概要
あれから四年がたち、大学に進んだ僕は、新たな目標も持てないまま、ただ自堕落な日々を過ごしていた。あの夏の仲間、健二が連絡してくるまでは。
「あの十一人に、また声をかけて約束を果たそうぜ」
「約束?」
「チーム『月夜ノ波音』のアンソロジーを作って、同人イベントに出そうって約束しただろ」
「なんで今さら」
「美優も呼ぶぞ」
その名前を聞いた途端、あの夏の暑さと、そしてほろ苦さを思い出していた。
新たな目標を設定して再結集した、かつての高校生作家の仲間が、過ぎてしまった時間
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!あの夏、主人公は何故彼らの元から去ったのか。再開が齎したものとは。
それは四年まえの約束を果たすという名目で明かされていく過去と、それを乗り越えようと奮闘する彼らの物語。
【物語は】
主人公の宏樹の元へある一本の電話がかかってくるところから展開されていく。その通話の相手は人生の中で一番熱い夏を共に過ごした仲間の一人。
そのような相手であるにも関わらず宏樹がすぐに応答しなかったのには理由があった。彼が思い出したくなかった苦々しい過去とは?
【この作品の題材や向けについて】
あくまでも個人的な見解となるが書き手の思想や姿勢、製本、文学フリマなどが出てくるので自分でも作品を手掛けているような層に共感を得られる作品だと思う。
タグにはないが恋愛も含まれ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!過去に向き合って、未来に向けて進む物語です。
このお話は高校時代にヨミカキという小説投稿サイト(なんかどこかでみたような気がしますね)にて知り合って、一緒に切磋琢磨した仲間同士が、再び出会って一冊の本を作りあげるまでの物語です。
その本のテーマは「青春やりなおし」。
そしてその本のテーマと重なるように、主人公がもういちど青春を取り戻すお話です。
もともとは高校生らしい瑞々しさから、少しだけ大人になって大学生になった彼らが、でもまだ「青春」を残してもういちど想いを重ねていく。
そんな物語は少しだけ苦さも含みながらも、温かい物語でした。
物語の仲では主人公はあるきっかけにより物語を書けなくなってしまい、そしてその頃の仲間と再び集ま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青春を何度でも
高1から執筆を始めた主人公・矢形宏樹は、高校生物書きたちを集めたオフ会を企画し、「月夜ノ波音」というサークルを形成する。アンソロジーを作ってイベントに出ることを目標にしたものの、宏樹自身が突然ネット小説から離れてしまう。
そこから4年経ったある日、サークル仲間の大村健二からまた集まろうと声がかかり、宏樹たちの青春が再び始まる…
青春がぎゅぎゅっと詰まった作品。ネット上での気軽なやりとりや実際に会ってみたときの気恥ずかしさがとてもリアルに描かれています。また、ネット上だからこそのすれ違いも共感できるので、読んでいて相づちを打ってしまいます。
アンソロジーの表紙やページ配分を考えたり、会場設…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一話一話に、儚くも尊い青春が込められている
高校生の頃、小説を書いていた主人公が挫折し、それから時を経て、もう一度あの頃の仲間たちと、小説を書いていくというお話です。
もう至る所に青春が散りばめられています。眩し過ぎて、時々読んでて苦しくなる時があるほど……。
そして主人公たちが小説を書くというお話なので、同じ書き手の方たちにはよりリアルに、より一層キャラクターたちに同調できることと思います。
時に共感し、時に耳が痛くなるような、書くことへの想いや苦悩や考えが溢れています。
小説を書かないって方も、なるほど……と思われることが多々あると思います。
個人的には、書いたことがないという方にこそ読んでほしい。もしかしたら書きたくなるかも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!消えかけていた「心の炎」よ再び! 「恋」と「友情」と「情熱」の感動物語
このお話は、自分を見ているような錯覚を覚えました。私も高校時代で「理系」への進学と共に「断筆」しましたから、よくわかります。
このお話は「高校時代」、とあるキッカケで「小説」を書かなくなった主人公が、心にかろうじて残っていた情熱の「炎」を再び燃やし、「一歩」前へ、そう、「とても大きな一歩」を踏み出す物語です。
この物語は「フィクション」なんですが、私の周りにも「こういう人」います。「何か」のきっかけで、止まっていた時間を動かせる人。そして、そのキッカケの多くは「人」、とくに「昔の仲間」であることは、本当によくあることです。
そんな「友情」と「恋愛」を両輪に、前に進みだす主人公の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青春まっただ中の若者たちの「青春やりなおし」
主人公・宏樹は、高校時代、ある出来事を境に小説を書かなくなった。
ネットで知り合った同世代の仲間たちとのある約束も反古のまま、大学に入ったものの目標も見出せずに過ごしていた4年後、突如の昔の仲間からの強引な連絡。
ネットを縁に再び集まる仲間たち、動き出す計画、熾火の様に奮い立たせる情熱、少女とのほのかな心の通い合い。
大学生なんて、後から見れば「青春まっただ中」も良いところなのだけれども、その渦中にいれば、高校から大学へは大きな時間の断絶、成人もし、就職も意識しなければならない。さらに、その先も。
そんな、人生の痛みも重みも知った若者たちの青春群像を、代官坂のぞむ先生が描き出す! - ★★★ Excellent!!!語り手と会話のテンポがスムーズすぎる
小説は風景が浮かんでくる~等とよく言いますが、これは語り手の隣に自分がいるような錯覚を覚えました。
語り手である主人公と会話文の間に一切のノイズが挟まらず、主人公がまさに生きている、ということを証明してくれているようで息をはくように文字を追う事ができたことに驚きました。
文章構成も見事なのですが、展開と絡めていくキャラが主人公以外でも、すでに独立し、はっきりとした意志を持っているため、登場人物が増えても混乱することが一切ありません!
主人公と気が合う、いわゆる相方ポジキャラが周りキャラの魅力を一層引き出してくれるという主人公に取っても物語じたいにとっても貴重なキャラが開始時点でいるのも大き…続きを読む