第43話 冬ごもり2

鍛冶屋へ行った翌日、やることもないのでストレージ内の在庫整理をしていたところムスタル男爵と執事さんが尋ねてきた。


「カイト君。急な訪問申し訳ない。実はパーティーで肉を使いすぎてね。だけど塩漬けした肉なんて食べたくはないのだ。それでカイト君のところで肉が余っていないかと思ってね」


カイトは貴族ともなれば冬にでも肉を食べるのだな、なんて考えていた。


「在庫はモーモーの肉、鹿の肉がありますがどちらにしますか?」


「状態を見て購入を検討したいので現物を見せてくれないか?」


「では少しお待ちください」


そう言って俺は倉庫の奥でモーモーと鹿をストレージから出す。その後台車で二人の元まで運んだ。


ムスタル男爵と執事は解体もしていない肉が運ばれてくるとは思っておらず少しどころではなく引いていた。


「ああ。解体しないと状態が分かりませんね。今解体できる人を呼んで来ます」


そう言って探しに行った先にゲイルがいたのでモーモーと鹿の解体をお願いする。ゲイルもこの雪で暇をしていたようなので受けてくれた。


三人の目の前でどんどん解体していくゲイル、そんな中で解体の指示を出すムスタル男爵、この人はどうやら食べるものにはとことんこだわるようで切り方や普段は食べない部位なんかの処理も指示を出している。


執事はそんな男爵の指示を逐一メモに取っていた。なんだが俺一人が場違い感がすごかったが責任者としてこの場を離れることはできなかった。


「素晴らしい。このモーモーも鹿も狩りたてのように新鮮ではないか。この二頭を是非購入させてくれないか?」


「構いませんよ。商人としては問題でしょうが相場が分からないのですが、いかがいたしましょう」


「この時季にこれだけ新鮮な肉を売りに出せる商人がいないからね。相場が分からなくても仕方ない」


そう言ってムスタル男爵は執事に今いくらあるかを確認している。


「ちょっと予算がオーバーしてしまうが二頭で金貨二枚出そう」


「それってオークと同じ値段じゃありませんか?」


「あれは狩りができる時季で処理が完ぺきだった場合の値段だ。本来なら皮膚に傷がついて肉にまで刃が食い込んだりして価値が下がってしまうからね。今回は本来手に入らない新鮮な肉を購入するから価値が高騰しているのだよ」


とムスタル男爵は力説する。


「それにしてもこれだけ新鮮な肉が保存できていることにすごく興味があるな。しかし、それは秘密なのだろう。詳しくは聞かないでおくが、時折欲しい物があれば直接買い付けに来てもいいかな?」


「俺がこの街にいる時であれば構いません」


「ありがとう。話しのついでなのだがモーモーの肉はしばらく預かってもらえないかな。流石に二頭も一気に持ち帰ってしまっては鮮度が落ちてしまうからね。君の秘密の力で鮮度を保って欲しいのだ」


「行商が行えないうちであれば引き受けますよ」


ムスタル男爵は満足した顔で帰っていった。ちなみに商品は後に兵士の方が台車を持って取りに来た。

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