第42話 冬ごもり1
季節は冬に変わった。この街の冬は二か月程雪が降り続き、あたり一面雪に覆われるため行商などは行えない。冒険者も冬に向けてお金を貯めるのだが、それに失敗した冒険者が街の雪かきに駆り出されるのが風物詩となっている。
俺は、この冬を乗り越えられるだけの食料をあらかじめ調達しておいたので心配なくガンツさんの元へ通っていた。新しい弾丸の開発の草案を伝えるためだ。前回作ってもらった感電弾は想定通りの働きを見せてくれたがオークの上位種には魔鉄を使った物しか通用しなかった。
それで、感電弾の他にも魔法陣を使用した弾丸を作ってもらおうと鍛冶屋に通っているのだが。
「何度も言っているだろう。儂はこの黒魔鉄の加工方法を探すので忙しいんじゃ」
「それは俺が帰った後にいくらでもやってくださいと言っているじゃありませんか。それよりこの案はどうですか弾の先端に爆発の魔法陣を仕込んで、相手に命中したら爆発を起こす弾です」
こんなやり取りを二日も続けていたので鍛冶屋内の弟子たちも見慣れたようだ。
「おい。ゴンズ。こいつの相手をしてやれ。弾の作成はお前に任せているだろうが」
そう言われてやってきたのはガンツさんの息子のゴンズさん。腕は認められているのだがガンツさんの工房を継ぐのだと言いこの工房に残っている腕利きだ。
「はいはい。でカイト君さっき言っていたのはこういうことかな?」
ゴンズさんは話しを聞いていたのだろう。細かい設計図を取り出し、感電弾の応用で榴弾の設計図を書き出してくれた。
「それって敵に当たった時に爆発しますかね?」
そう俺が効くとゴンズさんはうなった後でこう答えた。
「おそらく弾を打ち出す魔法陣が干渉して弾を打ち出すと同時に爆発するだろうね」
その言葉を聞き、俺はがっくりとうなだれた。そんな予感はしていたが威力の高い弾を作るにはそれ相応の素材が必要なのだ。
「黒魔鉄なら使えるかもしれませんね。ただ加工と量をクリアしなければいけませんけれど」
「そうだね。それと別に鉱物だけに限定しなくてもいいと思うよ。例えば感電弾にはウルフの牙を素材として使用しているしね」
それは初耳だった。だが俺の手元にある魔物の素材はオークの牙程度しかない。どうせ取っておいてもストレージを圧迫するだけなのでゴンズさんに渡してしまうことにした。
「これはオークの牙、ウルフの牙、フォレストウルフの牙です。良かったら使ってください」
「こんなに貰っていいのかい?売れば少しはお金になると思うけれど」
「お金よりは銃の開発に役立ててもらえた方が俺には嬉しいので」
「ならありがたく受け取っておくよ。父さんも熱中しだしちゃったけれどどうする。数日任せてくれるのであれば形にはできると思うけれど」
「では二、三日後にまた来ます」
そう言って俺は鍛冶屋を後にした。
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