第19話 ウルフの解体

モーモーの肉一頭分の物々交換を終え、せっかくなのでウルフの解体をしていると。


「そのウルフの肉はどうするんだい?」


とおばさまに聞かれた。


「そのまま処分しようと考えていましたが、どうかしましたか?」


話を聞くに、この村ではウルフの影響か草食動物がほとんどとれないらしい。それでたまに狩れるウルフを保存食用に加工するそうだ。


「ならただで持って行っていいですよ」


と俺が言うと。


「あんた商人だろ。こんな時も商売しなくてどうすんだい」


と言われ木箱一箱分の穀物でウルフ二十頭分の肉を物々交換した。なんだか俺ががっぽり儲けた気分になって申し訳なかったがおばさまたちは冬の食事が良くなると喜んでいた。


「あんたはまたこの村に来る予定はあるのかい?」


そうおばさまの一人に聞かれ。


「とりあえず馬車や護衛が揃うまでは来ると思います」


「なら次は肉だけじゃなくて薪も持ってきてくれると嬉しいね。この辺は作物ばかりで木々が近くにないからね。薪が毎年不足するんだよ」


「では、冬になる前に一回薪を補充してから来ますね」


そう言うと背中を思いっきり叩かれた。


次の商談もできたところで今日は村長宅にお邪魔することになった。ご飯を頂いていると村長が質問を投げかけてくる


「商人殿は鍛冶師に知り合いはいるかの?」


「はい。お世話になっている鍛冶屋の方がいますが。どうかしましたか?」


「できれば次に来るときに鉄の農具を大量に仕入れてきては貰えんじゃろうか?ここは農地が広くて農具がすぐに駄目になってしまうのでな」


「分かりました。冬前までには一度来させてもらう予定ですのでその時に持ってきます」


「助かる。代金は少ししかないが弾むのでよろしく頼む」


その会話を最後にして食事を食べた後、部屋で休んだ。


次の日の朝、ユーステリアの街に帰る最中も結構なウルフに襲われた。


「冒険者は何をしてるんだろうか」


そうつぶやきたくなる程度には繁殖しているようだ。これなら他の村の近くの森にまで影響がありそうだ。


怪我一つなくユーステリアの街に戻ってきた俺はいつも通り検問をやり過ごして街に入った。最初に行ったのは冒険者ギルド。料金を払って解体場を使う。またもや二十頭のウルフを解体して肉は冒険者ギルドに卸しておいた。


次に向かったのは商業ギルド。ここでは解体したウルフの皮と穀物の木箱を卸した。商談が終わった時に伝言があるとのことで聞くと。


「領主様がこの街に戻った次の日に商業ギルドに迎えに来るので朝の鐘が鳴る頃に待っているように」


とのことだった。厄介事の匂いしかしなかったが逃げ道はなさそうだった。

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