第48話 パーティー(領主様)
黒魔鉄や人工魔鉄については領主様と都合が合わせることができず秋物の食材を使った領主様主催のパーティーが先に来てしまった。
執事さんに呼ばれ俺が厨房に行き食材を出すと、調理場が戦場のように活気づいた。俺は執事さんに連れられ、領主様と面会することになっている。
「お久しぶりです。領主様」
「カイト君。久しぶりだね。話があると聞いているけれど何かな?急を要さないのであれば後に回してほしいのだけれど・・・」
領主様の目には隈ができており明らかに寝不足だ。冬は誰しもが暇を持て余していると思っていたのでちょっと驚いた。
「では手短に、僕が拳銃の作成でお世話になっている工房が領主様と話がしたいそうです。内容はマシンガンという拳銃の改良版について、ちなみに僕は筋力不足で使えませんでしたが普段から鍛えている兵士であれば問題なくオークを仕留められる代物です」
その話を聞いた途端、領主様の目の色が変わる。
「それを私に提供して何を求めているのだい?」
「それは実際に話をしてみてから聞いてください。俺は領主様との顔つなぎに使われただけですから」
「・・・そうだな。日程は改めて君に伝える。できるだけ早いうちに日程を空けるから急になるかもしれないがよろしく頼む」
俺は一礼をしてその場を去った。執事さんからパーティーには出席するかを聞かれた。
「俺がいてもしょうがないでしょ?」
そう返すと。
「むしろ大人気になると思いますよ。貴族であれば食材の出どころは知っておきたいでしょうし、可能であれば顔つなぎまでしておきたいでしょうから。それに今回は隣領まで情報を広めておりますので、もしかすると商売に関する情報が出てくるかもしれませんよ」
俺は執事さんの手のひらで踊らされることにした。
時は流れ、俺が会場に入った途端、ムスタル男爵がこちらにやってきた。
「カイト君、言ってくれれば秋物の食材を大量に購入したというのに何故教えてくれなかったのだい?」
「すみません。ムスタル男爵とは肉の取り引きばかりしていたので野菜はお気に召さないのかと思いまして」
「そんなことはないから。僕は美味しく食べられるものであればなんでも好きだよ。次からは僕にも声をかけてくれよ」
ムスタル男爵が離れていくと、次々に貴族の方々が俺に群がってきた。話の内容はどのようにして鮮度を保っているのかを探ってくるばかり。ときおり食通と思われる人がこんな食材が手に入ったら売って欲しい。なんて言葉をかけてきたが・・・。
こうして俺はパーティーが終わるまでストレージのことを隠すのに集中してパーティー気分を味わうことができなかった。
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