第49話 後始末

領主様主催のパーティーも終わり、俺も屋敷に帰ろうかと言うところで領主様から声がかかった。その後ろにはパーティーの最中に領に訪問してほしいと頼まれた貴族の方々が集まっていた。


「カイト君。すまない。どうにも彼らが約束を取り付けたいらしくてね。今後の予定を詰めていってくれないかな?」


正直断りたい気持ちで一杯だったがここで断ると屋敷まで追いつめてきそうな気迫を感じる貴族が数名いた。


俺は諦めて会議に参加することになった。


会議は予想外に早く進行していく。貴族たちがパーティー内で話し合いが行われていたらしく、それぞれの特産品が出来上がる季節に領に向かうように指示を出されるだけだった。


後は俺がその予定に合うように自分の都合を組み込むだけで会議は終了した。とは言っても一回目はお試しらしく今後の売れ行き次第でこちらから断っても構わないとのお言葉を頂いた。


何だが引き際が潔いなと思っていたら、後ろにはムスタル男爵が手を回していたようだ。確かに仕事ができる人だなと感心していたら、どうやら領地の特産品を一度口にしてみたいらしく口に合った場合は高値で取引をする契約となっているらしい。


パーティー前は執事の手のひらの上で踊らされていたつもりがムスタル男爵の手のひらの上だったらしい。


とりあえず冬明けにドローデルの街に向かうことは決定事項として、それ以降の商談は全て押さえられてしまった。まあこんな機会がなかったらこの街の周辺を行商するだけで終わっていたかもしれないので良い機会が巡ってきたと思うことにした。


会議も終わりそれぞれの貴族が満足そうな顔をして出ていく。俺も外へ出ようかとしていると執事さんに止められた。


「カイト様。この後、領主様が例の武器に関する話をする日を決めたいとおっしゃっていますので少々お残りください」


流石に逃げることはできないので留まっていると、軽食や紅茶が並べられていく。


「貴族たちのお相手で食事がとれていなかったようですので勝手ながら準備させていただきました」


流石にできる執事さんは違うね。なんて感想を思いながら食事をとっていると、領主様が入ってきた。領主様の後ろには使用人が立っており、俺と同じ軽食を持っている。


「はは。カイト君も食事をとれなかったみたいだね。僕もご一緒させてもらうよ」


そう領主様が話したが目の奥は一切笑っていなかった。その後、無言で気まずい食事を終えると領主様より声がかかる。


「さて、食事も終えたことだし予定をたてよう。例の武器に関しては早めに話しをしたいのかい?」


「工房の方々はそのようです。量産するとなると冬の仕事にもなりますしその関係もあるのかもしれませんね」


「分かった。では三日後に君がここに連れてきてくれ。何人で来るのかだけ教えて欲しいな」


「工房長とその息子の二名だけと聞いています」


「分かった。では三日後の午前中でお願いするよ」


そうして長かった一日がやっと終わった。

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