第41話 新築

領主様に連れてこられたのは貴族街と平民街のちょうど分け目に当たる位置にある工事現場だった。


「ここに何か作るのですか?」


「ん?君の屋敷だよ。商人なのに貴族街の中に屋敷を持つのに不満がある物が数人いてね。それでそんな声を無視するためにこの人気のない場所に君の屋敷を作っちゃおうと思ってね」


軽い調子で言っているが普通、領主様が平民に屋敷を与えるなんてことはあり得ない。何か裏があると勘繰る俺だったが領主様は意外とはっきりものを言う人だった。


「君は領主側に引き込んでおきたいし、領主街の中であれば僕の権限で警備を厳重にもできるからね。今後とも働きに期待しているよ」


ここまでの待遇をされると何に期待されているのかが不安です。とは言い切れずに愛想笑いで乗り切った。


「さあ、君の取ってきた石をここに出してくれないかい。それで屋敷の基礎を作るつもりのようだから」


俺はその場に石を三百余り全部放出した。工事を行っていた建築家たちは一瞬驚いていたが資材が届いたと分かると作業に取り掛かり始めた。


「俺の家を作る資材をとってこさせるのに給金を弾むなんて執事に言わせたのは何故ですか?」


「君へのサプライズと今後とも使いやすくするためかな」


今後とも逃げられそうにないなと感じる俺であった。


「じゃあここの用件も済んだことだし屋敷に戻ろうか」


素直にドナドナされる俺であった。


屋敷に着くとすぐに紅茶が出されたので礼儀など知らない俺はすぐに口をつける。


それを見て領主様は笑っていたが飲み終わるのを待って話を切り出した。


「カイト君は冬が空けるとドローデルの街に行くと言っていたよね」


「はい。そのつもりですが何かありましたか?」


「いいや。少し頼みたいことがあってね。ドローデルの街の領主に書状を渡してほしいんだ。もちろん君意外にも何通か頼むつもりだけれどストレージと言うアドバンテージがある以上、一番君が早く着くと思ってね」


「確かに普段の移動ではストレージに荷物を詰め込んでいるため馬車の移動は早いですがそれよりも早馬を使った方が早いのでないですか?」


「それはもちろんそうだけれど、そこまでする案件ではないから君に頼みたいんだ」


「分かりました。どのみちドローデルの街にはいく予定なので引き受けます」


「助かるよ。それと必ず返事をもらってきてくれ。あとは魔法陣に関して調べるのだろう。その関連の手紙も添えておくから待っている間は不自由しないと思うよ」


「ありがとうございます。では、出発する前日にお邪魔させていただきます」


それで話は終わった。

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