一年付き合ってた彼女が医大生とラブホから出てきた(NTR……涙)。帰り道、川で幼女が溺れていたので助けて家まで送ってあげたら学園のアイドルの家だった。
第49話「私はそういう優しい人のほうが好きかな――」
第49話「私はそういう優しい人のほうが好きかな――」
「っ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
完全に先輩たちが見えなくなると、途端に優香がホッとした顔をしながら、大きく息を吐いた。
さっきはまるで異世界ファンタジーの姫騎士のように凛々しく立ち回った優香だけど、元々は優しい女の子。
その実、相当気を張っていたのは想像に難くない。
「お疲れ優香。それと助けてくれてありがとな」
「ううん、気にしないで蒼太くん。それに元はといえばあの人たちを振った私のせいだったみたいだし」
お礼を言った俺に、優香が小さく苦笑いを返してくる。
「なんで優香のせいなんだよ? そんな風にだけは思っちゃだめだぞ。悪いのは100パーあいつらなんだからな」
「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいかな」
そう言って笑った優香は、さっきのお怒りモードがすっかり解除されて、いつもの優しくて上品な笑顔に戻っている。
やっぱり優香には笑顔が一番似合うよな、とは思ったものの。
「でもさっきの優香も、凛々しくてカッコ良かったよな」
あれはあれで芯のある強い女の子って感じがして、なんとも言えない魅力を感じてしまう俺がいた。
べ、別に助けてもらって「やだ、カッコいい! 姫騎士みたいで、胸がキュンしちゃう!」なんて思ってるわけじゃないんだからねっ!
勘違いしないでよねっ!
「あれはその……! 蒼太くんが酷い目に合わされてるって思ったら、ついカッとなって我を忘れちゃって……。あの、女の子らしくないとか思って幻滅しないでね? いつもはあんなんじゃないんだよ? ほんとだよ?」
笑顔から一転、優香が不安そうな顔で尋ねてくる。
「あはは、なに言ってるんだよ。助けてもらったのに幻滅なんてするわけないだろ? 優香のおかげで殴られなくて済んだんだから」
「ほんと?」
「ほんとほんと。自慢じゃないけど、俺はケンカなんか一度もしたことがないよわよわ男子高校生だからさ。あのままだと下手したらサンドバッグにされてた」
しかも4対1。
ゴリ先輩もいたし、俺が勝てる要素は伝説の「三笘の一ミリ」ほども見当たらない。
「すぐに暴力を振るうような粗雑な人より、私はそういう優しい人のほうが好きかなぁ――って、ふわっ!? あ、あの! 今のはあくまで一般的な『好き』っていう意味であって、決して特別な『好き』ってことじゃないからね!?」
優香に「好き」と言われた俺が変な勘違いしないようにだろう、あくまで一般論であることを優香が強く主張する。
「あはは、それも分かってるって」
もちろん俺は勘違いしないように自分の心に言い聞かせながら、優香に笑顔を返した。
こうしてひとえに優香のおかげで、俺は姫宮親衛騎団・最高幹部たちの襲撃から逃れることができたのだった。
~優香SIDE~
「はぅぅ、蒼太くんにあんなはしたない姿を見せちゃうだなんて……」
私はベッドで布団にくるまって天井を見上げながら、今日、体育館裏でやらかしてしまったことを猛省していた。
「蒼太くんを助けなきゃって思ったら、自分が自分でなくなったみたいに感情的になっちゃったんだよね」
普段の自分からはとても想像できないくらい、強くて攻撃的な口調になってしまった。
蒼太くんはぜんぜん気にしないって言ってくれたけど。
「がさつな女の子って思われてないかなぁ。思われてるよね……」
私の不安は尽きることはない。
「蒼太くんは優しいから私が傷つくようなことは絶対言わないだろうけど。ううっ、明日どんな顔をして蒼太くんに会えばいいの?」
本当はガサツで男勝りなのに、お上品に振る舞っている猫かぶりな裏表女子――とか思われたりしないかなぁ。
私はあーだこーだと散々、結論の出ない堂々巡りを繰り返した後、
「すー、すー……。むにゃぁ……」
しかし睡魔に誘われるようにして、いつの間にか寝入ってしまったのだった。
実は私、寝つきの良さが昔からの特技でして。
えへへへ……。
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