第9話 あの騎士団。
テアード王国と帝国の侵攻を返り討ちにした翌日、俺はハンゾウとしてゼロが馬車で帝都へ向かうのを護衛していた。
まあ、馬車の影に潜んでいるが何もする事が無いので、魔力制御の訓練をしているけどね。
ゼロに護衛とか要らないと思うんだけど、ヒヨが言うにはゼロは、絡め手が苦手らしく、正面から来る敵には強いが、裏をかいて来る敵は苦手との事。
そう言われて俺は納得。
剣聖でも見えない敵は相手に出来ないからな。
なので、忍者のハンゾウに護衛として付いてほしいと頼まれたのだ。
ゼルメアを出発して翌日の朝、もうすぐ帝国領のリミアム王国に入るところで、そろそろ関所に到着するという頃。
馬車の中からゼロが声を掛けてきた。
『ハンゾウ居るか?』
俺は馬車の中の影に移り、足元の影から顔を出す。
「どうした?」
「どこから出て来てんだよ……そろそろ関所だ。もし戦闘になったら誰も逃がさないようにしてくれ」
「承知」
そう答え影に潜る。
関所で戦闘になるか?
と思っていたら関所が見えてくると、関所の門が閉まっている状態で兵士が関所の上と門前に陣形をとっていた。
まあ、ここの関所はゼルメアから来る人間しか居ないからね。
戦争中なのでこの対応は分かるが……侵攻した兵は全滅した事を知らないのか?
馬車はそのまま進んで行き、関所から10メートル程手前まで来ると1人の兵士が。
「そこで止まれぇ! ここから先は帝国領だ! ゼルメアの者と見えるが何用だ!? 今は戦時中のため、ゼルメアの者は一切通れない事になっている!!」
すると馬車からゼロが出て告げる。
「俺はゼルメア王国の剣聖ゼロだ! ゼルメアに侵攻してきた兵は全滅させた!! 皇帝に話があるので通してもらいたい!!」
「なっ!? たった1日で5万の兵がやられただと!? そんな出鱈目な言葉を信用出来るか!!」
確かに!!
俺でも信じられないね。
でも殆どの兵士は悪魔が顕現するために吸収しちゃったからなぁ。
「なるほど……全員斬るしかないか?」
と、すぐ戦おうとするゼロに俺は、ゼロの影から。
『ここにゼロ殿が居る事が証明になるのではないか?』
「ん? ……あぁ、そう言う事かなるほど」
どうやら分かってくれたようだ。
「ゼルメアを守る剣聖がここに居る事が証明だ! もし帝国兵が残っているなら俺はここに居ない!! 全員斬るまではな」
すると兵士達に動揺が走るが、隊長は。
「……ふ、ふん! 剣聖と言うが恐れをなして逃げて来たのではないか!? 皇帝に許しを請いに来たのなら通してやるぞ!!」
「ほう……どうやら死にたいらしいな」
ゼロはその言葉でプッチンしてしまったようで、前に歩み出ながら腰の剣をゆっくり抜き。
「お前ら全員斬って証明してやろう」
そう告げた。
馬鹿な隊長だなぁ。
ほら、兵士の中にも既にビビってる奴が居るし。
逃げないように裏に回るか。
ゼロの影の中に分身を1体残し、関所の中に転移して反対側へ移るとそこには、山の間にある道に数百は居るだろうと思われる騎士がびっしり並んでいた。
流石帝国、兵の数が半端ない。
その隊列の先頭で1人、仁王立ちしている男を発見。
全身黒い鎧を着て白いマントを羽織り、黒い剣を目の前の地面に突き刺し、持ち手に両手を乗せて微動だにしない。
マントには盾と剣が2本交差し、建物のような絵のエンブレムが入っている。
そいつの影に移り看破で見ると名前は『赤味噌』で職業は『闇魔導騎士』となっていた。
称号に異界人とあるのでプレイヤーだな。
後ろに並んでいる騎士も同じエンブレムが入ったマントを纏っているので、おそらくクランだ。
俺はすぐさまゼロの影に戻り、門の反対側にクランが居る事を分身で伝える。
「プレイヤーが? その数だとちょっとしんどいか?」
『拙者が後ろから挟撃して混乱させようか?』
「……そうだな、頼む。隊長っぽい奴は俺がやる」
『承知した』
「じゃあ、派手に行こうか」
ゼロはそう言うと剣にバチバチと雷を纏い、その場で横一閃。
その瞬間、雷の斬撃が放たれ、門の前に並んでいた兵士達が切り裂かれ、黒焦げになっていく。
「それと……その門は邪魔だ!」
ゼロが素早く剣を2回振り、斬撃を飛ばすと門を切り裂き崩壊させる。
流石剣聖、10メートル以上離れているのに斬るとはね。
と、見てる場合じゃないか。
俺は裏に回り、最後尾にいる騎士達に向けて遁術を発動。
影明流忍法・轟雷雨
その瞬間、数十の騎士達に雷の雨が降り注ぎ、焦がしていく。
「なんだ!?」
「ぐあああああああ!!!」
「し、痺れるううううう!!」
「ぎゃああああああ!!!」
「襲撃だ!! 戦闘態勢!!」
「うわ……なにこれ?」
「その場から離れろ!!」
と、大騒ぎになり始める。
中には効いていない者も居るな。
耐性を持っているのかそういう特性を持っているのか分からないが、それなりに強いクランなのかも?
すると1人の騎士が。
「何者だ!! 出て来い!! 我々『ナイトクラブ』に歯向かうとは、良い度胸だ!!」
えっ……今こいつ、ナイトクラブって言った?
マジ?
そういやクライが、帝都でナイトクラブが活動してるっていつか言ってたな。
あの頃より滅茶苦茶メンバー増えてんじゃん。
トリナマに成敗されても解散してなかったのか。
今でも女を襲ってるのかな?
中には真面目に騎士をしている者も居るだろうけど、ナイトクラブに入った事が間違いだ。
前回はそんなに関わりが無かったが、今回は完全に俺の、ゼルメアの敵だからね。
全滅させてもらう。
俺は轟雷雨を落として開けた場所の地面からスッと出る。
「っ!? あれは……」
「あれってハンゾウじゃね?」
「さっきの攻撃はハンゾウかよ」
「おいヤバいぞ、ハンゾウってエデンのメンバーと戦って勝ってたじゃん……この人数で勝てるのか?」
「俺達は騎士だ。エデンとは強さも職業も違う」
「最強忍者が相手か……全力で行くぞ!!」
『了解!!』
見える範囲に居る騎士全員が剣を抜き、盾を構えると数人は全身に光を纏い始める。
良いね。
ちゃんと鍛えているようだし、訓練に使わせてもらおう。
魔力のみで勝つ!
忍者の戦いを見せてやる。
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