第35話 休息
行商をちょっと休み、屋敷でのんびり過ごそうかと思っていると、ムスタル男爵が尋ねてきた。
「やあ。カイト君。聞いたよ、オークの討伐に参加していたんだってね。それで相談なんだけれど状態のいいオークがあれば売って欲しいんだよ。ないかな?」
「ありますよ。何頭必要なんですか?数によっては足りないでしょうけれど」
「二頭お願いするよ」
「ちょっと待っていてください。すぐに準備してきます」
そう言って俺は屋敷に備え付けたれた倉庫へ向かい、首を落としただけのオークをストレージより取り出した。台車に乗せておいてムスタル男爵を呼びに行く。
ムスタル男爵は首なしのオークを見て興奮していた。
「おお。確かにこれはすごく状態がいい。傷は首を切り落としているのと細かい穴が一つだけ。どうやって討伐したんだい?」
「その小さな穴の部分が動きを少しの間阻害する銃弾を撃ち込んだ痕なんですよ。そこで動きが止まっているうちに首を切り落として討伐した物です」
「素晴らしい。このオークを一頭金貨一枚で売ってくれないかい?」
「そんなに高値でよろしいのですか?」
「構わないよ。このオークにはそれだけの価値があると私は思っているからね。二頭で金貨二枚それでいいかな?」
「はい。構いません。お買い上げありがとうございます」
オークを買い上げたムスタル男爵は機嫌を良くして帰っていった。
それから一日後、多くの貴族がオークを販売してほしいと訪ねてくる。断ることもできず対応をミリアナに任せ、僕はストレージからオークを取り出すだけの機械と化した。
騒動の原因はムスタル男爵家で開かれたパーティーであり、そこで出されたオーク料理に舌鼓を打った貴族がオークを購入しにやってきていたのだ。しかし、買い取ったのは騎士団の討伐したオークで味はムスタル男爵の買い取ったオークよりも一段劣る。
ちなみにハイオーク以外のオークはカイトに所有権が渡っており領主様はこのことを感知していない。
こうして一撃で倒した高品質のオーク以外はすべて引き取られ俺の財産はちょっとした貴族程度のものとなった。
そのお金で馬車と護衛を追加した。これで行商がやりやすくなるだろう。
ちなみに後日、ムスタル男爵が屋敷を訪れ、パーティーの成功報告とオークの在庫を聞きに来た。そして、高品質のオークがまだ余っていると分かるとそのオークを全て買い取ってくれた。
こうしてユーステリアの貴族街ではオークを食べることがちょっとしたブームとなるのであった。
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