第3話 魔法陣
ファテナさんの帰りを見送った後、俺も家に帰った。売り物のついでに拾ってきていた薪を家の裏に積み上げた後、家の中に入る。
「カイト。お帰り、ファテナさんにちゃんと商業について教えてもらってきたかしら?」
「ただいま。計算の方法をちょっと教えてくれただけだったよ。あとこの本を買った」
そう言って【魔法陣の基礎】という複写本を見せるとままんの顔色が変わる。
「その本の購入代金はどうしたのかしら?」
「森に行って薬草やキノコを販売しました」
「ならいいわ。あなたが稼いだお金だもの。自由に使いなさい」
ままんの許可を得たところで俺は早速本を隅々まで読みあさることにした。読んでいて分かったことは魔法陣は特殊なインクを使わなければ効果を発揮しないこと。
まずこの前提条件をクリアできないため出鼻をくじかれた。
「ファテナさん。気をきかせて次来るときに魔法陣用のインク持ってきてくれないかな?」
そんなことを言っている間に夕食の準備ができたようでままんから呼ばれた。俺は急いで手を洗い食卓に着く。
食事を終え、あたりが暗くなると就寝の時間だ。本を読みたかったが蝋燭代も馬鹿にならないため諦めて床に就く。眠るまでの間、今後の予定を考えていたが気づけば朝になっていた。
それから三日間、午前中は森に入り薪を集める。他にもお金に換えられそうなものは集めた。そしてお昼はリスの串焼きを食べて家にかえり読書に勤しむ。そんな日々を過ごしていると普段よりも四日早くファテナさんが村に訪れた。
「カイト君。君の要望に合った武器が見つかったから持ってきちゃった」
それはとある転移者が残したと言われる【銃】という品物だった。
「これは拳銃という品物らしくてね。火薬を使って中に入っている弾を打ち出す遠距離武器らしいんだ。ただその弾を作るのに採算が合わないらしくてね。捨て値で売られているのを買ってきたんだ」
採算の合わないものをただでさえお金を持っていない俺に渡してどうするのだろうと思わずにはいられなかった。
が何かのひらめきに役に立つかと思い銅貨二十枚で拳銃を購入した。
「それと、回復草と魔力茸の在庫ない?あれほど新鮮なものとなると貴重らしくてね。かなり儲けられたんだ」
仕方ないなぁというふりをして一旦家に帰り、ストレージから袋に品物を移し替えてファテナさんの元へ戻った。代金を受け取るとファテナさんは急いで村から出ていった。
おそらく何の品物も準備していないため村人に見つかりたくなかったのだろう。
その時俺は魔法陣用のインクのことなどすっかり忘れていた。
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