第30話 上位種

俺が森の様子を気にしているのを気が付いているのだろうザッツが話しかけてきた。


「森の様子を見に行きますか?馬車には治療用の道具を一式取り揃えております。怪我をした騎士団員を後退させるためにと言う理由で行くことは可能ですが」


俺は自分たちの安全と嫌な予感を天秤にかけ結局、森の方へ行くことにした。馬車を走らせ森に近づくと戦闘の音が大きくなる。戦闘を見学できる位置まで近づくとオークが二頭こちらへ走ってきた。


俺が感電弾を撃ち込むとザッツとゲイルがあっという間にオークの首を落とした。戦場は乱戦であちらこちらに怪我をした兵士の姿が見受けられる。


俺はザッツとナターシャにお願いして怪我をした兵士を馬車の近くまで避難させるようにお願いした。ゲイルは万が一オークがやってきた場合の戦力として馬車の傍に残ってもらう。


一時間程で二十人を応急手当したのだが兵士たちは治療を受けてそのまま戦場へと戻っていってしまった。ミリアナは必死に止めようとしていたがそれもかなわなかった。


騎士団の応援もあった効果なのか、前線がどんどん森の奥へと向かっていく。途中で馬車では向かえなくなったのでナターシャを馬車の護衛に残し、治療道具をストレージにしまいこんで前へ進む。


オークの死体で足を取られそうなので適宜オークをストレージにしまいこみながら進んでいるとひと際大きなオークと騎士団の兵士十人が戦っている姿が見えた。今まで見たオークは素手か木の棒を棍棒として使っていたのだがそのオークは大きな斧を武器として使っていた。


その斧を振ると兵士たちは防御していたのだが筋力の差か吹き飛ばされていた。俺は隙を見て感電弾を撃ち込み、ザッツがオークの元へと駆けていく。しかし、オークの行動は鈍ることはなくザッツは途中で止まり接近するのを辞めた。


「どうやら上位種を相手にするには感電弾は威力が足りないみたいですね」


とゲイルが話す。そこへ騎士団長のグランツが現れ、口を挟んできた。


「全く、鉄製の武器を持っただけであれほど厄介になるとは思わなかったよ。ここは危険だから君たちはすぐに避難してくれ」


そう言ってグランツは上位種のオークの元へ駆けていった。確かにここに居るだけでは邪魔になると感じていたがこのままやみくもに戦っても被害が増えるだけだとも感じている。


そう考えながら俺は魔鉄で作られた一発の弾丸を手に取って眺めていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る