第38話 商談(薪)
村長は薪を手に入れたような気になっているが、俺は早く交渉に移りたかったので村長を現実に戻す。
「それで村長。この薪にいくらだせますか?」
「それは現金でと言う意味かね?」
「そうですね。穀物は前回行商に来た時に大量に入荷しましたので、できれば現金が良いですね」
その言葉で村長の表情に影が差す。普通の村は現金など持っておらずほとんど物々交換で済ませる。しかもここは穀物地帯。穀物は保存がきくため緊急で売らなければならなければ現金にせず保存してしまえばいい。そんな背景があってかこの村には現金がほとんどなかった。
「そこをどうにかならんかのぅ。この村には現金などほとんどないんじゃ」
「別に穀物でも構いませんが取引はこちら有利にしてもらいますよ。運送も危険でしかも今回はウルフの群れに襲われ匂い玉の費用もかさんでしまっていますから」
その言葉に村長は顔を顰める。途中で馬車が何台も道に放置されていたことから取引に来る行商人が全く来ていなかったのだろう。
「分かった。だが少し手加減してほしい」
結局何の手心も加えず、薪の木箱十箱に対し、穀物の木箱二十箱と穀物の茎の部分を木箱十箱で物々交換した。
村長は泣きそうな顔をしていたが、少し古い穀物を受け取ったので堪忍してほしい。
商談を終えた俺たちは街に戻る準備をした。流石に結構ぼったので泊まるのは避けたいところなのだ。村民にも止められることなく村を出て街に戻った。
村への道中でウルフを大量に討伐したためか帰りは襲われることはなかった。そのまま街にたどり着くと騎士団が出発する最中だった。
団長のグランツさんが話してきたので応じる。
「君たちの北方角から考えるにウルク村へ行ってきたのだろう?何か異変はなかったか?」
「ウルフが大量に襲ってきたのとフォレストウルフが来たこと以外は何もなかったです」
「それは十分に何かあったと言えるのだがな。まあ無事なのだから討伐したのだろう?」
「それはもちろん」
「我々はウルク村に出発した行商人が戻ってこないから調査に向かうところなのだ。まあ行ってきた本人が解決してしまったようだが。まだ何かあるかはわからんから結局向かわねばならん。それでは私たちは出発するよ」
そうして騎士団は出発し、俺たちはそれを見送った。
そんな話をしている最中に街へ入る行列は長くなっていた。俺たちは素早く馬車を列につけて検問を受ける。いつも通り問題なく通ることができ今回の行商を終えた。
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