第52話 冬の大仕事

俺はガンツさん親子と共に工房へ戻った。


「はぁ。緊張したわい。これからあのようなことが何度か続くとなると嫌になるわい」


「そんなこと言うなよ親方。領主様から依頼が来たとなると工房を大きくするチャンスだよ」


二人のテンションの差は激しかったがガンツさんもゴンズさんにつられて少しやる気が出たようだ。


「儂らはこれから人工魔鉄の生成とそれを元に鎧の作成に入る。お主の出番は今のところないから領主様と顔つなぎをしてほしいときだけこちらから声をかけるわい」


そう言われて俺は工房を追い出された。


そして時は冬の終わりまで進み、ガンツさんから呼び出しがかかった。俺は工房へ向かうと弟子の方々がそこら中で眠っている。ガンツさんも目に隈を作っていかにも眠そうだった。


「待っとったぞ。カイトよ。鎧は完成した。テストでもマシンガンでは貫通できないことは確認済みじゃ。重さも従来の物と大して変わらんじゃろ。あとは領主様に報告するだけじゃからアポイントメントを頼むぞ」


そう言うとガンツさんは倒れてしまった。まずいと思いとりあえず呼吸を確認しようとするといびきをかいていた。どうやら弟子たちと同様に眠っているだけのようだ。


俺は早急に領主の館へ向かい、執事さんに領主様と話がしたい旨を伝えた。


「領主様は仕事も落ち着かれましたので、数日以内であればいつでも構いませんがどうなさいますか?」


「では二日後の朝でお願いします。工房もフル稼働していたらしく俺が向かった時には限界だったみたいなので一日は休養を挟みたいです」


「二日後の朝でございますね。承りました。そのように領主様には伝えておきます。その他に伝えておいた方が良いことなどはありませんか?」


「正直俺も詳しく聞いていませんので。何も伝えることはありません」


「分かりました。それでは二日後の朝、お待ちしております」


俺はそのまま工房へ向かい予定の報告をしようと思ったのだが、工房のみんなは疲れで眠っているらしかった。なので、俺はガンツさんの奥さんに言伝を頼み自分の屋敷へと帰った。


そして二日後、工房へ馬車を走らせてガンツさんを迎えに行くと、そこには完全復活と言った装いのガンツさんが工房前に立っていた。


「遅いぞ。カイト。領主様を待たせるわけにはいかん。早くそこに並べてある鎧を格納して領主様の館へ向かうぞ」


並べられている鎧は十体。何故そんなに必要だったのかと問い詰めたくなったが領主様の元へ急がなくて行けないのは事実だったので何も聞かずに鎧を格納して馬車を走らせる。


館へ着いた時には既に執事さんが待っていた。が早すぎる時間だったので別室でまたされることになったのだった。

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