第6話 シャワワワワワ~~~!
シャワワワワワ~~~!
「あったかいですー♪」
「あったかいなぁ」
シャワワワワワ~~~!
「ぬくぬくですー♪」
「ぬくぬくだなぁ」
シャワワワワワ~~~!
「はぁ……生き返ります……」
「あぁ……マジで生き返るなぁ……」
俺は姫宮家の浴室で、美月ちゃんと一緒に熱々のシャワーを浴びていた。
もちろんまだ小学3年生といえど、女の子は女の子。
美月ちゃんの身体を極力見てしまわないように、俺は細心の注意を怠らない。
でも熱々のシャワーってほんといいなぁ。
身体の芯まで冷え切っていたのが、熱々のシャワーで優しく解きほぐされていくよ……。
身体も心もある程度温まったところで、
「あの、蒼太おにーちゃんに質問があります」
美月ちゃんが尋ねてきた。
「おっ、なんだ?」
「蒼太おにーちゃんは、おねーちゃんのお友達なんですか?」
「いや、ただのクラスメイトだよ。嫌ってるわけでもないけど、特に仲がいいわけでもないかな。今日まで話したこともなかったし」
「おねーちゃんはお友達が少なかったんですね。でもおねーちゃんはとっても優しくて、すっごく美人ですっごく素敵なので、蒼太おにーちゃんがお友達になってあげてくださいね」
妙に真剣な声で言ってくる美月ちゃん。
「あはは。大丈夫だよ、むしろ逆だから」
「逆……ですか?」
「そうさ。どっちかっていうと、俺のほうが人気者の姫宮さんにお友達になってもらう立場だろうからなぁ」
「……? お友達になるのに立場とかあるんですか?」
「うーん、なんて言えばいいかな? 高校生にもなるといろいろとあるんだよ」
「あ、分かりました! そういうの、大人の事情っていうんですよね。さすが高校生です!」
「大人の事情って……でもまぁそんなところかな?」
小学校低学年の子供みたく、分け隔てなくみんな仲良くお手てを繋いでお友達――とはなかなかいかないのが、高校生の人間関係だ。
「美月も早く大人になりたいです」
「焦らなくても、美月ちゃんならすぐに素敵な大人の女性になれるよ」
美月ちゃんの礼儀正しい受け答えを見る限り、素敵なレディになるのは間違いないだろう。
そんな風に、2人で他愛もない話をしながらしっかりと温まってから浴室を後にすると。
脱衣所・兼・洗面所に、折り目のついたまっさらな替えの服とトランクスが用意されているのが目に入った。
「この服、着ちゃっていいのかな?」
誰に聞かせるでもなくつぶやくと、
「パパの知り合いとか、急に誰かが泊まりに来た時用の服と下着だから気にしないで。紺野君の服は今洗濯してる最中だから」
洗面所の外から姫宮さんの声が聞こえてきた。
気を使って待機してくれていたのか。
それとも俺が美月ちゃんに良からぬことをしでかさないか見張っていたのか。
まぁどっちもか。
恩人でクラスメイトだからそれなりに気も使ってくれるし、男だからそれなり以上に警戒もしているだろう。
なんにせよ、姫宮さんは洗面所の外で様子を窺って聞き耳を立てていたようだ。
「そういうことなら遠慮なく」
ふかふかでいい匂いがするバスタオルで身体を拭いてから、新品特有のごわごわした肌触りの服に着替えると、
「蒼太おにーちゃん、美月の頭ゴシゴシしてー」
同じく身体を拭いて服に袖を通した美月ちゃんが、見計らったようにバスタオルを差し出してくる。
「おっし、任せとけ。俺はゴシゴシマイスターだからな」
俺は年相応に甘えんぼな美月ちゃんにほっこりしながら、バスタオルで頭を拭いてあげた。
もちろんゴシゴシと強くではなくバスタオルに水気を移すようにゆっくりと優しくだ。
髪は女の子の命、丁寧にしてしすぎることはない。
「ん~~、気持ちいいですー。蒼太おにーちゃんはゴシゴシ上手ですね」
「言っただろ、俺はゴシゴシマイスターだって」
じゃれ合いながら美月ちゃんの頭を拭いていると、洗面所のドアがガラリと開く。
「もう美月ったら、あんまり紺野君に迷惑かけちゃだめよ?」
美月ちゃんの頭を拭いている俺を見た途端に、姫宮さんが呆れたようにつぶやいた。
「あ、えっと、蒼太おにーちゃん、迷惑だった……?」
すると、バスタオルの隙間から美月ちゃんが不安げに見上げてきた。
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