第12話 商売

次の日、朝早くから村が騒がしかった。起きると村長が部屋の前に待機していた。


「さあ。商人殿。商いの時間ですぞ」


そう言って俺を解体場まで連れていく。俺が到着すると村民が盛り上がった。これは昨日の奴らの弔いと雰囲気を変えるためだなと直感で感じた俺は昨日解体した鹿肉をテーブルの上に並べた。


肉と鉄の農具はあっという間に交換され、保存食を作るという奥様方に肉の追加をせびられるという一幕もあった。


追加は望むところであったため次は鹿ではなく兎肉を捌き販売した。お昼には客である村民もいなくなり店じまいをした。その後は昨日と同じように森へ行き、回復草と魔力茸を採取した。


村長宅に戻ると今日買い取った鹿肉を豪勢に使った夕食が整えられていた。


「今回は村民が申し訳ないことをしたにもかかわらず商売を行っていただき本当にありがとうございました。昨日の一件で商人様が帰ってしまうのではないかと村民皆ひやひやしていたのです」


「お礼には及びません。それにこの村に来たのは前任の行商人に鉄の農具を卸していた鍛冶屋の旦那に頼まれたからなのです。その人にはお世話になっているため、この程度のことで怒って帰ってしまったと知られては俺が叱られてしまいます」


そう言うとお互いに笑いあって食事を始めた。村長は終始笑顔で今回は本当に来てよかったと思える行商だった。


次の日には、イテル村を出てユーステリアの街へ向かう。相変わらず動物や魔物が飛び出してくるが拳銃で仕留めていく。盗賊がいた辺りまでたどり着くとそこには甲冑を着た騎士が数名馬に乗って周囲を見渡していた。


何事かと思い様子を伺っていると声をかけられた。


「すまない。この辺りで盗賊が出没していると聞いたのだが何か知らないか?」


本当のことを言っていい物か悩んだがどうせ街で話さなければならないのでここで正直に話すことにした。


「その盗賊であればおそらく私が討伐しました。こちらが証拠です」


俺はわざと調べていたのとは逆の森へ入り、落葉をかき分けるふりをしながら一人ずつストレージから出していく。合計二十人を出し終わった時には騎士たちの顔は引きつっていた。


「見たところすべて頭に一撃を入れて殺しているようだが・・・。其方武器を持っておらぬようだがどうやったのだ?」


「それは異世界人が持ち込んだと言われる銃という武器を使っております。採算が取れないという理由で一般的には使われておりませんが私のように一人で行商を行うには護衛代などは払えませんので」


「そうか。教えてくれて感謝する。あとこの死体は我々が持ち帰る。報奨金についてはユーステリアの街で受け取れるようにしておくが問題ないか?」


「はい。もともとその街に戻るつもりだったので問題ありません」


「ではこれを詰め所で見せてくれ。そうすれば報奨金が支払われるはずだ」


そうしてコインを一枚貰った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る