第6話 進化

鍛冶屋の裏手の掃除まで終わらせたのはちょうど午後に差し掛かろうという時間だった。


そこへガンツさんが俺を呼びに来た。


「おい。カイト。飯だ」


「えっ。昼食が食べられるんですか?」


「鍛冶屋は力仕事なんだよ。飯食わねぇと力がでねぇよ。カイトはいらねぇのか?」


「食べます」


と言うわけで昼食をごちそうになった。


「午後からは俺の嫁さんと買い物に行ってくれ。アイテムボックス持ちなんだから荷物持ちくらいできるだろ」


「?。ああ俺のスキルはアイテムボックスではなくてストレージと言うらしいですよ。まだ検証不足ですが格納できる物には限りがあります」


「聞いたことのねぇスキルだな。まあ十人分の買い物だ。大荷物だからいつも何往復もして買い物に行っているんだ。カイトがいりゃ回数は減らせるだろ」


まあこちらとしてはお邪魔している立場なので断る理由もない。食べてすぐに出かけるとのことなので急いで昼食を食べて買い物に行く準備をした。


「カイト君は商人の職業を賜ったのよね?ならついでに商業ギルドに登録しておきましょう」


そう言われ、俺とガンツさんの奥さんことメリシアさんは商業ギルドへと向かった。商業ギルドの登録には簡単な読み書き計算と職業診断などがあったがスキルを調べた際ストレージと出て受付の人が首をかしげていた。


まあ、問題なく登録できたので気にしないで置く。その後、食事の買い出しに付き合ったのだが買う量が本当に多かった。だけど色々な食材を詰め込んだ袋がストレージの一枠しか使わなかったので工房には帰らずに一回の買い出しだけで済んだ。


工房に帰り、食料の入った袋を出しているとストレージの枠が十六だったのが十七になっていた。これには俺も大興奮。使えば使う程スキルが進化するのかと期待で胸が膨らんだ。


夕食時に。


「なんかカイト嬉しそうだな」


と言われ。


「スキルの格納数が一枠増えていたんですよ」


と言うと。お弟子さんやメリシアさんも含めてへ~という反応をしていた。


この感動は分かち合えないものなのかと思ったが人にこき使われるのは嫌なので喜んでもらえなくてもいいやと開き直った。


それから一週間、毎日工房の手伝いをしながら拳銃の完成具合を聞きつつ過ごした。そしてついに拳銃と弾丸百発が完成した。まだ試験は行っていないということなので明日、草原で試験射撃を行うことになった。


俺は待ちわびた拳銃の完成で夜も眠れなかった。

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