第51話 取り扱い(人工魔鉄、黒魔鉄)

マシンガンを放ち、時間が止まったかのように静かになったがいち早く復帰した領主様がガンツさんに声をかける。


「あれだけの攻撃で一体いくら使ったのだ?」


ガンツさんはゴンズさんを見て話を促す。


「銃弾については私が主に作成していますので、私から説明させていただきます。まずあの銃弾は全て魔鉄製です。中は空洞になっていますが魔法陣とオークの骨を粉にしたものを詰め込んでいます」


「あれほどの量の魔鉄が必要になるのか。威力は申し分なかったが確かに高価だな」


「そこで重要な話になるのですが私たちの工房で人工魔鉄なる物の作成に成功しました。先程の銃弾にもそれを使用しています。強度は従来の魔鉄より落ちますが鉄と魔物の素材、こちらもオークの骨を使っていますがそれで作成が可能です」


「なにぃ。それでは今まで銃を使うデメリットであったコスト面が全面的に改良されているではないか」


「領主様。少し落ち着いてください。問題はコストが落ちたことで誰にでもこの威力の武器を入手できる機会がやってきてしまうことだと工房は考えているのですよ」


俺が口に出したのが不満だったのかガンツさんの拳骨が落ちた。


「問題はそれだけに留まりません。確かに銃弾のコストは落ちましたが次はその銃弾に耐えるために新しい鉱物を使用しました。カイト。出してくれ」


拳骨の恨みはあったが話の腰を折るわけにはいかなかったので俺は黒魔鉄を出した。


「こちらは黒魔鉄と言う鉱物らしく石切場でゴミとして扱われているのをカイトが発見しました。今まで加工する術がなかっただけで硬度は魔鉄の上をいきます」


「カイトは何故これが黒魔鉄という代物だと気づいたのだい?」


「俺のストレージに入れた物には名前が表示されるのです。そこでゴミであっても何かに使えないかなと思ってストレージに格納してみた結果、黒魔鉄と表示されました。鉄のことは分かりませんでしたが工房に持ち込んで研究してもらった結果、銃に使用して貰ったというわけです」


「話はある程度わかった。それでこの一連の話を私に持ち込んだということは取り扱いについて悩んでいるということでいいのかな?」


俺たち三人は頷いた。


「分かった。正直これは男爵である私でも手におえない事案だ。宰相様に話を通して見るけれどもしかしたら禁制品になるかもしれない。その場合はどうする?」


「拳銃の使用だけは何とかしてほしいです。それがなければ私は無力ですから」


「カイトの安全は確かに最重要案件だね。それぞれの貴族の領地を回ってもらう必要もあるし。私から工房に依頼する。マシンガンに耐えうる鎧やそれに準ずるものを作成してほしい。そうすれば何とか厳重管理程度に抑えることができるかもしれないからね」


ガンツさんとゴンズさんは胸に手を当て膝をついた。これは依頼を受けたという証だろう。


「黒魔鉄については商業ギルドに任せて、一般の取扱品とするよ。ただし人工魔鉄に関しては秘匿する。その間は工房でも厳重に扱って欲しい。これで話は以上かな?」


「厳重に扱うと言っても具体的にはどうすればいいのですか?」


「今まで通り銃弾の作成だけの使用に留めておいてくれれば問題ないよ」


重要なことはとりあえず決まったので宰相様と話をした後にまた集まることとなりこの場は解散となった。

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