第51話 プールデートのお誘い

「どうしたんだ優香? なにか名案でもあるのか?」


「実はお父さんから貰った屋内プールの招待券があるの。良かったら今度の土日にでも3人で行かないかな?」


「あの! お部屋の中にある、冬でもあったかいプールなんだって! なんだか温泉みたいですよね!」


「ふふっ、そうね。でも本当の温泉じゃあないから、裸になっちゃだめだからね? ちゃんと水着を着るのよ?」


「はい! ひらひらスカートの、お気に入りのワンピース水着を着ます!」

「去年買ったあれ、美月にすごく似合っていたもんね」


 姉妹がなんともほのぼのした会話をしている横で、


「3人でプール……だと……?」

 その言葉に俺はピクリと反応してしまった。


 屋内プール。

 つまりはプール。

 敢えて英語で言うとPOOL。


 ということは、優香の水着が見れるということではないだろうか?

 去年は俺と優香は違うクラスだったから水泳の授業も別々だったし、そもそも知り合ってもいないのでプライベートで遊ぶ仲ではもちろんなかった。

 だから俺が優香の水着姿を見たことはない。


 そして俺は聖人君子でも枯れた老人でもなく、いたって健全なお年頃の男子高校生なわけで、好きな女の子の水着姿には非っっ常に興味があるんです。


「もちろん、蒼太くんが暇だったらで全然いいんだけどね? 用事があるなら、私が美月と2人で行ってくるし」


「えー! 美月、蒼太おにーちゃんと一緒にプール行きたいですー!」

 優香の提案に、抗議の声を上げる美月ちゃん。


「もう美月、わがまま言っちゃダメでしょ。蒼太くんにも予定はあるんだから。お姉ちゃんだって、バタフライとかは無理だけど、まぁまぁくらいは泳げるんだからね? ちゃんとお姉ちゃんが教えてあげるから」


「でも美月、蒼太おにーちゃんも一緒がいいです……」


 どうしても俺と一緒にプールに行きたいのか、捨てられた子犬みたいな目を向けてくる美月ちゃん。


 まったく、学園のアイドル(かつ意中の女の子)&その可愛い妹ちゃんにこうまで言われて、敢えて拒否するような間抜けな男子高校生など存在するだろうか?

 いいや、そんな間抜けは存在しない。


 ってなわけで。


「もちろんオッケーだよ。今週末は特に用事はないし、3人で屋内プールに練習に行こう」

 降って湧いた素敵すぎる展開に、俺は満面の笑みで親指を立てたのだった。


 ちなみに健介から『今度の休み、暇だったらゲーセンでも行かないか? 最近の蒼太は放課後いつも姫宮さんと一緒だからさ。たまには男同士でパーッと遊ぼうぜ』と誘いを受けていたんだけど、返事をする前で良かったよ。


 休日の過ごし方としては、どう考えても、


優香&美月ちゃんと屋内プール>>>>>>>(絶対に超えられない壁)>>>>>>>健介とゲーセン


 だからな。

 論ずる余地すらない。


「やりました! 土曜日は蒼太おにーちゃんとプールでデートです♪」

 俺の言葉を聞いて、嬉しそうに満面の笑みの美月ちゃん。


「べ、別にデートじゃないでしょ? 3人で遊びに行くだけであって、デートなんてそんな。目的は美月がバタ足をできるようになるためなんだし、そもそも私と蒼太くんは全然ちっともそんな関係じゃないわけだし」


 対照的に少し早口で、美月ちゃんに言い聞かせるように言った優香。

 多分だけど、美月ちゃんに言いながらも、実際は俺に変な勘違いしないようにと釘を差したんだろうな。


 デートじゃないんだと、俺は改めて自分に言い聞かせる。

 しかしながら優香がどんな水着を着てくるんだろうとついつい想像してしまい、心が浮ついてしまうのをどうにも抑えられない俺だった。


 年頃の男子高校生の妄想力を舐めんなよ!


 というわけで。

 今週末の土曜日に、俺は優香と美月ちゃんと一緒に屋内プールにデート――じゃない、遊びに行くことになった。

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