一年付き合ってた彼女が医大生とラブホから出てきた(NTR……涙)。帰り道、川で幼女が溺れていたので助けて家まで送ってあげたら学園のアイドルの家だった。
第111話 ~優香SIDE~ 蒼太くんちのお風呂で反省会
第111話 ~優香SIDE~ 蒼太くんちのお風呂で反省会
~優香SIDE~
「な、なんてことをしちゃったんだろう……」
ショーツを洗って洗濯乾燥機の速乾モードに入れてから。
蒼太くんの家のお風呂の湯船に口元までつかりながら、私は小さな声で反省の言葉を呟いた。
その声が震えているのが、自分でも分かる。
『なんてこと』っていうのはもちろん、
「まさか蒼太くんと2人きりで、お泊まりすることになっちゃうだなんて……」
ということだった。
男の子のお家に2人っきりでお泊りするなんて、冷静に考えたらあり得ない。
だって男の子とお泊まりだよ?
男の子と、蒼太くんとお泊まり――、
「はうん!?」
思わず奇声を上げてしまった。
結構大きな声を出してしまったので蒼太くんに聞こえちゃったかもしれない。
ううん、雨と乾燥機の音がしているから聞こえてはいないはず。
しかしお風呂で温もっていた身体が、だけど決してそれだけではない更なる熱を帯びていた。
「こ、これはもう、大胆とかそういうのを通り越してハレンチだよ! ハレンチ警察の出番だよ!」
お巡りさんこちらです!!
犯人は私!
「でもねでもね? あの時はナイスアイデアだって思っちゃったんだよね」
蒼太くんがふと思いついたように、
『だったらいっそのこと、このままうちに泊まるとか――』
って言ったのを聞いて、
『そっか~! 帰れないなら泊っていけばいいだけだよね~』
って、ただただ素直に思っちゃっただけなのだ。
あの瞬間は決して、それ以上の特別な感情を抱いてはいなかった。
2人きりでお泊まりできるとか、それによって一気に関係が進んじゃうかもとか。
もうほんと、神に誓って、そんなことはちっとも考えてはいなかったのだ。
だけどお風呂に入って、雨で少し冷えていた身体が温もってホッとしたことで、とっても気になる男の子の家に2人きりでお泊りするということの意味を、私は今さらながらに、痛切なまでに理解してしまった。
「もしかしたらテスト勉強の疲れもあって、頭が上手く回ってなかったのかなぁ……」
一緒に勉強した以上は、蒼太くんに格好悪いところをは見せられなかったので、今回のテスト勉強に、私はいつにも増して力を入れていた。
……もちろんただの言い訳である。
そして、この状況の持つ意味を痛切に理解してしまった途端に、さっきまでホッとできていたお風呂までもが、緊張の場に変貌してしまっていた。
なにせ蒼太くんが毎日入っているお風呂に、私は今、裸で入っているのだから。
(もちろんお風呂というのは、裸で入るのが一般的だけれども)
お湯につかっているだけで、蒼太くんに優しく抱き包まれているような気分になってしまう。
物理的にはただのお湯のはずなのに、私にとってこのお湯は蒼太くんを構成する一部だった。
言うなれば、ホット蒼太くんウォーター。
「しかもこの後に、蒼太くんがお風呂に入るんだよね……」
私が入ったお湯に、蒼太くんがつかるのだ。
「万が一にもマナーのなっていない女の子だって思われないように、髪の毛一本残さないようにしないと……!」
お風呂から上がる前に、目を皿のようにして隅々までチェックしないといけない。
けれども、同じお風呂に入ることよりも何よりも、これから私を待ち受けるもっと大変なことがあった。
「今日の夜は、寝る時も私と蒼太くんの2人きりなんだよね……お泊りするから当たり前なんだけど」
今まで私に好意を見せてきたチャラい人たちと違って、蒼太くんは優しくて誠実でとても紳士な男の子だ。
とは言え、蒼太くんも年頃の男の子。
「時々、視線がえっちになることがあるもんね。プールに行った時とかそうだったし」
もしかしたら何かいけないことが起こるかもしれなかった。
もしそうなってしまったら、私はどうすれば――、
「って、ううん! 蒼太くんは絶対にそんなことしないし! 付き合ってもいない女の子に狼さんになっちゃうだなんて、こんな考えは蒼太くんに失礼だよね」
でもでも?
やっぱり蒼太くんだって思春期なお年頃なわけだし?
思春期っていうのは「春を思う時期」ってことだもんね。
『春』とはつまり『性』。
つまり思春期とは、えっちなことばかり考えてしまうお年頃という意味に他ならないのだから。
「ううん、蒼太くんはそんなこと絶対しないもん!」
でもでも――
ううん――
でもでも――
私は湯船の中で、不毛なエンドレス堂々巡りを続けたのだった。
~優香SIDE~ END
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