第17話 貴族
ギルド会館を出た俺に近づいてくる者がいた。その人物は燕尾服を着こなしておりいかにもできる人間と言った風貌の男だった。
「私はムスタル男爵家の執事をしておりますダスティンと申します。カイトなる人物を知りませんか?」
と丁寧な口調で質問された。とっさに
「カイトは俺ですが」
と言うと、執事さんは笑顔になった。
「実は先日、とある肉屋でモーモーの肉が大量に販売されたのですがそれをご存じでしょうか?」
「おそらく私が卸した肉かと思いますが、それがどうかしたのですか?」
「実は私を雇っていただいているムスタル男爵家でパーティーを行うことになりましてそこにお出しする肉を探していたのです。そこで様々な肉屋で卸している肉を料理長に試食してもらった結果、あなたが卸したモーモーの肉が一番評価が高かったというわけです」
「理由は分かりましたが私はどうすればいいのでしょうか?」
「可能であればすぐにでもモーモーの肉を男爵家に卸していただきたいのですが可能ですか?」
「できますよ。在庫がありますので。何頭ほど必要でしょうか?」
ダスティンさんは予想と違った反応を見せた俺に開いた口がふさがっていなかったがすぐに正気を取り戻した。
「三頭あればありがたいのですが・・・流石に難しいでしょうか?」
「大丈夫です。一旦私がお世話になっている鍛冶屋まで行きますのでそれから男爵家まで案内していただいても構いませんか?」
「分かりました。それではついていかせていただきます」
鍛冶屋に着いた俺はガンツさんと口裏を合わせるために工房の裏を使う許可をもらった。
そこで荷馬車に三頭のモーモーを乗せてダスティンさんの前に現れる。ダスティンさんは目を真ん丸にして驚いていた。
「それでは行きましょうか?」
俺がそう言うとダスティンさんが道案内をしてくれる。貴族街の入り口に差し掛かると止められたがダスティンさんが紋章を見せるとすぐさま通してくれた。
屋敷にたどり着くとメイドさんが出迎えてくれて裏庭まで案内してくれた。そして台車に乗せてあるモーモーを引き取るといつの間にか戻ってきていたダスティンさんにお金の入っているずた袋を手渡された。
「その中には特急料金も入っております。相場の二倍の値段で買い取らせていただきました。次にモーモーの肉が入った際は先程の関所でムスタル男爵の名前を出していただければ私が出向きますので今後ともお肉を卸していただけないでしょうか?」
「構いませんよ。しかし、モーモーは私が行商に行った際に襲われたので狩った物なのです。いつ確保できるかは分かりませんよ」
「それでもかまいません。料理長が大層気に入っていたものですから。今後ともお待ちしております」
そう言い残し、ダスティンさんは帰っていった。
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