第22話 後ろ盾

「まあそんな過程があって君を重要人物だと思いここに呼んだわけだけれどこれからも行商人として活動するつもりかな?」


「はい。そのつもりです」


「そんな君には二つの選択肢がある。一つ目は私の話しを断って行商人を続けること。デメリットとしては街への立ち入りを一切禁ずる。アイテムボックスに似ているスキルを得たとあっては禁制品を持ち込まれかねないからね。


二つ目は領主としての僕の命に従いながらも行商人を続けること。デメリットとしては護衛を数名つけさせてもらうことかな。それで君を監視して禁制品の持ち込みを避けつつ君のスキルを利用させてもらう。その代わり君が貴族のゴタゴタに巻き込まれるようであれば領主として君の後ろ盾になることは誓うよ」


「二つ目でお願いします」


「いいのかい?二つ目だと君の自由は制限されることになるよ。違う街に行ってやり直すって方法もあるけど。おそらく国を出ない限りは商人なんてやれないとは思うけどね」


「でしょうね。それと俺には後ろ盾が欲しかったんです。スキルのことはいずれ隠し切れなくなりますから。それにこの街に出入りできなくなると武器のメンテナンスをしてくれている鍛冶師に申し訳ありませんから」


「うん。気に入った。これからよろしく頼むよ。ところでスキルの詳細を教えてもらってもいいかな。そうじゃないと君に何がお願いできて、なにができないかの判断がつかないからね」


「はい。俺のスキル名はストレージ。今は二十のマスがありそこに一つの物を九十九個まで格納できます。ストレージ内に保管しているものは時間停止状態であり、同じものでも違うマスを使えば保管は可能です。今分かっているのはこの程度です」


それを聞いた謁見の間の人間は誰一人口を開くことができなかった。なんかまずいことでも口走ったかと思っていると。


「カイト様。落ち着いてください。みなさんカイト様のスキルの規格外さに少し冷静を欠いているだけですので」


そうして数分待っていると領主様が話し出す。


「ちなみにだけれどモーモーの肉はいくつある?」


「今は四十五頭ですね」


「セバス。十頭ほど買い取っておいて。それに明日パーティーを開く。内容はカイトの後ろ盾に着くということを他の貴族に知らしめるためだ。もちろんカイトにはパーティーに参加してもらうよ。みんな今からカイトの扱いについて会議を行う。スキルについてはできるだけ伏せて護衛や馬車の選別をするから文官たちを会議室に集めておいてくれ」


「カイト。今日のところは帰ってもらっていいよ。明日の同じ時間に商業ギルドの前で待っていてね。あと明日には君に屋敷をプレゼントするからそこに住んでね」


そうして領主様との対面は終わった。

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