20章 帝国戦争
第1話 兵士の変身。
螺旋を先頭に森の中を走り、兵士達を発見すると相手もこちらを認識し、一人の兵士が口を開く。
「そこで止まれぇ!! お前達は何者だ!?」
先頭に立つ螺旋が。
「お前達はテアード王国の者だな?」
「そうだ! お前達の素性を明かせ! さもなくば直ちに排除する!!」
「排除ねぇ……俺達はゼルメアの者だ。侵略しようとするお前達を殲滅に来た」
すると兵士達が周囲を警戒し始める。
「伏兵か!? ……ん? 他に兵が居ないようだが?」
「ああ、俺達だけだ」
「は? ……っ」
隊長らしき兵士がプルプルと身体を震わせると。
「ふざけてるのかきさまらぁ!! たった4人で我々に勝てると思っているのか!!!」
ハンゾウを入れたら5人、いや、分身を増やせば数百人になるんだけどね。
「だからこうして来てるんだろうが、大人しく帰るなら見逃してやるぜ?」
螺旋は明らかに煽っているな。
案の定兵士は怒りの形相を浮かべ、右手をサッと上げると周囲の兵士達が銃を構え、手を降ろすと。
一斉射撃が始まった。
まあ、単発銃なのでアサルトライフルとかよりはましだけど。
そんな物はお構いなしと、螺旋とミルクは全身に赤い光を纏い、そのまま突っ込んで行くと銃弾を弾きながら兵士達に迫る。
「そんなもんが効くかよ!!」
「こっちはもっと硬い物で鍛えてるからね!!」
デコボコしている森の中を素早く走り抜け、まともな陣形をとっていない兵士達に突っ込むと螺旋は拳を打ち込み、ミルクは跳んで蹴りを放つ。
どちらも兵士を狙ったわけではなく地面に攻撃を当て、周囲に居る兵士達を土や石と共に吹き飛ばした。
「召喚『フェイル』!」
タピオカがそう叫ぶと目の前の地面に魔法陣が現れ、そこから全身に蔦や葉っぱ等を纏った明るい黄緑色の毛色をした、大きな狼が現れた。
「フェイル、奴らを始末して!」
『畏まりました』
狼は兵士達を睨み、頭を上げると。
『ワオーーーーーーーー……!!』
遠吠えをした瞬間、狼が全身に纏っている蔦や葉っぱが一気に成長し、周囲の森と同化し始める。
すると周囲の木がウネウネと動き出し、その形を徐々に変えていくと最終的に周囲の木が全てフェイルと同じ狼になり、兵士達を襲い始めた。
あの召喚獣は何なのか聞くと異界の森の王でフェンリルの一種らしく、森を操ったり植物を使った攻撃が得意との事。
流石召喚士、環境に合った召喚獣を召喚する。
ちなみにタピオカの今の職業は『召喚源魔師・陸(しょうかんげんまし・ろく)』という、初めて聞く職業だ。
詳しくは教えてもらえなかったが、特別な召喚獣を6体も召喚出来るらしく、召喚士の最終職業の1つとの事。
そして螺旋は『武聖(ぶせい)』で、ミルクが『魔闘聖(まとうせい)』になっているが、最終職業の1つ手前らしい。
2人とも後は???の職業になるだけだと言っていた。
あっ、タピオカの職業は???だ。
みんなそれぞれ目指すものがあるのは良いね。
俺は最強を目指してるけどな。
螺旋達の攻撃で先頭部隊は殆ど全滅し、後ろの部隊が左右に広がろうとする兵士達を忍者達が始末していく。
うむ、次は俺の番だな。
と、前に出て技を発動しようとした瞬間、周囲がふと暗くなるといきなり前方に、ベヒモスが落ちて来た。
地面を揺らし土煙を上げ、周囲の木をなぎ倒しながら現れたベヒモスは、上体を反らすと大きな咆哮で周囲に衝撃波を放つ。
螺旋達は跳んで離れるが、兵士達は吹き飛ばされ木に叩きつけられてしまう。
あいつらが出した魔物じゃないのか。
って、ここは魔の領域なんだった。
そりゃこんだけ暴れてりゃ魔物も寄って来るよねぇ。
すると隊長の兵士が叫ぶ。
「我々の力を見せてやれ!! 魔物を始末し、侵略しようとしたゼルメアを滅ぼせ!」
「テアード王国に繁栄を!!」
隊長らしき男の言葉に兵士達はそう言いながら全員ベヒモスに向けて銃を構え、発砲しようとした瞬間、兵士達の動きが止まり、一瞬苦しむ素振りを見せると、黒い靄を纏いだし、眼が赤くなっていく。
「なんだありゃ?」
隣に来た螺旋の呟きが聞こえてくるが俺は、それどころじゃなかった。
あの赤い眼、そして黒い靄……悪魔じゃん。
「変身ですかね?」
「魔物になったのかな?」
タピオカとミルクがそう言うので。
「あれは、悪魔だ」
「悪魔? 人間が悪魔に変身したってのか?」
螺旋の問に頷き俺は、カイの話をした。
「……ただこいつらは、悪魔と契約したというより、いきなり悪魔になった感じだな」
「悪魔が何かしたってのか?」
「闇落ち的な?」
「悪魔召喚は一度試した事がありますが、代価がプレイに影響が出るほどでしたので契約はしませんでしたけど、その代わりどんな願いも叶えてくれるらしいです」
悪魔召喚したんだ。
俺は悪魔に殺されると初期値に戻る事を話す。
「はっ? なんだそれ!?」
「やられたら始めた時の状態に戻るって事?」
「契約した召喚獣達も消えますか? それだと悪魔との戦闘は避けるべきですね」
ただし、悪魔を倒せば悪魔のスキルを取得出来る事も伝える。
「悪魔のスキル……俺はいらねぇや」
「ちょっと興味があるね」
「悪魔のスキルですか……欲しいですね」
「とりあえず、戦いを避けるなら引いた方が良いぞ」
「キジ丸はどうすんだ?」
「当然……斬る」
するとタピオカが、悪魔を倒すのは困難だとネットで見た情報を言うので。
「何度か倒した事はある」
「マジかよ」
「どんなスキルをもらったの?」
「どうやって倒すんですか?」
「倒す方法は……」
魔力を流して倒すのが基本だと伝え、皆が考え始めたところで、悪魔になった兵士達によってベヒモスが倒されると剣を持った兵士達が、赤い眼を光らせ俺達に迫ってきた。
俺は前に出て居合切りの構えを取り、次の瞬間には迫る兵士達の首が落ち、全身が霧のように四散して消滅する。
影明流・瞬殺。
元の位置で納刀したところで、離れた場所からドンッ! と音がした瞬間、タピオカがミルクの前で地面に倒れる。
「……えっ?」
「何が……」
ミルクと螺旋が戸惑っている間、音がした方に目を向けるとそこには、悪魔になった兵士が銃口をこちらに向けている姿があった。
兵士は続けて発砲。
しかし、先程までとは違い、赤黒い光弾が発射されているのが見え、俺は咄嗟に刀に魔力を流し斬り上げ、螺旋に迫る光弾を切り裂き消滅させる。
「タピオカ!? 大丈夫か!?」
「私を庇ったの!? 馬鹿! 銃弾なんて効かないのに!」
「……はは、咄嗟に身体が動いちゃった」
「ミルク、ただの銃弾じゃないぞ」
「えっ?」
あれは悪魔の力を使った銃弾だろう。
普通の銃弾は効かなくとも、あれはマズい。
「ハンゾウ」
俺の背後に片膝を突いた状態でハンゾウを出すと。
「タピオカの回復を頼む」
「承知」
そう言うとハンゾウの体内に神気で回復属性の印を書き、発動させる。
すると弾が当たった胸の傷が……治らない。
なんだ?
悪魔の呪い的な?
何かデバフが掛かってるのかと看破で見ると。
『状態:死の呪い』
となっていた。
2人に死の呪いを知っているか聞くが、首を横に振る。
なんだ?
死の呪いって、これのせいで回復が出来ないって事だろうけど、どうすれば消せる?
そこで聞いていたタピオカが。
「死の呪い、は……神の…呪い……」
そこまで言うとタピオカは絶命し、光の粒子になって消えてしまった。
「タピオカ……」
「……あいつら絶対許さない、タピオカの仇!!」
いや、リスポーンしてるから。
と言っても、初期値に戻ってるだろうけどね。
しかし、死の呪いが『神の呪い』って、何が言いたかったんだ?
後で聞こう。
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