か無いか……。
そんな事を考えながら騎士達の相手をしていると騎士に、振り抜いた直刀を盾で防がれてしまう。
重い金属音が鳴り響く中、騎士は盾で直刀を弾き、剣を突き刺してくる。
俺は流れるような動きで避けながら懐に踏み込むと同時に、奴の胸に左拳を打ち込み、全身の力を送った。
それだけで騎士は血を吐き出し絶命。
殴って防御無視は出来るんだけどなぁ……ん?
今の攻撃を刀や直刀でも出来ないかな?
ゲンスイがやっていた全身の力を相手に流す。
そう言えばゲンスイと戦った時、刀を通してやってたな。
あれを刃に乗せれば……いや、それだけじゃ無理か。
もっと根本的に……。
この間も騎士達と戦いながら考えるが、良いアイデアが浮かばない。
だが……。
全身の力を流す……全ての力を相手に……全ての力?
……なるほど。
試す価値はある。
俺は思いついた事を試すため、不動金剛術を発動させ、周囲に居る騎士達の動きを止めると、明鏡止水で深く集中していく。
全ての力。
神気やエーテルではなく。
別の力。
流派を習得し覚えた技、それらを全て合わせる。
神気やエーテルを使えば鎧を斬るのは簡単だ。
だがそれだと意味が無い。
ランクの低い武器でドラゴンを斬る。
力ではなく技で斬れるようにならないとね。
騎士達よ、俺が強くなるための訓練にまだまだ付き合ってもらうぞ。
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