第53話 納品(人工魔鉄鎧)

十五分待って俺たちは執事さんに前回使った部屋へと案内された。そこには以前と同様に兵士の方が数名と領主様がすでに待っていた。


「やあ。随分と早い来訪だけれど、もう鎧は完成したのかな?」


「はい。工房をフル稼働させて何とか十領の鎧を完成させました。一応マシンガンで貫かれないことは実験済みです」


「それはすごい。試しに兵士たちに着てもらってもいいかな?」


「構いません」


兵士たちが着替えている間に、衝立に持ち込んだ鎧を着せた。


「それで、着てみた感想はどうだい?」


「今までの鎧と重さは変わりません。これで本当に変化があるのか疑問に思う程です」


「それじゃ。あの衝立にマシンガンを撃ってみてもらえるかな」


俺はストレージからマシンガンを取り出して兵士の方へ渡した。


兵士の方がマシンガンを撃つと鎧は弾丸を弾いていた。マガジンの中身を撃ち尽くした後鎧をチェックしてみるとへこみはある物の貫通している箇所は存在しなかった。


「この鎧は素晴らしい出来だね。ちなみに聞くけれどこれを黒魔鉄で作るとどうなるのかな?」


「おそらく相当重くなるでしょう。鎧を着て動けるのかが分かりません」


「そうか。それではこの人工魔鉄製か魔鉄製の鎧が一番頑丈と言うわけかな?」


「私の知る限りではそうです。ちなみに私も魔鉄製の鎧を作るまで魔鉄のことを知っているわけではないので強度の違いなどは分かりかねます」


「そうか。魔鉄のことは王都で質問することにするよ。それでガンツ。君に王都まで付き添いをお願いしたいのだけれどどうかな?」


「カイト。お主の武器の手入れはどうする?一応ゴンズにも教えてはいるが儂が作るのに比べて耐久度は落ちるぞ」


「構いませんよ。ガンツさん。ガンツさん製で手を付けていない拳銃がまだ何丁も残っているので。で、ちなみに王都まではどれほど時間がかかるのですか?」


「片道一か月と謁見の予約に一か月以上はかかるだろうから、合計で三か月以上はかかるだろうね」


「そのくらいであれば俺のことは気にしないで大丈夫ですよ。ガンツさんも工房を大きくするチャンスなのですから俺なんかに気をつかわないでください」


「そうか。それでは領主様にお供させていただきます」


「いい返事か聞けて良かった。正直、製作者がいなければ説明にぼろがでそうだったからね。それじゃあ雪解けとともに出発するからそのつもりで準備をしていてくれ。必要な物はあらかた用意しておくからそちらで準備してほしい物はここに案内した執事にリストを作らせて渡すようにしておくよ」


そうしてガンツさんは雪解けとともに王都に行くことが決まった。

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