魔弾を撃つ商人

るいす

第1話 洗礼

俺の名前はカイト。農家の生まれで今年で十歳だ。髪と目は茶色。身長百四十のまだまだおこちゃまだ。そんな俺だが今日は教会に来ている。


この世界では十歳になると神より職業とスキルを授かると言われている。その洗礼を受けるために教会に来ているわけだ。と言っても周りには農家しかないこの村で同い年の子どもなんてものはいない。つまり神父様は俺一人のためにこんなしょぼい村まで来てくれたというわけだ。


「カイトよ。洗礼を受ける準備は良いか」


「はい。神父様。いつでも大丈夫です」


いつから言われ始めたかはわからないが農家の両親から生まれるのは農家だけだ。そんな言葉がやけに耳に残った。俺の両親はどちらも農家。つまり噂を信じるのであれば俺も農家である。それが嫌なわけではないが、どうせならダンジョンに潜りたいし世界中を旅してみたいというのが男の子と言うものであろう。


そんなことを考えながら洗礼を受ける。周りには村中の人たちが集まっており、洗礼の結果は皆に知らせることになっている。


「アリステル村のカイト。職業は商人、スキルはストレージ」


神父様がそう叫んだ瞬間、周りは静まり返った。集まったみんなは俺が農民の職業を授かるだろうと思っていたのだろう。しかし、蓋を開けてみれば職業は商人、スキルにいたってはストレージだ。ん。ストレージってなんだ?


「神父様。スキルのストレージとは何ですか?」


「分からん。儂も初めて聞くスキルだ。ストレージとは格納庫とも呼ばれておるし何かをしまうスキルなのではないか?しかし、それでは勇者が持つと言われるアイテムボックスというスキルもあるしのぅ」


結局わからずじまいだった。洗礼も終わり壇上から降りると両親が迎えてくれる。


「カイト。やったじゃないか。ストレージと言うのは分からないが商人だと成功すれば大金持ちになれるぞ」


ぱぱん。成功しなければ何もできないんだよ。


「そうよ。私、きれいなドレスを着てみたいからお願いね」


ままん。子どもにあんまり気負わせないでよ。口には出していないためそんな言葉は届かないが商人であることは祝福されていることに安心したカイトであった。


次の日、俺はいつも通り薪を集めに森に入る。浅瀬であれば魔物や肉食の動物に合うこともなく安全に薪を拾えるのだ。既に何年もこの作業を行っているので考え事をしながらでも手を動かすことができる。


ふと一つの石ころ拾った。


「そういやストレージは格納庫とも呼ばれるって言っていたな?」


そう言い終える前に石ころは手の中から消えていた。そして脳内には十六のマス目が広がり、その中の一つに石ころ×一と表示されていた。


こうしてカイトはストレージがあたりスキルであることを悟った。

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