第61話「ざまぁ!!」ってな

 散々プール遊びを満喫した後。

 水着から着替えた俺たちは、俺、美月ちゃん、優香の順に手を繋いで並んで駅までの道を歩いていた。


「最近は屋内プールでも、派手なアトラクションがたくさんあってビックリしたよ」


「美月も全部楽しかったです! バタ足もできるようになりましたし、いっぱい遊べました! また3人でプールに来たいです!」


 両手を俺と優香に繋がれた美月ちゃんが、満面の笑みを向けてくる。


「ふふっ、良かったわね。じゃあ蒼太くんさえ良かったら、夏になったらまた3人で来ましょうか」


「蒼太おにーちゃん、いいですか?」

 美月ちゃんが期待のこもった声で聞いてくる。


「もちろんいいぞ。俺も今日はすごく楽しかったし、その提案は俺も願ったりかなったりだ」

「じゃあ決まりですね! 夏になったらまたみんなでプールに行きましょう! もしくは海へ!」


 オレンジ色の夕日に照らされながら、満面の笑みを浮かべる美月ちゃんと、それを優しい笑顔で見守る優香。

 とても仲のいい姉妹の姿を、俺は穏やかな気持ちで眺めたのだった。



 そして、これは完全な後日談なんだけど。


 イケメン医大生が去り際に言った、

『くそっ、最近上手くいかないことばっかでムカつくな……』

 ってセリフが妙に気になったので、ダメ元で健介に聞いてみたら――。


「ああそれな」

「知っているのか健介?」


「そいつの父親、隣駅にあるデカイ病院の外科部長らしいんだけどさ」

「外科部長って……偉いのか? ちょっとよく分からん」


 そもそも部長って何だ?

 病院に部活でもあるのか?


「偉いかどうかっつったら、メチャクチャ偉いな。手術を扱う外科のナンバーワンだから。言ってみれば病院の顔の一人だな」

「それはすごいな」


「で、その父親ってのが医療機器の納入に際して、業者から何億も賄賂をもらう代わりに、わざと高額の医療機器を買ってたとかで、今、その病院から訴えられて大変なことになってるらしいんだ」


「つまり親が悪いことしていたのがバレて、家が大変だってことか?」


「ざっくり言うとそういうこと。っていうかこの話、テレビのニュースにもなってるだろ? 新聞でも何度も出てるし蒼太は知らないのかよ?」


「健介は新聞部とも仲がいいから、そりゃナチュラルにニュースとかも見るんだろうけど。普通の高校生はそんな小難しいニュースなんか見ないっての」


「そんなもんかね? ニュースも見ないなんて、最近の若者は大丈夫かよ」

「健介だって俺と同い年じゃんか……」


 なんでそんな、お節介なおっさんみたいな余計な心配をしてるんだ。


「まあそれでだ。その外科部長の親が、首になった上に結構な額を損害賠償請求されてるらしいから、多分だけどあいつも前みたいに自由に金を使えないんじゃないかな? しかも医学部は金がかかるからなぁ、間違いなく退学だろうし」


「なるほど、そういうことか。ま、大変なんだろうけど、悪いが同情は全くできないかな」

「右に同じだな。ある意味、天罰だろうよ」


 健介が笑いながらそんなことを言っていた。

 正直、俺も同感だった。


 俺は人の不幸を笑うのはあんまり好きじゃないんだけれど。

 ただ俺も少しだけ関係者というか、イケメン医大生には嫌な目にあわされたので、今だけちょっと言わせて欲しい。


「ざまぁ!!」


 ってな。

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