第29話 応援

ユーステリアの街に馬車を走らせる中、モーモーが襲ってくるのが妙にイラつく。そんな俺をたしなめながらミリアナは馭者をしてくれている。幸いオークに襲われることもなくユーステリアの街にたどり着いた。


前回同様、貴族用の門を通って領主の館を目指した。報告はゲイツに任せ気分のすぐれない俺は馬車に残って待機している。十分もかからずにゲイツは戻ってきた。


「カイト様。騎士団の応援は問題なく明日の朝出発できるように準備しておくそうです。私たちにこれ以上ここでできることはありません。館に戻り休みましょう」


俺はゲイツの言う通り屋敷に戻り軽く食事を摂った後、眠りについた。翌朝、やけに早く目が覚めたので迷惑かと思いながらも鍛冶屋へと足を運んだ。


鍛冶屋では既に鍛冶に取り掛かっている音がしており、俺は裏手に回った。そこには俺が片付けていた鉄鉱石や石炭と言った鍛冶の素材が置かれていた。手持無沙汰の俺はそれらを工房の中に運び、きれいに並べる。それだけのはずなのに気持ちは少し楽になった。


そんな様子をガンツさんに見られていた。ガンツさんは無言で手招きをして弾丸を九十九発と一発の他とは違う色の弾丸を渡してきた。


「この弾丸は感電弾だ。で色の違う一発だが魔鉄を使って作った感電弾だ。ちなみに魔法陣は普通の魔法陣の三倍書き込んである。使うときは注意しろよ」


そう言ってガンツさんは鍛冶仕事へ戻っていった。俺は一礼して工房を出ると、屋敷へと帰る。


屋敷へ戻ると既に出発の準備は整っていた。俺はすぐさま馬車に詰め込まれた。


「カイト様。今回はお咎めなしといたしますが、誰にもつけずにいなくなるのはいただけません。次からは身内に会いに行くとはいえ誰かお供をお連れください」


「ん。俺、ガンツさんのところに行ってきたって誰にも言ってないんだけど」


「カイト様には常にだれか尾行についている物とお考え下さい」


一瞬寒気が走ったが、仕方がないかと思い直した。馬車は既に出発しており、街門にて騎士団と合流してアデル村へと向かっている。


道中は何も問題なくアデル村へたどり着いた。しかし、森にいた騎士団の前線が抜けられたらしく数頭のオークが森の入り口にいた。一緒に来ていた騎士団の面々はすぐさま応援へ行くと馬車を離れていく。


俺たちは村人の避難先へ馬車を走らせた。幸いオークはここまで来ておらず村人は心配な様子で俺たちを迎え入れた。急遽集まったせいで食事がとれていないとのことだったのでストレージから材料を出して、ミリアナや村民の奥様達の手を借り炊き出しを行った。


その最中も俺の視点は森の方へと向いていた。

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