第37話 群れ
次の日、ユーステリアの街を出て三時間程経った。俺たち一行は今までに経験したことのない数のウルフに囲まれていた。
「カイト様。早く匂い玉を投げてください」
そう言われ馬車の周囲に匂い玉を投げ続ける俺。その匂いにもがき苦しむウルフを刺し殺していくザッツたち。そんな作業が延々と続いていた。
三十分程経ったとき状況が変わった。一匹の緑色をしたウルフが登場したのだ。そのウルフは匂い玉にひるむことなくゲイルに飛び掛かった。突然の出来事にゲイルはフォレストウルフに押し倒されながらも剣を下に滑り込ませていた。
自重で剣が突き刺さったフォレストウルフはそのまま息絶え、ゲイルは血まみれのままフォレストウルフの下から這い出てきた。
フォレストウルフが倒されたことを見たウルフたちは散り散りにその場を去っていく。どうやらフォレストウルフがボスとなってウルフたちに命令を出していたようだ。
匂い玉の効果で周辺の匂いがきつかったがウルフを黙々と回収する俺。流石にこれだけのウルフを放置するなんてことはできなかった。時間を掛けたため皆の冷たい視線が突き刺さったがこれがお金になるのだから耐えるしかなかった。
ウルフの回収も終わり馬車を進めていると、次は置き去りにされた馬車が目立ってきた。馬は食い殺され、人の姿も見えない。おそらくウルフにやられたのだろう。馬車なんかは置いておいても邪魔になるだけなのでストレージに格納した。後々改良して使わせてもらう予定だ。
匂い玉を使った場所から結構な距離を進み、もうすぐウルク村が見えてくるというところでまたもやウルフが襲ってきた。既に匂い玉は使い切っているので俺はマシンガンを撃つ。
マシンガンは弾を連続で撃つことはできるが、反動がすごくて十歳の俺では抑えることができなかった。仕方がないので一発ずつ丁寧に狙いながら撃つ。途中でこれなら拳銃で良くねと思ってしまった。
今回は長く戦闘を行っていたため到着が遅れてしまったが、ウルク村の人々は俺たちが到着するとすぐに集まってきた。俺は馬車にあらかじめ薪の入った木箱を置いておいたのでそれを馬車から取り出した。それを見た途端、村民は離れていった。
あとから話を聞くに、薪は村長がまとめて取引を行い、後で村民に分けるのだそうだ。最初村民が離れていった時には誰かが既に薪を持ち込んでおり、不要になったのではと勘違いしてしまった。
「これだけの薪を運ぶのも大変だったでしょう。最近は行商人もあまり来なくなって薪が足りずどうしようかと思っていたのですが、これなら数年は冬の薪を心配しなくてもよさそうです」
まだ取引を行っていないにもかかわらず村長は既に薪を手に入れたような口ぶりだ。まあ、構わないのだけれど・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます