第46話 取り扱い

「お主はそれでいいのか?」


ガンツさんの言葉に俺はどういう意味なのか分からなかった。


「確かに儂らの研究成果を隠せば、黒魔鉄はただ同然で手に入るじゃろ。しかし、それを公表すればお主が気づかなかった技術を誰かが完成させるかもしれん。どうじゃ?」


「確かにそうかもしれません。でも公表すれば素材が手に入らないかもしれませんよ」


「そこは誰かを頼るなり、お主がそれだけ大物になればいいだけじゃろ。一応はお主、商人じゃしな」


「誰を頼ればいいのですか?」


「そこまで言わんと分からんのか。はぁ。お主は今領主様に一番近い商人と言っていいじゃろ。そこでこの情報を領主様に伝えればこの街の産業として成り立つじゃろ。まだ拳銃しか作成しとらんが魔法陣との相性を見るにその効果は魔鉄以上じゃ。それを求めて街に人が集まる。人が集まると物が集まる。そのようにしてこの街を発展させていかんかの?」


「そこまでいわれては断れませんよ。で、僕は何をすればいいんですか?」


「まずは領主様と儂の顔つなぎじゃな。黒魔鉄、合成魔鉄のことを領主様に話した後に商業ギルドに特許として出願する。まず間違いなく通るじゃろ。じゃが商業ギルドには拳銃および弾の作成方法は秘匿する。知らせるのは領主様だけでいいじゃろ。とりあえずは領主様との顔つなぎを頼む。詳細は領主様に丸投げするかの」


「分かりました。領主様の館へ行く用事があるのでその時に都合を聞いてきます。会うのはガンツさんだけでいいのですか?」


「いいや。ゴンズも連れていく。弾については今や儂よりも詳しいからの」


「分かりました。詳細が決まり次第伝えに来ます」


そう言って俺は外へ行こうとしたが、ガンツさんに首根っこをつかまれて外へ行くことができなかった。


「ちと落ち着け。初めに領主様に会いたい要件は拳銃のことだと伝えておけ。その後で黒魔鉄や合成魔鉄のことは話す。数秒でもオークの動きを止めることのできる武器じゃ、領主様の気を引くにはピッタリじゃろ」


「領主様に銃を売るのですか?」


「ああ。マシンガンなら多少は使い物になるじゃろ。弟子たちの修行にもちょうどいいしの。問題は細工師や魔法陣関係の物が関わってこないと技術が進歩しないことじゃわい」


「魔法陣関連は俺がどうにかできるかもしれません。雪解けが済めばドローデルの街に向かう予定なのでそこで新しい魔法陣について調べてくるつもりです。こちらに興味を持つ人がいれば連れてくることもできるでしょうし」


「それでは、冬の間に色々と進めておかねばならんな。全くお主が来てから暇がなくてうれしいわい。では話も済んだことじゃし、新しい拳銃の試射に行くとするかの。まさかカイト、忘れておったわけないじゃろ」


俺は汗が止まらなかった。

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